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4話『自覚と協定』

3 彼に溺れて【R】

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 ****♡side・久隆

「咲夜……」
 夜中に目が覚め、咲夜にすり寄ると彼がぼんやりとまぶたを開けた。
「久隆?」
 久隆が咲夜にぴとっとくっつくと胸に抱き寄せられ、彼のいい匂いが鼻先を掠める。とても落ち着く香りだ。
「寒いの?」
 問われてモゾモゾと彼の胸に顔を埋める。
「さみしいの」

 本能に従い彼を抱き、頭がおかしくなっていくのを感じた。心が何処かへ行ってしまい、快楽だけを求めてしまう。理由はわかってはいるものの、止められない自分がイヤだった。

「傍にいるよ」
「咲夜」
「大丈夫だよ」

 それだけではない。聖という恋人がいるにも関わらず、咲夜との性交を身体が求めていた。欲しくてたまらない。もっとと求めてしまう。身体だけだなんて思われたくないのに、止められないのだ。

「あッ……」
 久隆の変化に気づいた咲夜が、久隆自身をパジャマのズボンの上から撫で上げた。
「してあげる」
 暗闇の中で、咲夜が微笑む。そっとカーテンを開けば月明かりが差し込んでロマンチックだった。
「挿れたい? 挿れて欲しい?」
 耳元でそっと囁かれ
「抱いて」
 と震える声で返事をする。
 あれだけしたのに身体が欲しいといっていた。
 どこまで堕ちれば救われるのだろう?
 ただ、彼が好きなだけなのに。

   **・**

「んッ……ああッ……咲夜……」

 久隆自身を人差し指と親指で支え、咲夜は根元から裏筋へ舐めあげる。何度も何度も行ったり来たりする濡れた舌の感触。奥の蕾を指の腹で撫でる感触に久隆は酔いしれた。咲夜のくれる愛撫は優しい。いつくしむように。鈴口を舐めて欲しくて少し首を起こし咲夜のほうを涙目で見つめると、月明かりに浮かぶ彼はほんとに美しかった。

「こっちが欲しいの?」

 まるで”淫乱だね”とでも言われているような気分になり、余計に興奮する。舌先で鈴口を濡らしカリの部分を吸い上げてからまた鈴口を舐め上げた。

「ああッ……ん……きもちいのッ」

 少し前まではこんな風になるなんて思いもしなかったのだ。不感症で気持ちいいなんてあまり感じたこともなかった。咲夜はカプリと久隆自身を口に含み、吸い上げながら上下する。おかしくなりそうだ。

「もっと甘い声あげてごらん」

 咲夜の綺麗な声は脳を犯していく。快楽に溺れることしか考えられなくなり、それでいいんだよとで言っているようで。

「はあッ……あんんッ」

 胸を仰け反らせ、感じるままに甘ったるい声を漏らす。

 ──犯して。
  何も考えられなくなるくらい犯して欲しい。
  咲夜のものにして。
  全部、全部。

「ホント、…久隆は可愛い」
「咲夜ぁ…」
「心配しなくても後ろもしてあげるよ」
「んッあ……拡げちゃ……やあッ」
 ぐいっと腰を持ち上げられ、蕾を拡げると咲夜は舌を差し入れる。入り口をちゅぱちゅぱされるのがとてつもなく気持ちいい。
「やッ……あああッ……あ……んんッ」
「ほんと、可愛い」
 もっと堕ちてしまえよ。どこからか声がする。
「大丈夫、気持ちいいことしかしないから」
 耳元でそう囁くと、ジェルと共に指が差し込まれた。
「あ……んんッ」
「ほら、気持ちい。エッチな声ばかり出して」
「はあッ……やああんッ」

 ──救われたい。
  救われない。
  まだ足りない。
  どこまで堕ちれば底に着くのだろうか?

   **・**

「んッ……」

 ──咲夜の匂いが好き。
  触れ合う肌の感触が心地いい。
  優しくて綺麗な声。
  自分だけに向ける極上の笑み。
  大好きなのッ。

「んんッ」
「久隆、大好きだよ。だから俺のこともっと好きになって」
「んッ……好きぃッ」
 身体を仰け反らせ、快楽を貪る。早く咲夜が欲しくて潤んだ瞳を向ければ口づけされる。
「んんッ」
「ほんと可愛い。エッチのことしか考えられないの?」
「うぅ……」
 咲夜に意地悪を言われ泣きそうになるが事実だ。

「そんな顔しないで、愛してるよ。挿れてあげるから泣かないの」
「咲夜ぁッ」
 ぎゅうっと咲夜の首に腕を回ししがみつくと、彼は久隆の奥から指を引き抜き自分自身を宛がった。くぷぷッと挿入され、久隆はまた甘い声を漏らす。今日、何度目の性交なのか…もうわからなかった。
「んッ……んッ……ああッ」

 ──気持ちいッ。
  他には何も考えられない。
  気持ちいいことだけ欲しい。
  もっと咲夜に犯されたい。

 どんどん壊れていく自分がいることはわかっているのに止められない。どうすればこの奈落から抜け出せるのか、久隆には皆目検討もつかなかった。

「咲夜……さくや……」
 うわごとのように彼の名を呼ぶ。
 彼に抱かれている間は、すっぽりと恋人である聖のことが抜け落ちてしまう。後に罪悪感が一気に襲ってくるのに、自分の意思ではもうどうにもならなかった。本来なら三人で話し合うべきなのに、その考えにすらたどり着かない。

「ここにいるよ」
「好きッ……」
「大好きだよ、久隆」

 その上、自分の言う好きは咲夜にまったく届いていなかったことに気付かないでいた。
 彼は性交上のうわ言としか思っておらず、日に日に病んでいったのだ。それを知るのは、咲夜が自分から引き離されることになってからである。そう、まだ少し先のことであった。
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