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3:満たされない心たち
5 快感に溺れながら【R】
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****side■理人
「挿れるよ?」
裕也が理人の最奥に蕾に自分自身を宛がい、こちらを不安げに伺っていた。
「ああ。大丈夫だ」
理人が返答をすると、ゆっくりと腰を進めていく。理人は身体から力を抜き、なるべく負担を減らすように努める。
彼の首に両腕を回し、理人は目を閉じた。擦れる様な感覚はない。ただ何か熱いものが、身体を開いていくような感覚があった。
「痛い? 全部入ったよ」
「いや」
裕也の問いかけに理人は首を横に振る。実際、痛くはなかった。それは、彼が慣らしてくれたお陰でもあるのだろうが。
「気持ちいい?」
「それは分からないけれど」
奥に違和感はある。しかし、それを押しやりたいような押しつぶしたいような不思議な感じがした。身体の中に、熱いものが存在する。
「すぐに良くなるよ」
彼は何かを見たり調べたりしたのだろうか? そんなことを言う。まさか経験があるわけじゃないよな、と訝しく思いながらも彼の肩に顔を埋めようとしたら、顎を掴まれた。
「んんッ……」
優しく啄むような口づけ。続いてゆっくりと彼が腰を引いた。
「あッ……」
その快感は突如やってくる。
「やっぱり、引くとき気持ちいいんだね」
と優しい笑み。
理人は思わずその笑顔に見惚れてしまっていた。
──やっぱり、裕也のことが好きだ。
じゃあ、優紀のことは?
人とは不思議なものだ。誰が教えたわけでもないのに、その時好きになるのは一人だと。一人なのが普通なのだと思い込んでしまう。
食べ物や音楽だって好みだと感じるものはたくさん存在する。たった一種類が好きということは稀なのに。動物に対してだって、いろんな種類の生き物を好きだと公言できるのに。
人間に対する愛情は、一つでなければならない暗黙のルールがある。それが、恋であるならなおさらだ。
──自分はそのルールを犯そうとしている。
婚姻関係ではないから、誰に咎められることもないだろう。
これは自分たちが納得していればいいこと。
決定したことを変えるつもりはないが、自分の気持ちに自信がなくなってしまう。一人しか愛してはいけないというのと、一人しか愛していないはイコールではないのに。
「んんッ……はあッ」
考えが纏まらないのはきっと、こんな風に抱き合っているからだろう。彼が動くたびに快感が身体を駆け抜けていく。
「理人」
名を呼ばれ、裕也に視線を向ければ唇を塞がれる。まるで考え事をしていたことが知られていたように。彼は理人の舌を追い、深く口づける。
”集中しろ”と言われているように錯覚した矢先、彼の手の平が理人自身を握りこむ。
「ああッ……」
「好きなだけ達けばいいから。感じて。今は、俺だけを」
いつだって優しく、理人や優紀を見守って来た裕也。彼が嫉妬することを知った。意外と感情的になることも知った。
そして彼と優紀が何か隠していることも。きっと問い詰めても裕也は何も言いはしないだろう。最小限の会話しかしないのが、自分と裕也の関係。
優紀のようにコミュニケーションが得意ではないのだ。
「んッ……」
理人自身を握りこんだ彼の手がリズミカルに上下し、理人は何も考えられなくなった。
──裕也は、俺のことどれくらい好きなんだろう?
快感の波の中に溺れながら、ぼんやりと理人はそんなことを思ったのだった。
「挿れるよ?」
裕也が理人の最奥に蕾に自分自身を宛がい、こちらを不安げに伺っていた。
「ああ。大丈夫だ」
理人が返答をすると、ゆっくりと腰を進めていく。理人は身体から力を抜き、なるべく負担を減らすように努める。
彼の首に両腕を回し、理人は目を閉じた。擦れる様な感覚はない。ただ何か熱いものが、身体を開いていくような感覚があった。
「痛い? 全部入ったよ」
「いや」
裕也の問いかけに理人は首を横に振る。実際、痛くはなかった。それは、彼が慣らしてくれたお陰でもあるのだろうが。
「気持ちいい?」
「それは分からないけれど」
奥に違和感はある。しかし、それを押しやりたいような押しつぶしたいような不思議な感じがした。身体の中に、熱いものが存在する。
「すぐに良くなるよ」
彼は何かを見たり調べたりしたのだろうか? そんなことを言う。まさか経験があるわけじゃないよな、と訝しく思いながらも彼の肩に顔を埋めようとしたら、顎を掴まれた。
「んんッ……」
優しく啄むような口づけ。続いてゆっくりと彼が腰を引いた。
「あッ……」
その快感は突如やってくる。
「やっぱり、引くとき気持ちいいんだね」
と優しい笑み。
理人は思わずその笑顔に見惚れてしまっていた。
──やっぱり、裕也のことが好きだ。
じゃあ、優紀のことは?
人とは不思議なものだ。誰が教えたわけでもないのに、その時好きになるのは一人だと。一人なのが普通なのだと思い込んでしまう。
食べ物や音楽だって好みだと感じるものはたくさん存在する。たった一種類が好きということは稀なのに。動物に対してだって、いろんな種類の生き物を好きだと公言できるのに。
人間に対する愛情は、一つでなければならない暗黙のルールがある。それが、恋であるならなおさらだ。
──自分はそのルールを犯そうとしている。
婚姻関係ではないから、誰に咎められることもないだろう。
これは自分たちが納得していればいいこと。
決定したことを変えるつもりはないが、自分の気持ちに自信がなくなってしまう。一人しか愛してはいけないというのと、一人しか愛していないはイコールではないのに。
「んんッ……はあッ」
考えが纏まらないのはきっと、こんな風に抱き合っているからだろう。彼が動くたびに快感が身体を駆け抜けていく。
「理人」
名を呼ばれ、裕也に視線を向ければ唇を塞がれる。まるで考え事をしていたことが知られていたように。彼は理人の舌を追い、深く口づける。
”集中しろ”と言われているように錯覚した矢先、彼の手の平が理人自身を握りこむ。
「ああッ……」
「好きなだけ達けばいいから。感じて。今は、俺だけを」
いつだって優しく、理人や優紀を見守って来た裕也。彼が嫉妬することを知った。意外と感情的になることも知った。
そして彼と優紀が何か隠していることも。きっと問い詰めても裕也は何も言いはしないだろう。最小限の会話しかしないのが、自分と裕也の関係。
優紀のようにコミュニケーションが得意ではないのだ。
「んッ……」
理人自身を握りこんだ彼の手がリズミカルに上下し、理人は何も考えられなくなった。
──裕也は、俺のことどれくらい好きなんだろう?
快感の波の中に溺れながら、ぼんやりと理人はそんなことを思ったのだった。
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