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2021’3
約束のあやかし堂 ~夏時雨の誓い~
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陰東 一華菱 様作
【あらすじ引用】
高知県吾川郡仁淀川町。
四万十川に続く清流として有名な仁淀川が流れるこの地には、およそ400年の歴史を持つ“池川神社”と呼ばれる社がある。
山間にひっそりと佇むこの社は仁淀川町を静かに見守る社だった。
そんな池川神社に、1匹のあやかしが棲んでいた。
その猫が見える人間は誰一人としていない。
誰の目にも止まらないその猫の名は――狸奴りと。
夜になると、狸奴は人の姿に変わり、池川神社の境内に立ち神楽鈴を手に舞を踊る。ある人との約束を守る為に、人々の安寧を願い神楽を舞う。
ある日、その池川神社に一人の女子大生が訪れた。
彼女はこの地域には何の縁もゆかりもない女子大生――藤岡加奈子。
神社仏閣巡りが趣味で、夏休みを利用して四国八十八か所巡りを済ませて来たばかりの加奈子は一人、地元の人間しか知らないような神社を巡る旅をしようと、ここへとたどり着く。
【物語は】
ある者が、声が聞こえ思案に耽るところから始まる。それは幻聴なのか、それとも現実なのか。その相手を待つある者に、イヤな予感が過る。これは、始まりの章。全ての始まりであり、経緯がここに記されている。
本編が始まると、少し雰囲気が変わり、主人公の視点となる。まずここで凄いと思うのは、時代らしさを産むという拘り。ページが変わっただけで、時代が変わったのだなと感じ、自然に切り替わる。しかも、読みやすい。主人公がここにいる目的や、どれほど何に興味が惹かれているのか。一般的な感覚と自分の感覚との違い。それにより、拘りなども表現されていく。彼女は宿にて土地の情報を得るのだが、その中で一番興味を惹かれたものが意外なものであった。
【登場人物の魅力】
冒頭に出てくる人物については、後程さらに語られるのではなかと感じた。この物語はモノローグで語られていくが、とても分かりやすく滑らかな文体と作風が特徴だと言える。今回のお遍路についてどれほど楽しみにしていたのか、心情によって伝わってくる。他にも、彼女のアクティブさからは、スピード感を得られる。それは、何を考え何を思い、どういう行動に出るのか。何に興味関心を持つのか、その理由はなんなのかなどが丁寧に描かれており、読者を納得させつつ、展開されていく。その為、彼女がどんな人物でなのか、明確な言葉として書かれていなくても、分かりやすいのである。
彼女は、好きなものに対しての姿勢も大切にしている。だからこそ、在り方について、自分なりの考えを述べることが出来るし、好きなものを大切に出来る。そして、明確な意思を持って行動できるのではないかと思う。
【物語の魅力】
この物語に出てくる登場人物たちは、それぞれ特徴があり、自分の意志で生きていることがわかる。現代でなら認められたかもしれない多様性。しかし、昔はマイノリティの存在自体が認められていなかった。それでも信念を貫き通した人物がいる。信念を貫き通したその先に、理不尽さしかなくても。
主人公の旅は一人旅である。女子大生というと複数で旅をするイメージもあるが、段々と集団ではなくお一人様というものも増えてきた。一人旅が出来るという事は、困った時に気軽に人に聞くことが出来ないと難しい。確かに便利な世の中になり、スマホ一つでなんでも検索することは出来る。しかし、それは旅の醍醐味からは外れてしまうのではないだろうか。一期一会も、旅の楽しみの一つ。主人公も実際、たまたま同じ目的だった人物たちと話をしている。神社仏閣巡りが趣味とあるので、普段から旅慣れているのかも知れない。そう感じるほどに、リアリティが持たされた作品である。
【この物語の見どころ】
まずこの物語には、らしさを出すための拘りを感じる。例えば、その時代らしさ、その土地らしさといったような。
次に、人々が生きている。変なことを言ってるように感じるかもしれないが、生きて”そこ”にいることが感じられるのだ。それほど、描写や話の流れがとても滑らかである。モノローグの中で、主人公は感想や考えを述べていく。なので、何を考えてからこの行動へ移るのかが分かりやすい。ドラマを観ているような気持ちになるのだ。とても巧い作品であると感じた。この後。主人公はいよいよターニングポイントとなる地へ赴くのだろうと想像する。
是非あなたもお手に取られてみませんか?
約束を果たそうとするあやかしと神社仏閣巡りが趣味の女子大生は、一体どんな風に関わっていくのだろうか?彼女はこの旅の終わりに何を手にするのだろうか?お奨めです。
【あらすじ引用】
高知県吾川郡仁淀川町。
四万十川に続く清流として有名な仁淀川が流れるこの地には、およそ400年の歴史を持つ“池川神社”と呼ばれる社がある。
山間にひっそりと佇むこの社は仁淀川町を静かに見守る社だった。
そんな池川神社に、1匹のあやかしが棲んでいた。
その猫が見える人間は誰一人としていない。
誰の目にも止まらないその猫の名は――狸奴りと。
夜になると、狸奴は人の姿に変わり、池川神社の境内に立ち神楽鈴を手に舞を踊る。ある人との約束を守る為に、人々の安寧を願い神楽を舞う。
ある日、その池川神社に一人の女子大生が訪れた。
彼女はこの地域には何の縁もゆかりもない女子大生――藤岡加奈子。
神社仏閣巡りが趣味で、夏休みを利用して四国八十八か所巡りを済ませて来たばかりの加奈子は一人、地元の人間しか知らないような神社を巡る旅をしようと、ここへとたどり着く。
【物語は】
ある者が、声が聞こえ思案に耽るところから始まる。それは幻聴なのか、それとも現実なのか。その相手を待つある者に、イヤな予感が過る。これは、始まりの章。全ての始まりであり、経緯がここに記されている。
本編が始まると、少し雰囲気が変わり、主人公の視点となる。まずここで凄いと思うのは、時代らしさを産むという拘り。ページが変わっただけで、時代が変わったのだなと感じ、自然に切り替わる。しかも、読みやすい。主人公がここにいる目的や、どれほど何に興味が惹かれているのか。一般的な感覚と自分の感覚との違い。それにより、拘りなども表現されていく。彼女は宿にて土地の情報を得るのだが、その中で一番興味を惹かれたものが意外なものであった。
【登場人物の魅力】
冒頭に出てくる人物については、後程さらに語られるのではなかと感じた。この物語はモノローグで語られていくが、とても分かりやすく滑らかな文体と作風が特徴だと言える。今回のお遍路についてどれほど楽しみにしていたのか、心情によって伝わってくる。他にも、彼女のアクティブさからは、スピード感を得られる。それは、何を考え何を思い、どういう行動に出るのか。何に興味関心を持つのか、その理由はなんなのかなどが丁寧に描かれており、読者を納得させつつ、展開されていく。その為、彼女がどんな人物でなのか、明確な言葉として書かれていなくても、分かりやすいのである。
彼女は、好きなものに対しての姿勢も大切にしている。だからこそ、在り方について、自分なりの考えを述べることが出来るし、好きなものを大切に出来る。そして、明確な意思を持って行動できるのではないかと思う。
【物語の魅力】
この物語に出てくる登場人物たちは、それぞれ特徴があり、自分の意志で生きていることがわかる。現代でなら認められたかもしれない多様性。しかし、昔はマイノリティの存在自体が認められていなかった。それでも信念を貫き通した人物がいる。信念を貫き通したその先に、理不尽さしかなくても。
主人公の旅は一人旅である。女子大生というと複数で旅をするイメージもあるが、段々と集団ではなくお一人様というものも増えてきた。一人旅が出来るという事は、困った時に気軽に人に聞くことが出来ないと難しい。確かに便利な世の中になり、スマホ一つでなんでも検索することは出来る。しかし、それは旅の醍醐味からは外れてしまうのではないだろうか。一期一会も、旅の楽しみの一つ。主人公も実際、たまたま同じ目的だった人物たちと話をしている。神社仏閣巡りが趣味とあるので、普段から旅慣れているのかも知れない。そう感じるほどに、リアリティが持たされた作品である。
【この物語の見どころ】
まずこの物語には、らしさを出すための拘りを感じる。例えば、その時代らしさ、その土地らしさといったような。
次に、人々が生きている。変なことを言ってるように感じるかもしれないが、生きて”そこ”にいることが感じられるのだ。それほど、描写や話の流れがとても滑らかである。モノローグの中で、主人公は感想や考えを述べていく。なので、何を考えてからこの行動へ移るのかが分かりやすい。ドラマを観ているような気持ちになるのだ。とても巧い作品であると感じた。この後。主人公はいよいよターニングポイントとなる地へ赴くのだろうと想像する。
是非あなたもお手に取られてみませんか?
約束を果たそうとするあやかしと神社仏閣巡りが趣味の女子大生は、一体どんな風に関わっていくのだろうか?彼女はこの旅の終わりに何を手にするのだろうか?お奨めです。
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