R18 【同性恋愛】究極純愛♡僕日if 1*Everlasting love『ありえない僕らの日常』

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5話『翻弄される俺たちの運命』

2 待ちわびた連絡

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 ****♡Side・葵

 それは、ある日曜のことである。
 よっぽど周りに信頼の出来る相手がいないのか、聖は葵に何でも話してくれるようになっていた。その日は”久隆”の父が再婚をし、彼に弟ができるらしいと。彼の家の事情まで話してくれたのだ。

「久隆が不安がっているんだ」
 習い事は午後からだったのでピアノ教室にある休憩室で、一緒にお昼を取っていたときのことである。彼はピアノ教室の外にある自動販売機でわざわざ二人分の飲み物を買ってきて、一つを葵にくれた。
「傍にいてあげたらいいのに」
 思わずそういってしまって、葵は慌てる。
 余計なことは言うべきではない。
「顔合わせだっていうから」
 だからか、と葵は思った。
 いつもだったら電話ばかりしている彼がスマホを脇に置き、時間ばかり気にしている。
「今日は会えるのは、きっと夜だ」
 とため息をつく彼。
 不憫だなと葵は思っていた。

 二人は想い合っているのに完全にすれ違ってしまっている。もしここで自分が助言をし、彼がそれを聞き入れたなら軌道は修正されるだろう。
 しかし葵は言いたくないのだ。どんなにずるいと思われても。
 聖からは愛の行為についても相談を受けている。とは言え、未経験の自分にはなんと答えたらいいのか分からないでいた。
『久隆くんはもしかしてネコに向いてないんじゃ?』
 葵は持てる知識でそんなことを思う。
 だとしたら、自分にもチャンスはある。

「!」
「どうかした?」
「ごめん、久隆から電話だ。何かあったのかな」
 彼は慌てて部屋を飛び出していった。その日、珍しく彼は習い事を休んだ。

 葵は、ゆっくりと何かが変わっていくのを感じていた。
 その激動に、自ら飛び込むことになるとも知らずに。

 ──久隆くんから電話?

 それは初めてのことだった。彼が習い事を休むことも。
 歯車は回り始めた。
 ぎぎぎぎと不穏な音を立てながら。

   **・**

 ──その日以来、彼は習い事先に来なくなった。

 葵は心配になってメッセを送ったが返信はなく、漠然とした不安を感じていた。
 そして聖の存在が知らず知らずに、自分の日常へ影響を与えていたことを知る。葵はK学園大学部への進学を希望していた為、生徒会に入っていた。
 内申書の為だが、昨年中学校からの一学年先輩である鶴城に誘われたからという理由もある。彼は体育会系タイプで、短く整えた髪形がトレードマーク。引き締まった筋肉質の身体をした体育会系の明るく気さくな人である。
 今年度は生徒会会長だ。

 葵は頬杖をつき、教室の外をぼんやりと眺める。
 鶴城もまたK学園に進学を希望していた。来年は一人ぼっちかと寂しい気持ちになる。習い事先で聖に会うのは楽しかった。”久隆の話”を楽しそうにする彼は自分にとっては友達で、ライバル。

「ん?」
 机の上のスマホに目を落とすと一件の通知のお知らせが。
 それは待ちかねていた聖からのメッセであった。内容は”今日これから、会えないか?”というもの。生徒会室に行くか迷っていたところだったので、調度良い。
 待ち合わせ場所を聞き、葵はカバンを手にすると教室を出た。靴箱に向かいながら鶴城に連絡をいれる。

 ──何故毎日、こんなに物足りないのだろう?

 クラスメイトや生徒会の役員ともそれなりに仲良くしているつもりだ。問題もない。学校ってこんなつまらないものだったかな。やはり、聖の存在は大きかったのだと改めて思う。
 なんでも気さくに話してくれる様な相手は鶴城くらいだ。自分は意外と恋バナというものが好きだったのかもしれないと思った。

 葵は指定の場所に到着すると、待ち合わせ先である喫茶店を見上げた。
 一人で入るのには勇気の要るお洒落な場所であった。ため息を一つ付くと、外で待つことにする。
 ふと左手にあるセレクトショップが気になって、そちらの方角を見ていたのだが……。

 あれって、”久隆”くんと……誰?

 手を繋ぎ入っていく二人はとても仲が良さそうに見える。久隆と一緒にいる子は凄く綺麗な子。”大里と鉢合わせしなければいいけど”、とそんなことを思っていたのだった。
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