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2021'7

霊の謳

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白黒飴 様作

【あらすじ引用】
柊 劉兎(ひいらぎ りゅうと)は、死んだ。
「お兄さん……死んじゃったんですか?」
大学二年生の秋、劉兎は不慮の事故に巻き込まれて死んでしまう。
野次馬に何度も話しかけ、無視される毎に募る死の自覚が累積する中、ある女子高生が手を差し伸ばす。
「実は私もなんですよ」
えっ? という間に劉兎の頬には斬り傷が入り、女子高生は目の前で爪が伸びる異形へと様変わる。
幽霊になってまで化け物に追いかけられる劉兎は、その女子高生が『小人』と呼ばれる幽霊だと知り、悶え苦しんだ。
幽霊になって間もなく、劉兎は二度目の死を間近に感じ、足掻き、抗った後に彼の身体は『霊力』という力を発現させた。
反射で女子高生を殴り飛ばした劉兎の拳には、琥珀色のオーラが纏われていて、ぐちゃぐちゃになって落ちてきた女子高生だったものが、薄い目で睨んでいた。
間もなく、彼も意識を落としてしまう。
「起きた?」
けれども、意識を取り戻した劉兎が見たのは、傷んだ灰色の髪の毛を拵える萌葱(もえぎ)と呼ばれる女性。
そして、その背後には、白髪で背筋が伸びた幸太郎(こうたろう)という老人が立っていた。
突然の事で警戒心を丸出しにする劉兎に対し、萌葱と幸太郎は微笑みながら劉兎に進言する。
「君に、この悪霊退散会に入って欲しい」
幽霊達の世界『霊界』に住み、悪霊を退治する組織『悪霊退散会』。
生前、ただの大学生として生きてきた劉兎は、当然ながら人の形をしたモノを殺すのに抵抗がある。
「嫌なら、逃げてしまえばいい」
そんな言葉が心から漏れ、後ずさる感情が後ろ髪を引っ張る中、劉兎は言った。
「入ります」と。
これは、幽霊として悪霊を倒す仕事に就き、葛藤しながらも個性豊かな仲間達と成長していく青年の物語。

【物語は】
死とはどんなものか? から、ある事故現場へと移り変わる。
事故現場の遺体が誰のものか判明し、主人公が絶望するところから物語は新たな展開を見せはじめる。いきなり窮地に立たされ、ある出来事から命からがら助かるのだが。その時発現したのがこの物語で重要な一つの要素ととなる”霊力”。これがどんなものなのかは、この先明かされていくのだろう。
主人公は何とか助かったものの、意識を失ってしまう。この先、主人公はどんなことに遭遇してくのだろうか?

常用しなさそうな言葉について補足
*暫定死体とは?(造語)
多分、死体としか言えない肉の塊
*有象無象
世にたくさんある、くだらないもの。

【世界観・舞台の魅力】
二話に入ると、この物語の世界観が明かされていく。この世界では、生きている人間の生界と、死んだ者の集まる霊界というものが存在する。主人公は、この霊界を舞台として、様々な事件や出来事に遭遇していくのではないだろうかと想像する。

あらすじにもある、悪霊退散会。
彼らは人間に例えると、”寿命”というものにあたるものを消費することによって、”霊力”を使用し悪霊を倒すのを生業としている。そして、転生の為にそれを減らす必要があるというのが、この物語の主軸(もしくは重要)となる部分なのではないだろうか?
ここの部分では、世界観について詳しく語られている。この他にもいろいろと、オリジナル要素があるようだ。(詳しくは本編にて)

不思議な世界観であると感じた。珈琲を飲むシーンが印象的。死後ではあるが、痛みも感じるし、珈琲なども呑めるというのが奇抜であり、面白いなと感じた。かなり独創的である。
霊力というものは、悪霊と戦う時に武器を体現するのにも使うようだ。傷を治すにも、霊力を消費する。簡単に説明すると、霊力は一つのことをすることだけに消費されるわけではない。

例えるなら、電力のようなものだろうか?
お湯を沸かすのにも、電気をつけるにも、TVをつけるにも消費する。このように、ある種のものにこの霊力が消費されるのである。

【物語・登場人物の魅力】
部門によって、教えてくれる師が違うようだ(正しくは師ではないが)。
主人公は初めこそは頼りなくて、ひ弱な印象を持つが、覚悟を決めてからは一所懸命、霊力を使いこなそうと頑張っているように見える。このことから冒頭でひ弱な印象を受けたのは、突然の出来事によるショックの為だったのではないだろうかと、想像する。
もし自分が、二十歳前後で交通事故に遭い人生を終えてしまったと想定したなら? もしそれを客観的に見ることが出来たならば? 
誰しも正常ではいられないと思う。もし冷静でいられるとしたならば、元々感じづらい性格か、もしくはショックが大きすぎて、逆に冷静になってしまうパターンなのではないだろうか?

物語は、修行を経ていよいよ実践となっていく。
この物語では、早々に強敵が現れる。この流れは、目指すところが分かりやすいという意味では、とても良い展開だ感じた。例えばこの時の主人公と、再戦した時の主人公の強さを比べたりなど。

敵にもいろいろあるようで、七不思議などもモチーフとして取り入れられている。この為、親しみやすい部分もあると思われる。
設定自体が少し複雑な部分もあるので、組み合わせとしてバランスが良いのではないだろうか? もちろんそれだけではなく、物語にもオリジナルの展開が用意されているのが魅力である。

【物語の見どころ】
まずは、舞台、世界観設定がしっかりしており、独創性に優れているところが見どころである。四字熟語が多い為、一部常用しない言葉は、分かり辛い部分もあるが。
オリジナル部分については一つ一つ丁寧に説明がなされている為、分からなくなると言うことはない。アクション部分についても、行動描写が丁寧なので想像しやすい。

主人公が、むやみに強いわけではないという点も、見どころの一つなのではないだろうか? 普通の人間とは言い難いかも知れないが、平凡に見える主人公は感情移入しやすいと思う。修行や実践により霊力の使い方は習得したものの、いつも危険と隣り合わせ。必死だからこそ、ハラハラするし応援した気持ちにもなる。そのくらい戦闘シーンは激しいと感じた。
そして、モチーフの取り入れ方も見どころの一つ。知っているモチーフにオリジナル要素が加わり、想定外の展開となっていく。登場人物それぞれに、個性を感じる。

あなたもお手に取られてみませんか?
果たして主人公はこの先、どのように成長を遂げていくのだろうか?
是非、その目で確かめてみてくださいね。おススメです。
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