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2:交わらない想い
6 理人はヒーロー
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****side■優紀
優紀はベッドに背中を預け、ため息をつく。テーブルの上に置かれたタブレットに自分の顔が映りこんでいることに気づき、ふと昔のことを思い出した。
中学に上がり、身長が伸びるまで優紀は自分の顔が嫌いだった。
今では美形などと言われたりもするが、小学生の時は女みたいだと、よく揶揄われたものだ。
『お前、ホントに男なのかよ。ついてんのか見せてみろよ』
子供とはバカな生き物だなと思う。何を言ったら他人を傷つけるのか分からずに、平気で他人を傷つける。
『嫌だ。放して!』
特に男の子は限度を知らない。何をしたらいけないのか分かっていないことが多い。大人も子供も関係ない。犯罪は犯罪でしかない。子供だから許されるというのは間違っている。
『痛っ』
『やめろ! クソが』
顔のせいで苛められる優紀にとって、理人はヒーローだった。
『優紀、大丈夫?』
理人と裕也がいたから大事に至らずにいられた。
『痛い』
思いっきりケリを入れる理人。彼は手加減と言うものを知らなかった。
『理人、やり過ぎだ』
それを止めるのは裕也。三人の中で一番、落ち着いていた。
『死ねばいいよ、こんなやつ』
『理人』
『理不尽だと思わないのか?』
咎める裕也に怒りを露にする理人。
『こんなゴミみたいなやつに、なんで優紀が苛められなきゃならないんだよ』
裕也に抱き着いていた優紀の顔に理人の指先が触れる。
『俺は好きだよ、優紀の顔』
理人の言葉に優紀は目を見開いた。
──理人はずっと。俺にとってヒーローだったんだ。
いつだって助けに来てくれた。
そんな関係に変化が起きたのは、中学に上がってから。
初等部時代に自分を苛めていた奴は、中等部に上がると優紀に告白してきた。好きで構って欲しくて苛めていたんだと。
つきあって欲しいと言われ返事をしようとすると、
『優紀がお前と付き合うわけないだろ』
いつからそこにいたのか、理人が乱入し、
『おい、口は出すなと言っただろう』
と更に裕也が乱入してきた。
──俺は変わらない関係を望んでいた。
こういうの、子供っぽいのかな……。
モテたって嬉しくない。自分に好意を寄せる相手が見ているのは容姿。スペックだけ。彼あるいは彼女たちにとって自分は、アクセサリーでしかないのだろうか?
──理人の傍に居たい。
可愛いままなら、理人はずっと俺の傍に居てくれたのだろうか……?
優紀は自分の手足を眺める。いつの間にか理人の身長を追い越した、自分の身体が憎い。
理人の気持ちに気づかなければ、わがままな自分でいられただろうか?
──いや。
理人は、頼りになる裕也を選んだ。
その時点で、恋愛対象になるはずがないんだ。
庇護すべき存在だったから、理人はいつだって傍に居てくれた。庇護する必要がなくなったから、気に掛ける必要がなくなったということなのだろう。
高校に入ってからは明らかに、三人の関係は変わった。
それでも仲の良い幼馴染三人組には変わりなかったが。
「理人の気持ちを確信したのも、高校の時だったよなあ」
優紀は一人、呟いて肩を竦める。
「しかし、裕也は何故気づかないんだろう……?」
とんでもなく鈍感な奴だなと思いながら、優紀は目を閉じたのだった。
優紀はベッドに背中を預け、ため息をつく。テーブルの上に置かれたタブレットに自分の顔が映りこんでいることに気づき、ふと昔のことを思い出した。
中学に上がり、身長が伸びるまで優紀は自分の顔が嫌いだった。
今では美形などと言われたりもするが、小学生の時は女みたいだと、よく揶揄われたものだ。
『お前、ホントに男なのかよ。ついてんのか見せてみろよ』
子供とはバカな生き物だなと思う。何を言ったら他人を傷つけるのか分からずに、平気で他人を傷つける。
『嫌だ。放して!』
特に男の子は限度を知らない。何をしたらいけないのか分かっていないことが多い。大人も子供も関係ない。犯罪は犯罪でしかない。子供だから許されるというのは間違っている。
『痛っ』
『やめろ! クソが』
顔のせいで苛められる優紀にとって、理人はヒーローだった。
『優紀、大丈夫?』
理人と裕也がいたから大事に至らずにいられた。
『痛い』
思いっきりケリを入れる理人。彼は手加減と言うものを知らなかった。
『理人、やり過ぎだ』
それを止めるのは裕也。三人の中で一番、落ち着いていた。
『死ねばいいよ、こんなやつ』
『理人』
『理不尽だと思わないのか?』
咎める裕也に怒りを露にする理人。
『こんなゴミみたいなやつに、なんで優紀が苛められなきゃならないんだよ』
裕也に抱き着いていた優紀の顔に理人の指先が触れる。
『俺は好きだよ、優紀の顔』
理人の言葉に優紀は目を見開いた。
──理人はずっと。俺にとってヒーローだったんだ。
いつだって助けに来てくれた。
そんな関係に変化が起きたのは、中学に上がってから。
初等部時代に自分を苛めていた奴は、中等部に上がると優紀に告白してきた。好きで構って欲しくて苛めていたんだと。
つきあって欲しいと言われ返事をしようとすると、
『優紀がお前と付き合うわけないだろ』
いつからそこにいたのか、理人が乱入し、
『おい、口は出すなと言っただろう』
と更に裕也が乱入してきた。
──俺は変わらない関係を望んでいた。
こういうの、子供っぽいのかな……。
モテたって嬉しくない。自分に好意を寄せる相手が見ているのは容姿。スペックだけ。彼あるいは彼女たちにとって自分は、アクセサリーでしかないのだろうか?
──理人の傍に居たい。
可愛いままなら、理人はずっと俺の傍に居てくれたのだろうか……?
優紀は自分の手足を眺める。いつの間にか理人の身長を追い越した、自分の身体が憎い。
理人の気持ちに気づかなければ、わがままな自分でいられただろうか?
──いや。
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その時点で、恋愛対象になるはずがないんだ。
庇護すべき存在だったから、理人はいつだって傍に居てくれた。庇護する必要がなくなったから、気に掛ける必要がなくなったということなのだろう。
高校に入ってからは明らかに、三人の関係は変わった。
それでも仲の良い幼馴染三人組には変わりなかったが。
「理人の気持ちを確信したのも、高校の時だったよなあ」
優紀は一人、呟いて肩を竦める。
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