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5:誤解を解くために
4 喫茶店のマスターと裕也
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****side■裕也
『そもそも、なんでそんなことを調べているんだよ』
裕也は従兄である【慎】に問われ、彼に事情を説明した。
すると、”本人と話すか真相を知っている者に聞くのがいい”と至極当然の助言を受けてしまう。所詮噂は噂でしかなく、真相は本人のみぞ知る。そういうことだろう。
──真相を知っている人か。
白石先輩に直接聞くことが出来れば、それに越したことはないんだがな。
出来ないからこうして遠回りをしているわけだ。
もし白石に逢っているところを見られては本末転倒。余計に理人を怒らせることになる。
彼とつき合っていたと噂されるのは全部で四人。全員年上な上に、一人は海外留学中。もう少しで帰国するらしいが。
──一番近しいのはやはり現在の交際相手だろうな。
女性と会うよりも男性と会う方がまだマシか?
とは言っても、【白石奏斗】の現在の恋人とされる【楠和馬】は一緒に例の喫茶店にやってくることが多い。彼だけに話を聞くのは難しいだろう。
──となると確実な方法は……。
喫茶店のマスターに伝言を託すこと。
安全な方法はそれしかないという結論に至った裕也は、早速喫茶店に向かうことにした。優紀が別ルートで調査を開始したことも知らずに。
例の喫茶店に着くとお目当ての人物はいなかった。むしろ好都合だと思った裕也は、カウンターに腰かけマスターと落ち着いて会話ができるタイミングを見計らっていた。
この喫茶店は夜になるとメニューが変わるため、15時には一旦閉店となる。それまでにコンタクトを取らねばならないと焦る裕也はチラチラマスターの方へ視線を向けていたのだが。
「随分と回りくどいことしてるのねえ」
「急がば回れってね」
マスターの方から『何か用があるのか?』と声をかけてくれたので事情を話すと、店を閉めている間に聞いてくれるという。渡りに船であった。
「伝言なんてしなくても、彼から直接話してもらえばいいのに」
「そうしたいのは山々だけど、理人は白石先輩を信用してないから」
苦笑いをしつつそう返答すれば、彼は『そうなの』と肩を竦める。
「わたしも噂については耳にしたことがあるけれど、彼はとても真面目で一途な人よ」
一途な人が三股をかけるのか? とツッコみたくなったが裕也は黙っていた。余計なことは言うものではない。
「まあ……何というか、優しすぎるのか責任感が強いのか分からないけれど、強く出られない部分があるからトラブルに巻き込まれやすいとは思うわ」
──三股かけていたことは……トラブル?
わけが分からないなと思いつつも、絹サヤの筋を取っていく。
「それと……いつも一緒にいる彼。あの感じは恋人関係ではないわね」
「え」
「勘に過ぎないわよ? 雰囲気も会話も恋人という感じはするけれど、何か引っかかるものがあるのよね。違和感……かしら」
彼らはこの喫茶店の常連。よくカウンターを利用するという。
自分たちもこの喫茶店にはよく顔を出す方だ。もちろん彼らに遭遇したのは一度や二度ではない。
「高等部の時におつき合いしていたのは本当の話?」
「それは事実みたいね」
『次はこれをお願い』と言われ、苺のへた取りをはじめる裕也。
──何を調べたら『何も起きない』ことの証明になるのだろう?
恋人がいるくらいでは信用しない理人のことだ。白石の心が優紀に動かないと証明する何かが必要だろう。
確か白石が現在交際している相手には、もう一人恋人がいるという話だった。
「マスター」
「何かしら?」
「白石先輩って……あまり嫉妬とかしたりしない人?」
「それはちょっと分からないわね。わたしの恋人ではないし」
彼の返事を聞いて”そりゃそうだ”と思った裕也。だが彼は顎に手を持っていくと少し思案したのち、『それよ!』とこちらに指先を向ける。
「どれ」
「違和感の正体よ」
裕也はますますわけが分からなくなったのだった。
『そもそも、なんでそんなことを調べているんだよ』
裕也は従兄である【慎】に問われ、彼に事情を説明した。
すると、”本人と話すか真相を知っている者に聞くのがいい”と至極当然の助言を受けてしまう。所詮噂は噂でしかなく、真相は本人のみぞ知る。そういうことだろう。
──真相を知っている人か。
白石先輩に直接聞くことが出来れば、それに越したことはないんだがな。
出来ないからこうして遠回りをしているわけだ。
もし白石に逢っているところを見られては本末転倒。余計に理人を怒らせることになる。
彼とつき合っていたと噂されるのは全部で四人。全員年上な上に、一人は海外留学中。もう少しで帰国するらしいが。
──一番近しいのはやはり現在の交際相手だろうな。
女性と会うよりも男性と会う方がまだマシか?
とは言っても、【白石奏斗】の現在の恋人とされる【楠和馬】は一緒に例の喫茶店にやってくることが多い。彼だけに話を聞くのは難しいだろう。
──となると確実な方法は……。
喫茶店のマスターに伝言を託すこと。
安全な方法はそれしかないという結論に至った裕也は、早速喫茶店に向かうことにした。優紀が別ルートで調査を開始したことも知らずに。
例の喫茶店に着くとお目当ての人物はいなかった。むしろ好都合だと思った裕也は、カウンターに腰かけマスターと落ち着いて会話ができるタイミングを見計らっていた。
この喫茶店は夜になるとメニューが変わるため、15時には一旦閉店となる。それまでにコンタクトを取らねばならないと焦る裕也はチラチラマスターの方へ視線を向けていたのだが。
「随分と回りくどいことしてるのねえ」
「急がば回れってね」
マスターの方から『何か用があるのか?』と声をかけてくれたので事情を話すと、店を閉めている間に聞いてくれるという。渡りに船であった。
「伝言なんてしなくても、彼から直接話してもらえばいいのに」
「そうしたいのは山々だけど、理人は白石先輩を信用してないから」
苦笑いをしつつそう返答すれば、彼は『そうなの』と肩を竦める。
「わたしも噂については耳にしたことがあるけれど、彼はとても真面目で一途な人よ」
一途な人が三股をかけるのか? とツッコみたくなったが裕也は黙っていた。余計なことは言うものではない。
「まあ……何というか、優しすぎるのか責任感が強いのか分からないけれど、強く出られない部分があるからトラブルに巻き込まれやすいとは思うわ」
──三股かけていたことは……トラブル?
わけが分からないなと思いつつも、絹サヤの筋を取っていく。
「それと……いつも一緒にいる彼。あの感じは恋人関係ではないわね」
「え」
「勘に過ぎないわよ? 雰囲気も会話も恋人という感じはするけれど、何か引っかかるものがあるのよね。違和感……かしら」
彼らはこの喫茶店の常連。よくカウンターを利用するという。
自分たちもこの喫茶店にはよく顔を出す方だ。もちろん彼らに遭遇したのは一度や二度ではない。
「高等部の時におつき合いしていたのは本当の話?」
「それは事実みたいね」
『次はこれをお願い』と言われ、苺のへた取りをはじめる裕也。
──何を調べたら『何も起きない』ことの証明になるのだろう?
恋人がいるくらいでは信用しない理人のことだ。白石の心が優紀に動かないと証明する何かが必要だろう。
確か白石が現在交際している相手には、もう一人恋人がいるという話だった。
「マスター」
「何かしら?」
「白石先輩って……あまり嫉妬とかしたりしない人?」
「それはちょっと分からないわね。わたしの恋人ではないし」
彼の返事を聞いて”そりゃそうだ”と思った裕也。だが彼は顎に手を持っていくと少し思案したのち、『それよ!』とこちらに指先を向ける。
「どれ」
「違和感の正体よ」
裕也はますますわけが分からなくなったのだった。
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