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1話『一つに繋がる糸と運命』
1 大好きな彼
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****♡side・聖
高校三年の春、聖たちは晴れて恋人同士になった。久隆は相変わらず塩対応だけれど、聖は幸せを噛み締めているのだが……。
「なあ、久隆」
「ん?」
隣の席で帰り支度をしていた愛しい恋人に声をかける。
今日こそデートに誘うんだ! と意気込みつつ。
「デートしよう?」
「は?」
──オーマイガ! なんだよ、その反応?!
なあ、俺のこと好きじゃないのかよ?!
「忙しいんだろ? 頭大丈夫か?」
彼は可愛らしい顔を険しくして指先でトントンと頭を指した。
「忙しいけどさ!」
「だろ? 帰るぞ」
久隆はカバンを肩から掛けると先に歩き出す。聖はカバンを担ぐと慌てて後を追った。教室を出る時、数人の女子に声をかけられ片手を上げる。
「大変おモテになりますね」
抑揚のない冷たい声で彼が嫌味を言うので、聖は苦笑いをした。高身長、美麗、モデル体系で足がすらりと長く、何でも器用にこなし将来は大里グループの総裁。モテないわけがない。
「俺がモテたいのは久隆にだけなんだが?」
「へえ、口もお上手ですね」
こっちを見ようともしない彼に少し泣きたい気持ちになる。
──なんだよ、ホントなのに。
デートに誘っても喜びもしないしさ。
「今は習い事なにやってるんだ?」
聖がため息をつきガックリと肩を落とすと、彼は話を変えた。
「ピアノ、料理、英会話、歌のレッスン、ギター、茶道それから……」
「ジムもいってるんだろ? 何になりたいんだよ」
「久隆の旦那」
「馬鹿なのか?」
──本気で言ったのに馬鹿扱いって。
はあ……
「久隆、どこか寄り道していこうぜ。駅前にお洒落なカフェができたんだ。ケーキが凄くお洒落だってクラスのヤツが」
「アホか? 俺たち、甘いもの苦手じゃないかよ」
「……」
聖は返す言葉がなかった。一緒に居たいのに上手くいかない。
「今日は放課後あいてるのか?」
靴箱のところで立ち止まると彼は聖を見上げて。
「ん」
「うち、くる?」
──久隆が好きだ。
押して押して押し捲って、無理矢理”うん”と言わせた関係かもしれないけれど。
ずっと、好きだった。
他には何もいらない。
この腕の中の温もりだけでいい。
「何も、しないのか?」
久隆の部屋はシンプルで、まるで彼を象徴しているかのようだった。
ベッドの上で彼を抱きしめていると温もりを感じ、幸せな気持ちに浸れる。
「するけど、少しこのままでいたい」
「そっか」
──ねえ? 俺のこと、どう思ってる?
少しは好きでいてくれてる?
「もうすぐ交流会だな」
K学園では泊りがけで大学部との交流会が年に一度あるのだが。久隆の言葉でそれを思い出す。聖は中等部時代に生徒会副会長をしていた。そういう経緯で参加しなくてはならなかった。
「行きたくない」
「それは駄目だろ?」
──久隆と三日も離れるなんて!
死んでしまう。
(それは大げさだ)
「久隆と一緒にいたい」
「たかが三日だろ?」
「俺が逆ナンパされまくってもいいのかよ?! 心配じゃないのかよ」
ぎゅっと抱きしめて抗議すれば呆れた声で、
「モテ自慢か?」
と、言われる。
「大里おまえがモテるのなんて今に始まったことじゃないし」
「俺がふらふらっと他の人に行っても……」
「へえ、浮気するんだ?」
ヤキモチを妬いてほしくて言えば、返り討ちに合う。
「……」
「なんだよ、そんな恨みがましい目して」
「ヤキモチ妬いてよ」
──好きを感じさせてよ。
なあ? 心配じゃないのかよ?
久隆は俺のことなんて
じっと見つめていたら、彼がふっと笑う。
「馬鹿だな、ホント」
「なっ」
「好きだよ、しようよ。聖」
首に腕を絡め、微笑む彼に胸が高まるのを感じていた。
高校三年の春、聖たちは晴れて恋人同士になった。久隆は相変わらず塩対応だけれど、聖は幸せを噛み締めているのだが……。
「なあ、久隆」
「ん?」
隣の席で帰り支度をしていた愛しい恋人に声をかける。
今日こそデートに誘うんだ! と意気込みつつ。
「デートしよう?」
「は?」
──オーマイガ! なんだよ、その反応?!
なあ、俺のこと好きじゃないのかよ?!
「忙しいんだろ? 頭大丈夫か?」
彼は可愛らしい顔を険しくして指先でトントンと頭を指した。
「忙しいけどさ!」
「だろ? 帰るぞ」
久隆はカバンを肩から掛けると先に歩き出す。聖はカバンを担ぐと慌てて後を追った。教室を出る時、数人の女子に声をかけられ片手を上げる。
「大変おモテになりますね」
抑揚のない冷たい声で彼が嫌味を言うので、聖は苦笑いをした。高身長、美麗、モデル体系で足がすらりと長く、何でも器用にこなし将来は大里グループの総裁。モテないわけがない。
「俺がモテたいのは久隆にだけなんだが?」
「へえ、口もお上手ですね」
こっちを見ようともしない彼に少し泣きたい気持ちになる。
──なんだよ、ホントなのに。
デートに誘っても喜びもしないしさ。
「今は習い事なにやってるんだ?」
聖がため息をつきガックリと肩を落とすと、彼は話を変えた。
「ピアノ、料理、英会話、歌のレッスン、ギター、茶道それから……」
「ジムもいってるんだろ? 何になりたいんだよ」
「久隆の旦那」
「馬鹿なのか?」
──本気で言ったのに馬鹿扱いって。
はあ……
「久隆、どこか寄り道していこうぜ。駅前にお洒落なカフェができたんだ。ケーキが凄くお洒落だってクラスのヤツが」
「アホか? 俺たち、甘いもの苦手じゃないかよ」
「……」
聖は返す言葉がなかった。一緒に居たいのに上手くいかない。
「今日は放課後あいてるのか?」
靴箱のところで立ち止まると彼は聖を見上げて。
「ん」
「うち、くる?」
──久隆が好きだ。
押して押して押し捲って、無理矢理”うん”と言わせた関係かもしれないけれど。
ずっと、好きだった。
他には何もいらない。
この腕の中の温もりだけでいい。
「何も、しないのか?」
久隆の部屋はシンプルで、まるで彼を象徴しているかのようだった。
ベッドの上で彼を抱きしめていると温もりを感じ、幸せな気持ちに浸れる。
「するけど、少しこのままでいたい」
「そっか」
──ねえ? 俺のこと、どう思ってる?
少しは好きでいてくれてる?
「もうすぐ交流会だな」
K学園では泊りがけで大学部との交流会が年に一度あるのだが。久隆の言葉でそれを思い出す。聖は中等部時代に生徒会副会長をしていた。そういう経緯で参加しなくてはならなかった。
「行きたくない」
「それは駄目だろ?」
──久隆と三日も離れるなんて!
死んでしまう。
(それは大げさだ)
「久隆と一緒にいたい」
「たかが三日だろ?」
「俺が逆ナンパされまくってもいいのかよ?! 心配じゃないのかよ」
ぎゅっと抱きしめて抗議すれば呆れた声で、
「モテ自慢か?」
と、言われる。
「大里おまえがモテるのなんて今に始まったことじゃないし」
「俺がふらふらっと他の人に行っても……」
「へえ、浮気するんだ?」
ヤキモチを妬いてほしくて言えば、返り討ちに合う。
「……」
「なんだよ、そんな恨みがましい目して」
「ヤキモチ妬いてよ」
──好きを感じさせてよ。
なあ? 心配じゃないのかよ?
久隆は俺のことなんて
じっと見つめていたら、彼がふっと笑う。
「馬鹿だな、ホント」
「なっ」
「好きだよ、しようよ。聖」
首に腕を絡め、微笑む彼に胸が高まるのを感じていた。
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