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2:交わらない想い
4 裕也の勘違い
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****side■裕也
「裕也、あのな」
一向に説明をせず黙って床を見つめていると、裕也にしびれを切らした理人が声を発した。
「百歩譲って、説明されないことに関しては許すとしても……返事が要らないとはどういうことだ?」
「要らないと言っていない。今はいいと言っただけだ」
「ふざけてんのか?」
つかつかと目の前に歩いて来た理人に、裕也は胸倉を掴まれた。身長差があるため、そんなに凄みは感じない。だが、彼が怒っていることはひしひしと伝わってくる。
怒らせたいわけではない。なのに、こんなやり方しかできない自分が嫌になる。
──今、答えをもらったところで、ONなのは分かっている。
理人は、優紀のことが気になって仕方ないはずだから。
好きなのだろうか? 理人は、あいつが。
「俺は理人が好きだ。YES以外の返事は欲しくない。それが理由だ」
裕也の言葉に理人の手が緩む。裕也はそんな彼の腰を引き寄せた。
「!」
「今、気持ちを問うても無駄だろう?」
「なにすん……」
押しのけようとする彼の手を抑え込むと、強引に口づける裕也。
──優紀はこうなることも考慮して、ここに俺を降ろしたはずだ。
理人を傷つける覚悟をして、俺はここにいる。
「裕也……」
裕也は自分の腕の中で赤く色づく理人を見つめていた。
「今は、お前の気持ちは無視する。嫌なら拒めばいい」
「何をするつもりなんだ?」
「お前の初めてを奪う」
「……はあ?!」
素っ頓狂な声を上げる理人を、肩に担ぎ上げる裕也。
──このまま手をこまねいていれば、いずれ優紀に奪われてしまうだろう。そうなってからでは遅い。だから今、理人に自分を刻む。
優紀は止めなかった。
余裕をかましているつもりなのだろうか?
俺はこんなにも、余裕がないというのに。
「なあ、待って」
裕也は慌てる彼を肩に担いだまま、寝室へ運んでいく。
「待たない」
冷たく言い放つ裕也に、
「シャワーしたい。逃げないし、受け入れるから、だからその前に……」
と想定外の返答。
「ん?」
異変に気付き、彼を肩から降ろす裕也。自分が何か勘違いしていることに気づく。降ろした彼に目を向ければ、目を泳がし、困った顔をして立っている。
──こんな顔もするんだ。
クソ可愛いな。
「裕也?」
上目遣いでこちらを見上げる理人の腕を、裕也は無意識に掴む。
「却下か?」
「いや……一緒に入ろう」
「は?!」
真っ赤になっていた彼が、一瞬固まる。
しかし、
「風邪、引くと思うんだが」
と、我に返った彼は至極真っ当な意見を述べる。
「そうだな」
「じゃあ。湯を張るから、手を放せよ」
「ああ」
その辺に座っていてと言い残し、理人は離れていく。
──何故だろう?
何故、拒まない?
何か初めから認識が間違っていたのだろうか?
裕也は湯船に浸かりながらぼんやりと、肌に泡を滑らす理人を眺めていた。
「理人」
「なんだ?」
こちらに視線だけを向け、返事をする理人。
「誰にでもこうなのか?」
と裕也。
裕也は、あまりにもあっさりと受け入れる彼に、不安を感じ始めていた。自信のなさがそれを後押ししている。
「質問の意図が不明だ」
「優紀に求められても、同じように応えるのか?」
自分だけは特別だなんて、裕也には思えない。
「あのな……お前なにか勘違いしてないか?」
ため息をつく、理人。
「勘違い?」
訝し気に問い返す裕也に理人が発した言葉は、
「アイツはネコだろ?」
「は?」
想像の斜め上をいっていたのである。
──ええええええええ?!
「裕也、あのな」
一向に説明をせず黙って床を見つめていると、裕也にしびれを切らした理人が声を発した。
「百歩譲って、説明されないことに関しては許すとしても……返事が要らないとはどういうことだ?」
「要らないと言っていない。今はいいと言っただけだ」
「ふざけてんのか?」
つかつかと目の前に歩いて来た理人に、裕也は胸倉を掴まれた。身長差があるため、そんなに凄みは感じない。だが、彼が怒っていることはひしひしと伝わってくる。
怒らせたいわけではない。なのに、こんなやり方しかできない自分が嫌になる。
──今、答えをもらったところで、ONなのは分かっている。
理人は、優紀のことが気になって仕方ないはずだから。
好きなのだろうか? 理人は、あいつが。
「俺は理人が好きだ。YES以外の返事は欲しくない。それが理由だ」
裕也の言葉に理人の手が緩む。裕也はそんな彼の腰を引き寄せた。
「!」
「今、気持ちを問うても無駄だろう?」
「なにすん……」
押しのけようとする彼の手を抑え込むと、強引に口づける裕也。
──優紀はこうなることも考慮して、ここに俺を降ろしたはずだ。
理人を傷つける覚悟をして、俺はここにいる。
「裕也……」
裕也は自分の腕の中で赤く色づく理人を見つめていた。
「今は、お前の気持ちは無視する。嫌なら拒めばいい」
「何をするつもりなんだ?」
「お前の初めてを奪う」
「……はあ?!」
素っ頓狂な声を上げる理人を、肩に担ぎ上げる裕也。
──このまま手をこまねいていれば、いずれ優紀に奪われてしまうだろう。そうなってからでは遅い。だから今、理人に自分を刻む。
優紀は止めなかった。
余裕をかましているつもりなのだろうか?
俺はこんなにも、余裕がないというのに。
「なあ、待って」
裕也は慌てる彼を肩に担いだまま、寝室へ運んでいく。
「待たない」
冷たく言い放つ裕也に、
「シャワーしたい。逃げないし、受け入れるから、だからその前に……」
と想定外の返答。
「ん?」
異変に気付き、彼を肩から降ろす裕也。自分が何か勘違いしていることに気づく。降ろした彼に目を向ければ、目を泳がし、困った顔をして立っている。
──こんな顔もするんだ。
クソ可愛いな。
「裕也?」
上目遣いでこちらを見上げる理人の腕を、裕也は無意識に掴む。
「却下か?」
「いや……一緒に入ろう」
「は?!」
真っ赤になっていた彼が、一瞬固まる。
しかし、
「風邪、引くと思うんだが」
と、我に返った彼は至極真っ当な意見を述べる。
「そうだな」
「じゃあ。湯を張るから、手を放せよ」
「ああ」
その辺に座っていてと言い残し、理人は離れていく。
──何故だろう?
何故、拒まない?
何か初めから認識が間違っていたのだろうか?
裕也は湯船に浸かりながらぼんやりと、肌に泡を滑らす理人を眺めていた。
「理人」
「なんだ?」
こちらに視線だけを向け、返事をする理人。
「誰にでもこうなのか?」
と裕也。
裕也は、あまりにもあっさりと受け入れる彼に、不安を感じ始めていた。自信のなさがそれを後押ししている。
「質問の意図が不明だ」
「優紀に求められても、同じように応えるのか?」
自分だけは特別だなんて、裕也には思えない。
「あのな……お前なにか勘違いしてないか?」
ため息をつく、理人。
「勘違い?」
訝し気に問い返す裕也に理人が発した言葉は、
「アイツはネコだろ?」
「は?」
想像の斜め上をいっていたのである。
──ええええええええ?!
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