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2・壊れ行く日常と融合
22・神楽とセト
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──そうか、自分は……。
モンスターに斬りかかりながら、神楽は思う。
自分は見た目を変えたいのではない、性そのものが欲しいのだと。自分の恋愛対象は同性であり、異性でもある。身体は女性であるが種を植え付けられたいわけではない。植え付けたいのだ。
──どんなことをしても、それは手に入らない。
肉体を変え、戸籍をかえ、別の性として生きることならできる。
しかし自分が欲しいのは、それではない。
自分が満たしたいのは支配欲なのか。
愛はそこにあるのだろうか。
神楽は今までずっと、自問自答してきた。答えは見つからず、この世界に逃げ込んだのだ。
「ありがとう!」
戦闘が終わり声をかけられて振り返れば、可愛らしい顔をした少年がこちらを見上げていた。
どんなに可愛くとも、彼が自分の欲しがっているモノを持っていることに、嫉妬してしまう。キラキラした目でこちらを見上げてくる彼の名は、利久。
そして岩陰から出て来たのは……。
「レジェンド……」
──そうか、彼が我が主。
「まだ候補だ、Jack」
綺麗な顔をし、白い衣に身を包んだ少年。
彼の名はセト。
「わたしのことは神楽と呼んでくれ。。単刀直入に言う。話がしたい」
そう告げると彼は神楽の元へ近づいてくる。
他の者には聞かれたくない話だったので、連れだって少し離れた場所へ。
「あのモンスターは、17地区のモンスターだ」
と、神楽。
「そのようだね」
「何故、戦わぬ?」
彼は確かにまだ候補という状態。
しかしパラメータを見るところ、そこまで弱いわけではない。しかも、レアなものをつけている。
「踊り子で龍神使いだろう? この砂漠フィールドでなら、充分戦えたはずだ」
龍神使いと言えば、AG内では相当レア。習熟にも時間がかかる。
「何故あのモンスターがここにいるか、知ってる?」
と、セト。
「バグか何かか?」
「俺がいるからだ」
──レジェンド候補がいるために、17地区からこんなところにモンスターが飛ばされたということか。つまり、バグだな。
「戦闘なんかすれば、モンスターが増えるだけ」
「原理は理解したが、何故だ」
「噂では、17地区にシステムレジェンドが封印されていると聞く。関係があると、俺は見ている」
「なるほど、調査中というわけか。で、何処へ行く気だ?」
と、神楽。
「23地区。チームアジトをそこに作るようだ」
「23地区だと⁈」
23地区と言えば、AGきってのセレブ街。
『クソ金持ってやがるな、この野郎』と神楽が羨望の眼差しを向けるが、セトは親指をくいっと利久に向けた。
「ゲームマスターはそんなに儲かるのか?」
と、セトに問う。
「知ってるだろ、AGでの賞金加算システムは。ゲームマスターともなれば、全職業の習熟度が★2つまり職業の種類×三倍がボーナスとして加算される」
「弱い奴はとことん貧乏、強い奴はとことん富豪。鬼畜システムだな」
神楽は肩を竦める。
「その代わり、装備もバカ高いがな」
「そこが面白いところでもあるが」
頑張れば頑張った分だけ自分に返ってくるのが、AG。
そこにやりがいを感じ、ハマる人も多いのだ。
現実ではどんなに報われなくても、AGでは自分の頑張りが数値として現れる。
「この先、まだ何があるか分からない。わたしも同行しよう」
「それは心強いな」
どうやら二人は、気が合いそうであった。
モンスターに斬りかかりながら、神楽は思う。
自分は見た目を変えたいのではない、性そのものが欲しいのだと。自分の恋愛対象は同性であり、異性でもある。身体は女性であるが種を植え付けられたいわけではない。植え付けたいのだ。
──どんなことをしても、それは手に入らない。
肉体を変え、戸籍をかえ、別の性として生きることならできる。
しかし自分が欲しいのは、それではない。
自分が満たしたいのは支配欲なのか。
愛はそこにあるのだろうか。
神楽は今までずっと、自問自答してきた。答えは見つからず、この世界に逃げ込んだのだ。
「ありがとう!」
戦闘が終わり声をかけられて振り返れば、可愛らしい顔をした少年がこちらを見上げていた。
どんなに可愛くとも、彼が自分の欲しがっているモノを持っていることに、嫉妬してしまう。キラキラした目でこちらを見上げてくる彼の名は、利久。
そして岩陰から出て来たのは……。
「レジェンド……」
──そうか、彼が我が主。
「まだ候補だ、Jack」
綺麗な顔をし、白い衣に身を包んだ少年。
彼の名はセト。
「わたしのことは神楽と呼んでくれ。。単刀直入に言う。話がしたい」
そう告げると彼は神楽の元へ近づいてくる。
他の者には聞かれたくない話だったので、連れだって少し離れた場所へ。
「あのモンスターは、17地区のモンスターだ」
と、神楽。
「そのようだね」
「何故、戦わぬ?」
彼は確かにまだ候補という状態。
しかしパラメータを見るところ、そこまで弱いわけではない。しかも、レアなものをつけている。
「踊り子で龍神使いだろう? この砂漠フィールドでなら、充分戦えたはずだ」
龍神使いと言えば、AG内では相当レア。習熟にも時間がかかる。
「何故あのモンスターがここにいるか、知ってる?」
と、セト。
「バグか何かか?」
「俺がいるからだ」
──レジェンド候補がいるために、17地区からこんなところにモンスターが飛ばされたということか。つまり、バグだな。
「戦闘なんかすれば、モンスターが増えるだけ」
「原理は理解したが、何故だ」
「噂では、17地区にシステムレジェンドが封印されていると聞く。関係があると、俺は見ている」
「なるほど、調査中というわけか。で、何処へ行く気だ?」
と、神楽。
「23地区。チームアジトをそこに作るようだ」
「23地区だと⁈」
23地区と言えば、AGきってのセレブ街。
『クソ金持ってやがるな、この野郎』と神楽が羨望の眼差しを向けるが、セトは親指をくいっと利久に向けた。
「ゲームマスターはそんなに儲かるのか?」
と、セトに問う。
「知ってるだろ、AGでの賞金加算システムは。ゲームマスターともなれば、全職業の習熟度が★2つまり職業の種類×三倍がボーナスとして加算される」
「弱い奴はとことん貧乏、強い奴はとことん富豪。鬼畜システムだな」
神楽は肩を竦める。
「その代わり、装備もバカ高いがな」
「そこが面白いところでもあるが」
頑張れば頑張った分だけ自分に返ってくるのが、AG。
そこにやりがいを感じ、ハマる人も多いのだ。
現実ではどんなに報われなくても、AGでは自分の頑張りが数値として現れる。
「この先、まだ何があるか分からない。わたしも同行しよう」
「それは心強いな」
どうやら二人は、気が合いそうであった。
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