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3話『真実に気づいて』
6 葵の正論【微R】
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****♡side・咲夜
「ねえ、片倉って一人っ子?」
「そうだけど」
「お兄ちゃんとか欲しくない?」
可愛らしい彼は眉を寄せ困った表情をしてじっと咲夜を見つめている。
──そう簡単には思い通りにはならないか。
なら……。
「恋人っているの?」
「恋人?」
そっと手を掴み引き寄せると隣に座らせ、お得意の笑みを浮かべてみせた。咲夜に魅了されたのか葵はぽうっとなってしまう。
「可愛いね」
そっと彼の頬に手を添える。
「ねえ、エッチしたことある?」
耳元でそっと囁くとビクンと肩を揺らした。
「いい子」
そっと抱き寄せて髪を撫でれば彼は咲夜の胸に顔を埋める。
「姫川、いい匂いする」
「そう?」
「うん」
小さく頷く彼。咲夜は葵を自分の言いなりにしてしまおうと思っていた。だがそう簡単にはいかない。彼のほうが一枚上手なことを知るのだ。
「だめッ」
「キスはイヤ?」
顎をとり、口づけようとすると拒まれる。
「こんなことしちゃダメだよ」
怯えた声ではあったがはっきりとした拒絶に、咲夜はさらに彼に興味を抱く。
「何故?」
「だって、久隆くんのこと好きなんでしょ?」
「だから?」
「誰とでもこんなことするのはダメだと思う」
咲夜はそれを正論だと思った。ため息が漏れる。そっと彼から離れると立ち上がった。
「綺麗ごとだよ、そんなの」
「なんでそんな事言うの?」
彼はとても悲しそうに咲夜を見上げている。
「俺が誰とセックスしようが、久隆にはどうでもいいことだよ」
投げやりにそう吐き捨てるとカウンターの前まで歩いてゆく。
──久隆にとって自分は単なる媚薬。
恋人とのセックスを最大限楽しむための。
「!」
グラスを持ち上げミネラルウォーターに口をつけていたら不意に胸に腕が回り、背の低い彼に背後から抱き締められた。
「どうしてそんな風に言うの? 好きな人なんでしょ? そんな嫌な人なら好きになんてならないよね」
**・**
──久隆は……。
出逢って数日なのに優しくて可愛くて暖かい。
強くて弱い。家でも学校でも心細くないようにと傍に居てくれる。夜は寄り添って眠る。まるで双子の片割れのように傍に居ると落ち着く。彼の傍が自分の居場所だと思えるのに、彼の心は自分にはない。久隆は咲夜を単なる兄弟だと思っているのかもしれない。
「それに」
背後から可愛らしく優しい声。
「久隆くんだって、君のこと好きでしょ」
「何を根拠に」
「すぐに電話してきたじゃない。あの子、めったに自分からしない子だよ」
咲夜は自分の前で結ばれるその手に自分の手を添えた。柔らかくて滑々した、男にしては小さな手。
「電話、自分からするの苦手なのにメッセじゃなく、かけて来たんだよ?」
咲夜はただ俯いた。
久隆は勇気を出してかけてきたのにも関わらず、自分は素っ気ない態度をとってしまった。彼はそのことをどう思ったのだろう。そう思うと急に後悔が襲ってくる。
「片倉はなんでそんなに久隆のことがわかるの?」
聞かなきゃ良かったのに、どうして聞いてしまったのか。
「好きだから。久隆くんのことが」
なんでこうもライバルが多いのか。
「仲良くもないのに、変だと思う?」
「いや」
──俺だって出逢って数日しか経っていないのに、こんなに夢中なんだもの。
葵が大里から詳しく話を聞いていたなら変ではない。今頃、久隆はまだ大里の胸の中で互いの熱を貪っているに違いない。しかしながら久隆に最高の快楽を与えられるのは自分だけ。久隆が欲しがる快楽への入り口の扉の鍵を持つのは咲夜だけだ。
──欲しいままに彼を抱けるのは自分だけ……。
『んッ……さくぅ……やぁッ♡』
舌ったらずな甘えた声で
『だめぇッ……やぁんッ♡』
奥を突かれながら厭らしい声で咲夜の理性を奪ってゆく。久隆自身に指を絡めカリを刺激してやれば、胸を仰け反らせ愛液を迸らせるのだ。あの姿を想像すると、咲夜は堪らなくなる。
──早く帰って来ればいいのに。
咲夜の心は久隆のことでいっぱいになった。
「ねえ、片倉って一人っ子?」
「そうだけど」
「お兄ちゃんとか欲しくない?」
可愛らしい彼は眉を寄せ困った表情をしてじっと咲夜を見つめている。
──そう簡単には思い通りにはならないか。
なら……。
「恋人っているの?」
「恋人?」
そっと手を掴み引き寄せると隣に座らせ、お得意の笑みを浮かべてみせた。咲夜に魅了されたのか葵はぽうっとなってしまう。
「可愛いね」
そっと彼の頬に手を添える。
「ねえ、エッチしたことある?」
耳元でそっと囁くとビクンと肩を揺らした。
「いい子」
そっと抱き寄せて髪を撫でれば彼は咲夜の胸に顔を埋める。
「姫川、いい匂いする」
「そう?」
「うん」
小さく頷く彼。咲夜は葵を自分の言いなりにしてしまおうと思っていた。だがそう簡単にはいかない。彼のほうが一枚上手なことを知るのだ。
「だめッ」
「キスはイヤ?」
顎をとり、口づけようとすると拒まれる。
「こんなことしちゃダメだよ」
怯えた声ではあったがはっきりとした拒絶に、咲夜はさらに彼に興味を抱く。
「何故?」
「だって、久隆くんのこと好きなんでしょ?」
「だから?」
「誰とでもこんなことするのはダメだと思う」
咲夜はそれを正論だと思った。ため息が漏れる。そっと彼から離れると立ち上がった。
「綺麗ごとだよ、そんなの」
「なんでそんな事言うの?」
彼はとても悲しそうに咲夜を見上げている。
「俺が誰とセックスしようが、久隆にはどうでもいいことだよ」
投げやりにそう吐き捨てるとカウンターの前まで歩いてゆく。
──久隆にとって自分は単なる媚薬。
恋人とのセックスを最大限楽しむための。
「!」
グラスを持ち上げミネラルウォーターに口をつけていたら不意に胸に腕が回り、背の低い彼に背後から抱き締められた。
「どうしてそんな風に言うの? 好きな人なんでしょ? そんな嫌な人なら好きになんてならないよね」
**・**
──久隆は……。
出逢って数日なのに優しくて可愛くて暖かい。
強くて弱い。家でも学校でも心細くないようにと傍に居てくれる。夜は寄り添って眠る。まるで双子の片割れのように傍に居ると落ち着く。彼の傍が自分の居場所だと思えるのに、彼の心は自分にはない。久隆は咲夜を単なる兄弟だと思っているのかもしれない。
「それに」
背後から可愛らしく優しい声。
「久隆くんだって、君のこと好きでしょ」
「何を根拠に」
「すぐに電話してきたじゃない。あの子、めったに自分からしない子だよ」
咲夜は自分の前で結ばれるその手に自分の手を添えた。柔らかくて滑々した、男にしては小さな手。
「電話、自分からするの苦手なのにメッセじゃなく、かけて来たんだよ?」
咲夜はただ俯いた。
久隆は勇気を出してかけてきたのにも関わらず、自分は素っ気ない態度をとってしまった。彼はそのことをどう思ったのだろう。そう思うと急に後悔が襲ってくる。
「片倉はなんでそんなに久隆のことがわかるの?」
聞かなきゃ良かったのに、どうして聞いてしまったのか。
「好きだから。久隆くんのことが」
なんでこうもライバルが多いのか。
「仲良くもないのに、変だと思う?」
「いや」
──俺だって出逢って数日しか経っていないのに、こんなに夢中なんだもの。
葵が大里から詳しく話を聞いていたなら変ではない。今頃、久隆はまだ大里の胸の中で互いの熱を貪っているに違いない。しかしながら久隆に最高の快楽を与えられるのは自分だけ。久隆が欲しがる快楽への入り口の扉の鍵を持つのは咲夜だけだ。
──欲しいままに彼を抱けるのは自分だけ……。
『んッ……さくぅ……やぁッ♡』
舌ったらずな甘えた声で
『だめぇッ……やぁんッ♡』
奥を突かれながら厭らしい声で咲夜の理性を奪ってゆく。久隆自身に指を絡めカリを刺激してやれば、胸を仰け反らせ愛液を迸らせるのだ。あの姿を想像すると、咲夜は堪らなくなる。
──早く帰って来ればいいのに。
咲夜の心は久隆のことでいっぱいになった。
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