上 下
10 / 45
1話『一つに繋がる糸と運命』

7 運命の相手

しおりを挟む
 ****♡side・久隆

 翌日のことだった。まだ気持ちが落ち着かないのに帰宅命令。
「はあ」
 ため息をつきながら帰宅すると兄がエントランスで待っていた。怒られるのかと縮こまる久隆に、彼は近づくと徐にその身を抱き締める。
「兄さん?」
「お帰り、心配したよ」
「! ……やっ……子供じゃないよッ」
 抱き上げられ、そのままソファーに腰掛ける兄に困惑した。
「不安で帰ってこなかったんだろ?」
 兄にはなんでもお見通しなのだろうか?

「兄さん」
 その胸に擦り寄ると後頭部をいいこいいこと撫でられる。
「まだ子供だよ、俺に甘えれば良い」
「弟ができるんでしょ?」
「兄は兄だろ」
 髪にちゅっと口付けされ、ぎゅっと抱き締められる。
 久しぶりの兄の胸の中に安堵を覚えた。
「圭一、久隆」
 そこへ父の声。相手が到着したとのことだった。

 ドクン……ドクン……

 それは突然起きた。
 思わず心臓の辺りを押さえる。

 ──なにこれ……

 久隆は兄の膝を降りエントランスの中央に向かう。心臓が高鳴っていく。何故そうなるのか分からなかった。胸騒ぎのようななんだか落ち着かない感じがして戸惑う。
「!」

 ──あ……

 そしてその波はやってきた。彼と共に。
「こんにちは、久隆くん。咲夜、挨拶して」
 父の婚姻相手である真咲はニコッと微笑んで後ろにいた少年を前に押し出す。綺麗な子だった。それよりも香りが……。
「はじめまして」
 彼の極上の笑みに目を奪われていると耳元で、
「俺の運命の人」
 と囁かれる。
「運命?」
「そうだよ、君は俺のものだよ。ね、義兄さん」

 ドクン……ドクン

「君だって、運命感じているんでしょ?」
 彼の良い匂いが久隆に中の何かを狂わせてゆく。
「咲夜、甘えん坊だから。仲良くしてあげてね」
 真咲に言われハッとなる。久隆は頷くのがやっとだった。

   **・**

「あ……えっと」
 咲夜が一人部屋を嫌がったので仕方なく自室に連れていったのだが、べったりでどうしていいのか戸惑う。
「俺、久隆に一目ぼれしちゃったんだ」
 綺麗な子に言われたからか、それとも咲夜だからなのか?
 頬が赤くなるのを感じていた。

 良い匂い……

「ねえ、久隆。ハグしてあげようか?」
「え?」
「だって、久隆なんか寒そう」
 ベッドの端に腰掛けていた久隆の膝の上に頭をのせ腕を腰に巻きつけてた咲夜は起き上がると、久隆を押し倒した。
「咲……」
「久隆、ねえ俺のこと好きになってよ」
 さっき逢ったばかりなのに。
 甘えるように折り重なると久隆の胸に頬をつける。まるで心臓の音でも聞こうとするかのように。

「ふふ……襲われると思った?」
「うん」
 久隆は胸の上に頭を乗せる咲夜の頭を優しく撫でる。
「今はしないよ」
「今は?」
「だって、嫌われたくないもの」
 彼の絹のような髪を撫でていると不思議な安らぎがあった。
「久隆、眠たいの?」
 なんだか急に睡魔が襲ってくる、きっとこの良い香りのせいだと思った。
 咲夜は久隆の上から降りると彼を抱き上げ、ベッドに対し平行に寝かし隣に寝転んだ。

「咲夜?」
「何もしないよ、一緒にお昼寝しよう」
「ん……」
 久隆はそのまま眠りに落ちていく。
「久隆、可愛い」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

クソザコ乳首アクメの一日

BL
チクニー好きでむっつりなヤンキー系ツン男子くんが、家電を買いに訪れた駅ビルでマッサージ店員や子供や家電相手にとことんクソザコ乳首をクソザコアクメさせられる話。最後のページのみ挿入・ちんぽハメあり。無様エロ枠ですが周りの皆さんは至って和やかで特に尊厳破壊などはありません。フィクションとしてお楽しみください。 pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。 なにかありましたら(web拍手)  http://bit.ly/38kXFb0 Twitter垢・拍手返信はこちらから https://twitter.com/show1write

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

処理中です...