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4:幸せの形を探して
2 嫉妬と焦燥
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****side■理人
──優紀は今頃どうしているのだろうか?
部屋から出ていく裕也の背中をぼんやりと見送りながら、理人はそんなことを考えていた。
別れ際に突き放してしまったことを思い出す。
だがあれは彼が悪いのだ、自分の意思をはっきりせず裕也と二人きりになるように仕向けたのだから。裕也と身体を重ねたことは後悔はしていない。
だからと言って、自分を選んで欲しいと言った本人がすることではないのではないだろうか。
倦怠感に囚われながら、ベッド脇の丸テーブルに腕を伸ばす。間接照明の下には理人のスマホがあった。
ため息をつきながらスマホを引き寄せ、画面を覗き込む。優紀からの連絡はなかった。
「お前はホント、意味不明だよ」
忌々しいとでも言うように理人は恨み言を漏らすと通話のマークに触れる。優紀と裕也に関してはすぐに電話がかけられるように設定してあった。
──俺と裕也が何をしていても、気にならないとでもいうのか?
お前の好きって一体何なんだよ。
キスまでしておいて。
強引なのか、そうでないのか。積極的なのか消極的なのか測りかねる優紀に、理人は舌打ちをする。コンコンと指先で画面を叩き彼を呼びだすが。
「んだよ。さっさと出ろよ、優紀」
ちらりとヘッドボードの上に置かれたデジタル時計に視線をやれば、深夜近かった。もしかしたら寝ているのかもしれない。
──お前は平気で寝られるのかよ。
仕方なくコールを切ろうとしたところで、
『理人?』
と慌てた様子の優紀の声が通話口から聞こえた。
「悪い、起こしたか?」
悪いなどこれっぽちも思っていなかったが、一応そう言葉をかける。
しかし彼は、
『いや。ちょっと知り合いの家にいて』
と言う。
「は?」
理人が苛立つのも無理はない。好きな人を性交渉を行う可能性のある他の男と二人きりにしておいて、自分は知り合いの家にいるなど、正気とは思えなかった。
しかも相手は自分たちがよく顔を出す喫茶店の常連だという。
──白石奏斗……?
金に近い茶髪の背の高い顔の整った男性。確か、裕也の従兄が彼の妹の同級生だったはずだ。その妹は奏斗の一つか二つ下。というと、とうに社会人。そのくらいの情報しか知らなかったが、彼も確かK学園の卒業生である。
自分たちのよくいく店の常連で顔を合わせはするが、話したことはなかったはず。それが知り合いとはどういうことなのか?
──そもそもそいつの家で、何をしてるんだ。
「そこに泊まる気なのか?」
時計を見ながら理人は問う。
『うーん……そろそろ帰ろうと思ったんだけれど、白石さんに電話がかかってきて、席を外していて』
帰るに帰れないというのが彼の言い分らしい。
「分かった。それはいい。帰れるならうちに来い」
白石には確か同性の恋人がいたはずだ。女性と一緒にいるところもよく見かける。そんな男のところに置いておくのは非常に心配であった。
『今から?』
と驚く彼。
「そうだ、今からだ」
無茶を言っているのも、横暴なのも理解はしている。しかし彼が何かされているのではないかと理人は思ってしまうのだ。
恐らく彼は自家用車で出かけたはず。迎えに行くと言っても面倒なことになってしまうのは分かり切っていた。
『わかったよ。白石さんが戻ってきたら、そっち行くから』
「ああ」
半ば強引に約束を取り付け通話を切ると、飲み物の入ったグラスを二つ手に持った裕也が、部屋の入り口で壁に寄りかかり黙ってこちらを眺めていたことに気づく。
「優紀?」
「ああ、そうだよ。なんかよく知らない男と一緒にいるらしい」
深いため息をつきながら理人が上体を起こすと、ヤレヤレというように肩を竦めた裕也が近づいてくる。
「アイツは危なっかしいから心配だ」
と理人が言えば、
「そうだな」
と裕也はふっと笑ったのだった。
──優紀は今頃どうしているのだろうか?
部屋から出ていく裕也の背中をぼんやりと見送りながら、理人はそんなことを考えていた。
別れ際に突き放してしまったことを思い出す。
だがあれは彼が悪いのだ、自分の意思をはっきりせず裕也と二人きりになるように仕向けたのだから。裕也と身体を重ねたことは後悔はしていない。
だからと言って、自分を選んで欲しいと言った本人がすることではないのではないだろうか。
倦怠感に囚われながら、ベッド脇の丸テーブルに腕を伸ばす。間接照明の下には理人のスマホがあった。
ため息をつきながらスマホを引き寄せ、画面を覗き込む。優紀からの連絡はなかった。
「お前はホント、意味不明だよ」
忌々しいとでも言うように理人は恨み言を漏らすと通話のマークに触れる。優紀と裕也に関してはすぐに電話がかけられるように設定してあった。
──俺と裕也が何をしていても、気にならないとでもいうのか?
お前の好きって一体何なんだよ。
キスまでしておいて。
強引なのか、そうでないのか。積極的なのか消極的なのか測りかねる優紀に、理人は舌打ちをする。コンコンと指先で画面を叩き彼を呼びだすが。
「んだよ。さっさと出ろよ、優紀」
ちらりとヘッドボードの上に置かれたデジタル時計に視線をやれば、深夜近かった。もしかしたら寝ているのかもしれない。
──お前は平気で寝られるのかよ。
仕方なくコールを切ろうとしたところで、
『理人?』
と慌てた様子の優紀の声が通話口から聞こえた。
「悪い、起こしたか?」
悪いなどこれっぽちも思っていなかったが、一応そう言葉をかける。
しかし彼は、
『いや。ちょっと知り合いの家にいて』
と言う。
「は?」
理人が苛立つのも無理はない。好きな人を性交渉を行う可能性のある他の男と二人きりにしておいて、自分は知り合いの家にいるなど、正気とは思えなかった。
しかも相手は自分たちがよく顔を出す喫茶店の常連だという。
──白石奏斗……?
金に近い茶髪の背の高い顔の整った男性。確か、裕也の従兄が彼の妹の同級生だったはずだ。その妹は奏斗の一つか二つ下。というと、とうに社会人。そのくらいの情報しか知らなかったが、彼も確かK学園の卒業生である。
自分たちのよくいく店の常連で顔を合わせはするが、話したことはなかったはず。それが知り合いとはどういうことなのか?
──そもそもそいつの家で、何をしてるんだ。
「そこに泊まる気なのか?」
時計を見ながら理人は問う。
『うーん……そろそろ帰ろうと思ったんだけれど、白石さんに電話がかかってきて、席を外していて』
帰るに帰れないというのが彼の言い分らしい。
「分かった。それはいい。帰れるならうちに来い」
白石には確か同性の恋人がいたはずだ。女性と一緒にいるところもよく見かける。そんな男のところに置いておくのは非常に心配であった。
『今から?』
と驚く彼。
「そうだ、今からだ」
無茶を言っているのも、横暴なのも理解はしている。しかし彼が何かされているのではないかと理人は思ってしまうのだ。
恐らく彼は自家用車で出かけたはず。迎えに行くと言っても面倒なことになってしまうのは分かり切っていた。
『わかったよ。白石さんが戻ってきたら、そっち行くから』
「ああ」
半ば強引に約束を取り付け通話を切ると、飲み物の入ったグラスを二つ手に持った裕也が、部屋の入り口で壁に寄りかかり黙ってこちらを眺めていたことに気づく。
「優紀?」
「ああ、そうだよ。なんかよく知らない男と一緒にいるらしい」
深いため息をつきながら理人が上体を起こすと、ヤレヤレというように肩を竦めた裕也が近づいてくる。
「アイツは危なっかしいから心配だ」
と理人が言えば、
「そうだな」
と裕也はふっと笑ったのだった。
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