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1話『一つに繋がる糸と運命』
2 久隆の本音【微R】
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****♡side・久隆
──ホントにバカだよな。
毎日、習い事三昧。
ほんとはやめちまえ! って言いたい。
でもすべて俺に好かれたくてやっていること。
やめろなんて、言えるわけない。
久隆はため息をつくと聖の背中に腕を回す。
自分とは違う男らしい背中。
無駄な肉はついていない。引き締まり骨格がしっかりしている。
──俺なんかじゃなくても、相手なんかいくらでもいる。
尋常じゃないくらいモテるいい男だ。
まだ高校生だからそれでもマシな方だろうが、大学に上がればもっと見た目も大人に近づいて更にモテるに違いない。
──心配?
したって無駄だろ?
決めるのは、聖なんだから。
どこか諦めてしまっている自分がいるのは、彼がお世辞ではなく”イイ男”だからだ。
「キス、上手いな」
「え……?」
単純に誉めたつもりだったのに、聖はなんだか泣き出しそうな顔をした。
「俺、何か疑われてる?」
「別に」
冷たい言い方になってしまい、少し後悔する。
「久隆だけだよ?」
「何も疑ってないし、仮に経験があったとしても……」
「俺は、久隆しか知らない!」
なぜそんなに怒るのかわからなかった。幼稚園の時から傍にいる幼馴染みのはずなのに、自分は彼のことを知らなすぎたのだ。
「誰ともしてない」
「なに、ムキになってるんだよ」
「だって……」
学校では聖が経験豊富だという噂が流れていたのだが、友達のいない久隆はそのことを知らなかった。もし知っていたなら余計なことは言わなかっただろう。久隆とて、そこまで空気の読めない奴ではないし彼を傷つけたいとは思っていない。
「みんな勝手なこと言って」
唇を噛み、悔しそうにする彼の頬に手をやる。
「俺は久隆しか知らない……久隆だけ」
「泣くなよ、信じるから」
どうにも上手くいかないのは、自分に劣等感を抱いているからなのか。
”俺は聖にとっては物足りない存在かもしれない”
久隆は昼間見たAVを思い出す。あれがフィクションなことを頭で理解はしているものの、感度の低い自分の身体が気になる。もっとよがって甘い声を出したほうが聖が喜ぶのではないだろうかと考えてしまう。とは言え、久隆には演技が出来ない。
”落胆させてしまっているんじゃないのか?”
悪いことばかり考えしまって、余計に行為に集中できなくなってしまう。
良くないとは分かっている。だがこれがもし不感症なら解決は難しい。
「久隆、良くない?」
久隆自身に指を絡め、首筋に舌を這わせていた彼が顔を上げた。
「きもちいよ」
彼をがっかりさせたくなくて精一杯の言葉を返す。不安そうに瞳を揺らす彼を見ると久隆は切なくなる。もしかしたら体の相性が悪いのではないか。そんな風にも思うのだが。
「聖、キスしよ」
「うん」
最初は啄ばむように、次第に深く。
──やはり上手いなと感じてしまう。
どうして自分はこんなにも冷静なのだろうか?
どうして頭空っぽにして抱かれることができないのだろう?
「好きだよ、久隆」
「うん、知ってるよ」
「愛してるよ」
「ちゃんとわかってるよ」
”俺も”と言うべきなのかもしれないが、彼は言葉を欲しがっているようには思えないのだ。
──もっと愛を囁いて夢中にさせてよ、聖。
好きなはずなのに、想いを受け入れたはずなのに。どこか頭の芯が冷めているようで分からなくなる。自分が想い描いた”恋”や”愛”とはこんなに冷静でいられるものなのかと。
──幼馴染でずっと一緒にいるからだよね、きっと。
聖は安心できる場所だから。
そう自分に言い聞かせて目を閉じる。
いつの間にか慣らされた最奥の蕾に聖自身があてがわれ自分の中に押し入ってくるのを感じながら。いつかこの安らぎが情熱にかわることを祈るのだ。
久隆はまだ知らない、全ての感情を持ち去るような激しい恋に出逢うことを。
──ホントにバカだよな。
毎日、習い事三昧。
ほんとはやめちまえ! って言いたい。
でもすべて俺に好かれたくてやっていること。
やめろなんて、言えるわけない。
久隆はため息をつくと聖の背中に腕を回す。
自分とは違う男らしい背中。
無駄な肉はついていない。引き締まり骨格がしっかりしている。
──俺なんかじゃなくても、相手なんかいくらでもいる。
尋常じゃないくらいモテるいい男だ。
まだ高校生だからそれでもマシな方だろうが、大学に上がればもっと見た目も大人に近づいて更にモテるに違いない。
──心配?
したって無駄だろ?
決めるのは、聖なんだから。
どこか諦めてしまっている自分がいるのは、彼がお世辞ではなく”イイ男”だからだ。
「キス、上手いな」
「え……?」
単純に誉めたつもりだったのに、聖はなんだか泣き出しそうな顔をした。
「俺、何か疑われてる?」
「別に」
冷たい言い方になってしまい、少し後悔する。
「久隆だけだよ?」
「何も疑ってないし、仮に経験があったとしても……」
「俺は、久隆しか知らない!」
なぜそんなに怒るのかわからなかった。幼稚園の時から傍にいる幼馴染みのはずなのに、自分は彼のことを知らなすぎたのだ。
「誰ともしてない」
「なに、ムキになってるんだよ」
「だって……」
学校では聖が経験豊富だという噂が流れていたのだが、友達のいない久隆はそのことを知らなかった。もし知っていたなら余計なことは言わなかっただろう。久隆とて、そこまで空気の読めない奴ではないし彼を傷つけたいとは思っていない。
「みんな勝手なこと言って」
唇を噛み、悔しそうにする彼の頬に手をやる。
「俺は久隆しか知らない……久隆だけ」
「泣くなよ、信じるから」
どうにも上手くいかないのは、自分に劣等感を抱いているからなのか。
”俺は聖にとっては物足りない存在かもしれない”
久隆は昼間見たAVを思い出す。あれがフィクションなことを頭で理解はしているものの、感度の低い自分の身体が気になる。もっとよがって甘い声を出したほうが聖が喜ぶのではないだろうかと考えてしまう。とは言え、久隆には演技が出来ない。
”落胆させてしまっているんじゃないのか?”
悪いことばかり考えしまって、余計に行為に集中できなくなってしまう。
良くないとは分かっている。だがこれがもし不感症なら解決は難しい。
「久隆、良くない?」
久隆自身に指を絡め、首筋に舌を這わせていた彼が顔を上げた。
「きもちいよ」
彼をがっかりさせたくなくて精一杯の言葉を返す。不安そうに瞳を揺らす彼を見ると久隆は切なくなる。もしかしたら体の相性が悪いのではないか。そんな風にも思うのだが。
「聖、キスしよ」
「うん」
最初は啄ばむように、次第に深く。
──やはり上手いなと感じてしまう。
どうして自分はこんなにも冷静なのだろうか?
どうして頭空っぽにして抱かれることができないのだろう?
「好きだよ、久隆」
「うん、知ってるよ」
「愛してるよ」
「ちゃんとわかってるよ」
”俺も”と言うべきなのかもしれないが、彼は言葉を欲しがっているようには思えないのだ。
──もっと愛を囁いて夢中にさせてよ、聖。
好きなはずなのに、想いを受け入れたはずなのに。どこか頭の芯が冷めているようで分からなくなる。自分が想い描いた”恋”や”愛”とはこんなに冷静でいられるものなのかと。
──幼馴染でずっと一緒にいるからだよね、きっと。
聖は安心できる場所だから。
そう自分に言い聞かせて目を閉じる。
いつの間にか慣らされた最奥の蕾に聖自身があてがわれ自分の中に押し入ってくるのを感じながら。いつかこの安らぎが情熱にかわることを祈るのだ。
久隆はまだ知らない、全ての感情を持ち去るような激しい恋に出逢うことを。
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