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3:満たされない心たち
2 強気の理人【微R】
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****side■理人
肌を滑る手のひら。
押し付けられた唇。
伝わる体温。
裕也の全てが理人の欲情を煽る。
裕也に”優紀が好き”だと告げられたあの日から諦めていたものが、ここにあった。きっと心のどこかで、彼の気持ちは自分にあるものだと思っていたのだろう。嫉妬することができたならもっと、感情を露にできたかもしれない。
しかし優紀は自分にとっても、大切な存在。大切な幼馴染だったから、諦める選択をした。いずれ自分の居場所を失ったとしても、二人が幸せならそれでいいと思っていたのだ。
──俺は浅ましい。
裕也の気持ちが嘘だったことを喜ぶどころか、裕也も優紀も俺のものなのだと思ってしまった。
どちらかを選ぶことなく、どちらも手に入れたいと思い始めている。
許されるだろうか?
いや、許されなくても構わない。
俺は、この手を放すつもりがないのだから。
優紀から自分に向けられた、氷のように冷たい瞳を思い出す。何故そんな視線を自分に向けたのか、わからないままだ。もしかしたら、こんな浅ましい自分を見抜かれていたのかもしれない。
──それならそれでいい。
お前たちは、俺に縋りついて愛を貪っていればいい。
決して逃しはしない。
こんな胸の内を知られたら、軽蔑されるだろうか?
そんなことを思い、自嘲気味に笑う理人。
「んッ……そんなとこ……」
優しく肌を撫でていた裕也の手はいつの間にか、理人自身を握りこんでいた。彼の舌が鈴口を這い、理人は顔を赤らめる。
「いつだって思い出せるように、俺を刻み込んでやるよ」
感情を押し殺したような裕也の声音。理人はそんな彼に、慈愛に満ちた眼差しを向けた。
そして、
「裕也は……これっきりにするつもりでいるのか?」
と、問うでもなく言葉を紡ぐ。
裕也がハッとして顔をあげる。理人の潤んだ瞳と視線がかち合い、ゆっくりと瞬きをした。
「俺はこれきりにするつもりは、毛頭ない。欲しければ求めるし、求められたら与えるつもりでいるんだが?」
尊大な自分と、図体の割には繊細な裕也。彼は自分のどこが好きだというのだろうか? 理人は不思議に思った。
案の定、彼は眉を寄せ困った顔をしてこちらを見ている。
「それは、セフレとか都合のいい男とか……そう言った類の?」
──そう来たか。
なんで、身体だけの関係と受け取るんだ?
「性欲の捌け口なら要らない。自慰で充分だ」
理人は裕也の腕を掴むと、ぐいっと自分に引き寄せた。
「そうではなく。お前が欲しいと言ったんだ」
瞳を揺らす彼の頬を両手で包み込むと、その唇に口づける。啄むように。彼の両腕が理人の背中に回り、深く口づけた。
──溺れてしまえよ。
愛に飢えた獣のように。
「理人。俺は……理人の考えていることがわからない」
唇を離すと、じっと理人の瞳を覗き込む裕也。
「俺は、裕也も優紀もどっちも欲しい」
「え?」
「第三の選択を提示する」
「つまり、二股宣言?」
切なげにこちらを見つめている裕也に、理人は軽く口づけをすると、
「いや。三人で付き合う」
と告げる。
「は?」
予想通りの返答に、思わず笑ってしまう理人。
──そりゃそうだ。
俺が言っていることは、意味不明だと言われても仕方ない。
それでも俺は自分を押し通す。
誰にも文句は言わせない。
「えっと。その提案を受け入れたとして、その……」
言い淀む裕也。
「なんだ? 言ってみろ」
「例えば、俺と優紀がヤッちゃっても理人は構わない……怒らないと?」
三人で付き合うとはそういうことだよな? と言うように問う裕也。
だが、理人は動じなかった。
「やれるもんならやってみろよ」
眉一つ動かさずに、そういい放ったのだった。
肌を滑る手のひら。
押し付けられた唇。
伝わる体温。
裕也の全てが理人の欲情を煽る。
裕也に”優紀が好き”だと告げられたあの日から諦めていたものが、ここにあった。きっと心のどこかで、彼の気持ちは自分にあるものだと思っていたのだろう。嫉妬することができたならもっと、感情を露にできたかもしれない。
しかし優紀は自分にとっても、大切な存在。大切な幼馴染だったから、諦める選択をした。いずれ自分の居場所を失ったとしても、二人が幸せならそれでいいと思っていたのだ。
──俺は浅ましい。
裕也の気持ちが嘘だったことを喜ぶどころか、裕也も優紀も俺のものなのだと思ってしまった。
どちらかを選ぶことなく、どちらも手に入れたいと思い始めている。
許されるだろうか?
いや、許されなくても構わない。
俺は、この手を放すつもりがないのだから。
優紀から自分に向けられた、氷のように冷たい瞳を思い出す。何故そんな視線を自分に向けたのか、わからないままだ。もしかしたら、こんな浅ましい自分を見抜かれていたのかもしれない。
──それならそれでいい。
お前たちは、俺に縋りついて愛を貪っていればいい。
決して逃しはしない。
こんな胸の内を知られたら、軽蔑されるだろうか?
そんなことを思い、自嘲気味に笑う理人。
「んッ……そんなとこ……」
優しく肌を撫でていた裕也の手はいつの間にか、理人自身を握りこんでいた。彼の舌が鈴口を這い、理人は顔を赤らめる。
「いつだって思い出せるように、俺を刻み込んでやるよ」
感情を押し殺したような裕也の声音。理人はそんな彼に、慈愛に満ちた眼差しを向けた。
そして、
「裕也は……これっきりにするつもりでいるのか?」
と、問うでもなく言葉を紡ぐ。
裕也がハッとして顔をあげる。理人の潤んだ瞳と視線がかち合い、ゆっくりと瞬きをした。
「俺はこれきりにするつもりは、毛頭ない。欲しければ求めるし、求められたら与えるつもりでいるんだが?」
尊大な自分と、図体の割には繊細な裕也。彼は自分のどこが好きだというのだろうか? 理人は不思議に思った。
案の定、彼は眉を寄せ困った顔をしてこちらを見ている。
「それは、セフレとか都合のいい男とか……そう言った類の?」
──そう来たか。
なんで、身体だけの関係と受け取るんだ?
「性欲の捌け口なら要らない。自慰で充分だ」
理人は裕也の腕を掴むと、ぐいっと自分に引き寄せた。
「そうではなく。お前が欲しいと言ったんだ」
瞳を揺らす彼の頬を両手で包み込むと、その唇に口づける。啄むように。彼の両腕が理人の背中に回り、深く口づけた。
──溺れてしまえよ。
愛に飢えた獣のように。
「理人。俺は……理人の考えていることがわからない」
唇を離すと、じっと理人の瞳を覗き込む裕也。
「俺は、裕也も優紀もどっちも欲しい」
「え?」
「第三の選択を提示する」
「つまり、二股宣言?」
切なげにこちらを見つめている裕也に、理人は軽く口づけをすると、
「いや。三人で付き合う」
と告げる。
「は?」
予想通りの返答に、思わず笑ってしまう理人。
──そりゃそうだ。
俺が言っていることは、意味不明だと言われても仕方ない。
それでも俺は自分を押し通す。
誰にも文句は言わせない。
「えっと。その提案を受け入れたとして、その……」
言い淀む裕也。
「なんだ? 言ってみろ」
「例えば、俺と優紀がヤッちゃっても理人は構わない……怒らないと?」
三人で付き合うとはそういうことだよな? と言うように問う裕也。
だが、理人は動じなかった。
「やれるもんならやってみろよ」
眉一つ動かさずに、そういい放ったのだった。
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