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3話『真実に気づいて』
1 久隆と葵
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****♡side・聖
翌日の放課後。
「久隆、一緒に帰ろう」
一分一秒でも久隆の傍にいたくて、聖は声をかけるのだが。
「ごめん、今日は用事が」
困った顔をし、上目遣いで見上げてくる彼はやはり可愛らしい。
教室の入り口で咲夜が腕組みをして久隆を待っていた。恐らく彼が関係しているのだろう。気分は良くないが仕方ない。
「わかった。でも」
「うん?」
「キスしたい」
「えっ」
驚いたのち、彼は頬を染めた。無理もないここは教室だ。
「いま?」
首を傾げる久隆。キスは嫌ではないらしい。
──困らせてるんだろうな。
聖はじっと久隆を見つめ、そっと胸に抱き寄せた。
「冗談だ……よ」
言っている最中にぎゅっと抱きつかれて困る。愛しい彼の体温、香りが心をくすぐってゆく。そして離れ難くなる。きっと数時間のことなのに。
「また後でな」
「来てくれるの?」
「ん、家着いたら教えて。何処に寄り道するか知らないけど、気をつけてな」
「うん」
腕を解くと彼の手の甲に口付けた。名残惜しそうに離れてゆく彼を見送ったあと、そういえばとスマホを取り出す。
”片倉から連絡来てたんだよな”と、メッセに目をやる。
突然習い事を辞めてしまったので心配してくれているようで。
”いまから時間があるか?”とメッセージを送ると、すぐに返事が戻ってくる。駅前の喫茶店で落ち合う約束を交わし教室を出た。
靴箱で数人の生徒に遊びに誘われたがお断りをし、校舎を後にする。習い事をやめたことを何処で聞きつけたのか、校門のところでも遊びに誘われる。そちらも丁重にお断りをし、聖は駅前を目指す。
──なんで俺が習い事やめたこと、みんな知ってるんだ?
怪訝に思いながらもBluetoothイヤホンを耳に差し込む。静かな街並みは音楽によって急にロマンチックに変わる。
”Relax your Mind”
ノリがよくて、優しくロマンチックな曲調だ。
──隣に君がいたら、もっと世界は色づくのに。
そんなことを思いながら、聖は空を見上げるのだった。
**・**
「待たせた? 悪い」
小柄で可愛らしい【片倉 葵】は、喫茶店の中ではなく外で待っていた。後ろ手に組んだ腕、木の手摺に寄りかかり店を見上げるように立っている彼は、こちらに気づくとニコッと微笑む。とても育ちが良さそうな柔らかい笑み。
「なんでも、好きなもの頼んでいいよ」
そういって彼の背に手をやり、店へとエスコートすると彼はいたずらっぽい目を向け、
「大里って、モテるでしょ?」
と。
「え?」
何故そんなことを言われるのかわからなかった。
「君の恋人って、ヤキモチ妬きだよね」
「は?」
──久隆がヤキモチ妬き?
そんなわけ……
「無自覚ってこと? まさか妬くわけないなんて思ってないよね?」
彼は店ではなく右手の方を見ていた。
その視線の先には久隆と咲夜がいて、ブティックから出てくるところであった。
──久隆は服を買いに?
え、もしかして……
デートのことが過った。
今週末は交流会で無理だが、自由時間を一緒に過ごす約束をしている。タイミングが悪かった。久隆はこちらに気づいて立ち止まる。その瞳は明らかに誤解をしていた。
「挨拶、したほうがいいと思うよ。こじれる前に」
葵は迷わず久隆の方へと歩き出す。聖も慌てて後を追った。
「こんにちは。君、大里の恋人なんだってね」
葵は物怖じせずに久隆に話しかける。久隆は泣き出しそうな顔をして葵にペコリと頭を下げた。
「習い事でよく一緒になるんだ。俺は片倉葵。大里とは友達。よろしくね」
「あ。そう……なんだ」
そこで久隆はようやくほっとした表情をする。
「俺は大崎久隆。こっちは義弟の咲夜」
咲夜は“よろしく”といって微笑む。聖はこの時まだ気づいて居なかった。
葵もまた久隆に興味を持っていることに。
翌日の放課後。
「久隆、一緒に帰ろう」
一分一秒でも久隆の傍にいたくて、聖は声をかけるのだが。
「ごめん、今日は用事が」
困った顔をし、上目遣いで見上げてくる彼はやはり可愛らしい。
教室の入り口で咲夜が腕組みをして久隆を待っていた。恐らく彼が関係しているのだろう。気分は良くないが仕方ない。
「わかった。でも」
「うん?」
「キスしたい」
「えっ」
驚いたのち、彼は頬を染めた。無理もないここは教室だ。
「いま?」
首を傾げる久隆。キスは嫌ではないらしい。
──困らせてるんだろうな。
聖はじっと久隆を見つめ、そっと胸に抱き寄せた。
「冗談だ……よ」
言っている最中にぎゅっと抱きつかれて困る。愛しい彼の体温、香りが心をくすぐってゆく。そして離れ難くなる。きっと数時間のことなのに。
「また後でな」
「来てくれるの?」
「ん、家着いたら教えて。何処に寄り道するか知らないけど、気をつけてな」
「うん」
腕を解くと彼の手の甲に口付けた。名残惜しそうに離れてゆく彼を見送ったあと、そういえばとスマホを取り出す。
”片倉から連絡来てたんだよな”と、メッセに目をやる。
突然習い事を辞めてしまったので心配してくれているようで。
”いまから時間があるか?”とメッセージを送ると、すぐに返事が戻ってくる。駅前の喫茶店で落ち合う約束を交わし教室を出た。
靴箱で数人の生徒に遊びに誘われたがお断りをし、校舎を後にする。習い事をやめたことを何処で聞きつけたのか、校門のところでも遊びに誘われる。そちらも丁重にお断りをし、聖は駅前を目指す。
──なんで俺が習い事やめたこと、みんな知ってるんだ?
怪訝に思いながらもBluetoothイヤホンを耳に差し込む。静かな街並みは音楽によって急にロマンチックに変わる。
”Relax your Mind”
ノリがよくて、優しくロマンチックな曲調だ。
──隣に君がいたら、もっと世界は色づくのに。
そんなことを思いながら、聖は空を見上げるのだった。
**・**
「待たせた? 悪い」
小柄で可愛らしい【片倉 葵】は、喫茶店の中ではなく外で待っていた。後ろ手に組んだ腕、木の手摺に寄りかかり店を見上げるように立っている彼は、こちらに気づくとニコッと微笑む。とても育ちが良さそうな柔らかい笑み。
「なんでも、好きなもの頼んでいいよ」
そういって彼の背に手をやり、店へとエスコートすると彼はいたずらっぽい目を向け、
「大里って、モテるでしょ?」
と。
「え?」
何故そんなことを言われるのかわからなかった。
「君の恋人って、ヤキモチ妬きだよね」
「は?」
──久隆がヤキモチ妬き?
そんなわけ……
「無自覚ってこと? まさか妬くわけないなんて思ってないよね?」
彼は店ではなく右手の方を見ていた。
その視線の先には久隆と咲夜がいて、ブティックから出てくるところであった。
──久隆は服を買いに?
え、もしかして……
デートのことが過った。
今週末は交流会で無理だが、自由時間を一緒に過ごす約束をしている。タイミングが悪かった。久隆はこちらに気づいて立ち止まる。その瞳は明らかに誤解をしていた。
「挨拶、したほうがいいと思うよ。こじれる前に」
葵は迷わず久隆の方へと歩き出す。聖も慌てて後を追った。
「こんにちは。君、大里の恋人なんだってね」
葵は物怖じせずに久隆に話しかける。久隆は泣き出しそうな顔をして葵にペコリと頭を下げた。
「習い事でよく一緒になるんだ。俺は片倉葵。大里とは友達。よろしくね」
「あ。そう……なんだ」
そこで久隆はようやくほっとした表情をする。
「俺は大崎久隆。こっちは義弟の咲夜」
咲夜は“よろしく”といって微笑む。聖はこの時まだ気づいて居なかった。
葵もまた久隆に興味を持っていることに。
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