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4:幸せの形を探して

4 想像に溺れる【微R】

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****side■裕也ひろや

 そう、いつだってそうだ。
 あの気高い男を俺は支配したいと望み、優紀は支配されたいと望んだ。
 扉の向こうからかすかに聞こえてくる声。
 裕也はその前に立ち尽くし、二人のことを考えていた。

 俺たちは元からこうだったわけじゃない。
 けれども、気づいた時にはきっと壊れてしまっていたのだろう。
 理人と優紀の情事は一時間程続いた。
 裕也はこの扉の向こうを覗きたい衝動にかられ、何度も自制する。理性との闘いだった。

──優紀が何を考えていたのか分からない。
 何に悩んでいたのかもわからない。

 自分は優紀に欲情することはないだろう。
 しかし理人に組み敷かれ、喘ぐ彼にとてつもなく興奮することはわかっている。

──理人は罪な奴だ。

 何度も己を穿ち、理人からその甘い蜜を搾り取ったはずなのに、彼はまた貪欲に優紀を求めるというのか?
 己もまたバカな生き物だと思った。
 あんなに理人を求め疲れ切っていたはずなのに、また欲しいと思ってしまう。

──俺たちの魔王は甘美な蜜のようだ。

 気が変になりそうなほど、二人の情事を想像し己自身に手を伸ばした。
「理人……」
 こんな風に性欲に溺れてしまうのは初めてのことだ。
 今までずっと自制してきたせいで、性欲すら壊れてしまったのだろうか。
 裕也に抱かれていた理人は後ろの蕾をひくつかせ、そのピンクの花が開花するのを待っていた。しかし今の彼は、優紀を開花させている。

──前からも後ろからも理人を責め立てたい。
 ああ……末期だな。

 裕也は自身の手の中に熱を放つと、深いため息をついたのだった。

 身体を清める為にバスルームへ向かい、己の汚れた心を一緒に湯に流す。
 少なくとも今までは、こんな風に狂ったほど性衝動にかられたことはなかった。それは優紀も理人も同じであろう。
「そういえば優紀が白石奏斗と一緒にいたと言っていたが」
 実のところ裕也はその”白石”のことは知っていた。

 この辺の学生はK学園に通っている者が多い。
 裕也の従兄もまたK学園の生徒だった。白石の二つ下であり、妹と同級生だったという。そんな経緯もあって噂によく聞いていたのだ。
 あまりいい噂を聞かない人が、悪い人ではない。
 どちらかというと、恨まれあることないこと噂にされるタイプの人物であった。
 優紀の従兄もまた、白石と関係ある人物と繋がっているので、話くらいは聞いたことがあるはずだと思っている。

 だが理人は知らない。
 そこが問題なのかも知れない。

──この先も近辺で顔を合わせることになるなら、いっそ一度会った方がいいのかもしれない。

 裕也は面倒なことにならないうちに、何とかしないといけないなと思っていた。
 キッチンに向かいながら、
「ただ、理人が会うというか……そこが問題だな」
と呟く。
 自然に会わせるにはどうしたらいいのか?
 そんなことを思いながら、裕也は冷蔵庫を覗き込んだ。
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