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1:真実を知らない理人
4 幼馴染みのカミングアウト
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****side■裕也
「まったく……」
裕也はスマホの画面を見つめ、ため息をついた。それと言うのも、”理人へはお前の方から連絡しろ”と優紀に言われてしまった為である。
「バイト終わったら……っと……俺たちと飯行かないか? これでいいか?」
ぶつぶつ言いながら理人宛てのメッセージを打ち込んでいく。バッグを掴み、玄関に向かったところで返信があった。
返事は”分かった”と一言だけ。彼からの返事はいつだって簡素。だから返事があるだけで充分なのだ。裕也は小さく微笑むと家を出る。
「下に迎えに来てるって言ってたな」
優紀の言っていたことを思いだし、エレベーターのボタンを押した。
『理人、いくら何でもこれは簡素過ぎないか?』
エレベーターの箱に乗り込んだ裕也は以前、理人に言ったことを思い出す。
『努力はするよ』
と、彼は困った顔をしてそういったものだ。
──あの頃は”了解”だけだったし。
任務の返答かよと不満を漏らすと、すごく困った顔してたな。
理人は自分たちと違い、小柄で身長もあまり伸びなかった。その事を気にして、段々と無口になっていったのだ。人には誰にだって、コンプレックスの一つや二つあるもの。
一見目につき辛いものであるならともかく、容姿にコンプレックスを持ってしまうと克服するのは難しい。
『別にモテたいとかじゃないけれど。お前らとつり合いが取れないような気がして……』
塞ぐ彼が心配になり問いかけると、そんな言葉が返って来た。それが一緒にスポーツジムに通うようになった、きっかけの一つだ。
背なんて伸びなくても、身体を鍛えれば少しは自信が持てるのではないかと思ったから。しかし引き締まった彼の姿態は、裕也と優紀を煽るには十分だった。
「よう」
マンションのエントランスを出て外に出ると、車に寄りかかりスマホに目を落としていた優紀が片手をあげた。
「相変わらず、ホストかモデルみたいだな」
と裕也は肩を竦める。
決してチャラいというわけではない。中性的な彼はクール&ビューティーという言葉が良く似合う。K学園の大学部では、高嶺の花と言われているようだが、話すととても気さく。それもモテる理由の一つなのだろう。
「そりゃ、どうも」
褒めたつもりなのに、彼はあまり嬉しそうには見えなかった。
「どんなにナリが良くても、理人の好みはお前のような硬派タイプのようだからねえ」
「は?」
優紀の言っている意味が分からず、聞き返すが、
「なんでもねえっすよ」
と言って、彼は運転席に乗り込む。
──なんだ?
俺は何か気に障ること言ってしまったのか?
後部座席に荷物を詰め込み、助手席に乗り込むと、
「そういえば、理人には連絡してくれた?」
と、優紀に問われる。
先ほどの話しには、”もう触れるな”と言うことなのだろう。
「ああ、連絡したよ」
「そっか、さんきゅ」
そしてしばしの沈黙。彼はハンドルにかぶさるようにして、じっと正面を見つめている。”内容も話した方が良かったのだろうか?”と思っていると、
「俺、理人にキスしたよ」
と突然のカミングアウト。
「はあ?!」
思わず音のしそうな勢いで優紀の方を見る、裕也。彼はなにか抗議をしようとした裕也を無視し、アクセルを踏み込んだのだった。
「まったく……」
裕也はスマホの画面を見つめ、ため息をついた。それと言うのも、”理人へはお前の方から連絡しろ”と優紀に言われてしまった為である。
「バイト終わったら……っと……俺たちと飯行かないか? これでいいか?」
ぶつぶつ言いながら理人宛てのメッセージを打ち込んでいく。バッグを掴み、玄関に向かったところで返信があった。
返事は”分かった”と一言だけ。彼からの返事はいつだって簡素。だから返事があるだけで充分なのだ。裕也は小さく微笑むと家を出る。
「下に迎えに来てるって言ってたな」
優紀の言っていたことを思いだし、エレベーターのボタンを押した。
『理人、いくら何でもこれは簡素過ぎないか?』
エレベーターの箱に乗り込んだ裕也は以前、理人に言ったことを思い出す。
『努力はするよ』
と、彼は困った顔をしてそういったものだ。
──あの頃は”了解”だけだったし。
任務の返答かよと不満を漏らすと、すごく困った顔してたな。
理人は自分たちと違い、小柄で身長もあまり伸びなかった。その事を気にして、段々と無口になっていったのだ。人には誰にだって、コンプレックスの一つや二つあるもの。
一見目につき辛いものであるならともかく、容姿にコンプレックスを持ってしまうと克服するのは難しい。
『別にモテたいとかじゃないけれど。お前らとつり合いが取れないような気がして……』
塞ぐ彼が心配になり問いかけると、そんな言葉が返って来た。それが一緒にスポーツジムに通うようになった、きっかけの一つだ。
背なんて伸びなくても、身体を鍛えれば少しは自信が持てるのではないかと思ったから。しかし引き締まった彼の姿態は、裕也と優紀を煽るには十分だった。
「よう」
マンションのエントランスを出て外に出ると、車に寄りかかりスマホに目を落としていた優紀が片手をあげた。
「相変わらず、ホストかモデルみたいだな」
と裕也は肩を竦める。
決してチャラいというわけではない。中性的な彼はクール&ビューティーという言葉が良く似合う。K学園の大学部では、高嶺の花と言われているようだが、話すととても気さく。それもモテる理由の一つなのだろう。
「そりゃ、どうも」
褒めたつもりなのに、彼はあまり嬉しそうには見えなかった。
「どんなにナリが良くても、理人の好みはお前のような硬派タイプのようだからねえ」
「は?」
優紀の言っている意味が分からず、聞き返すが、
「なんでもねえっすよ」
と言って、彼は運転席に乗り込む。
──なんだ?
俺は何か気に障ること言ってしまったのか?
後部座席に荷物を詰め込み、助手席に乗り込むと、
「そういえば、理人には連絡してくれた?」
と、優紀に問われる。
先ほどの話しには、”もう触れるな”と言うことなのだろう。
「ああ、連絡したよ」
「そっか、さんきゅ」
そしてしばしの沈黙。彼はハンドルにかぶさるようにして、じっと正面を見つめている。”内容も話した方が良かったのだろうか?”と思っていると、
「俺、理人にキスしたよ」
と突然のカミングアウト。
「はあ?!」
思わず音のしそうな勢いで優紀の方を見る、裕也。彼はなにか抗議をしようとした裕也を無視し、アクセルを踏み込んだのだった。
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