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2021’3

鬼の幸せな一生

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木風麦 様作

【あらすじ引用】
孤独な鬼と、訳アリの人間二人との出会い。
その出会いは、鬼の生に光をもたらした。

少し切なくも、情にあふれた物語。

【物語は】
鬼と呼ばれる野獣の見た目の者が産み落とされたまま山に捨てられ、生存本能に従った結果、人も食らうようになる。そこで不思議な現象が起きた。人を食らい続けた結果、人の言葉が理解できるようになったのだ。(もちろん、これを読んでそんなことが起きると信じる人はいないとは思うが、これは物語の設定である。念のため)
そんな鬼はある日、いつものように捨てられている赤子を見つける。人間は鬼にとって食料でしかなかったが、この日違った。これが鬼にとってのターニングポイントとなる。孤独な鬼は、一体どんな体験をするのだろうか?

【登場人物の魅力】
主人公の鬼は、孤独な生活を強いられていた。その鬼はある女性と子に出逢うことによって情というものが芽生えていく。いつしか人間の気持ちが理解できるようになり、読者はこの鬼がまるで人のように思えるようになる。
人間とはなんだろうか?と考えさせられる構成となっており、この物語には辛い出来事が多い。だからこそ鬼の選択や後悔について読者が深く考え、作者からのメッセージも感じるのだろうと思う。

【物語の魅力】
人の方が鬼なのではないかと感じる物語。鬼が何故産まれたのかというところにも注目したい。孤独だった者が家族を得る。家族とは血のつながりのみで感じるわけではない。家族であろうとも、自分以外の人間は他人である。心を通わせえることが出来るとは限らないし、分かり合いたいと思えるとも限らない。あくまでも、人間は個々の物体でしかない。
そんな中で、種族すら違う鬼とある女性と子が互いに心を許し、家族のように感じ始める。この物語は一般的にイメージをするハッピーエンドとは言えないかも知れないが、”鬼にとっては、幸せな一生”であるという事。
ここに作者の読者へ伝えたい想いや、作者の思想や幸せに対する概念とはどんなものなのかについて考えさせられる物語だ。

【物語の見どころ】
感情を理解していく鬼。そこで産まれていく情。鬼よりも、鬼らしい人間。
では人間とは一体なんなのか、人間らしくあるとはどういうことなのか。鬼は最後まで、女性の連れていた子の幸せを願う。そこに、自分の死の要因となった者に対しての恨みも憎しみもない。愛とは何なのだろうかについても考えさせられる。そして幸せとは何かについても。
人によって幸せと感じられることは違う。ハッピーという言葉は幸せという意味だが、一般的に考えられる”みんなニコニコ”ばかりが、幸せとは限らないという事だ。この物語での幸せとは”充実”や”他の者の幸せ”を自分の幸せとしてることなのではないか。しかしながら、これは一つの解釈でしかない。

あなたなら、この物語を読んでどんなことを思いますか?
あなたなりの答えを見つけて見て欲しいと思います。
是非お手に取られてみてくださいね。おススメです。
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