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1:真実を知らない理人
1 彼らの意図、絡まって
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俺たちは幼馴染で、幼稚園の頃からずっと一緒にいた。
『呑みサーで良いんじゃない?』
ガタイが良くて、体育会系に見られやすい鶴城裕也。普段は穏やかで、物腰も柔らかく一人あたりも良いが、頑固な一面も持ち合わせた幼馴染みの一人。
『裕也がそういうなら、いいんじゃね?』
明るく中性的で、すらりとした体形に整った顔をした姫川優紀。酒なんて一滴も呑めないくせに、裕也の意見に適当に合わせる。
『な、理人』
門倉理人は優紀に返答を求められ、
『俺は別になんでもいい』
とため息をつきながら頷く。
二人に比べ小柄で華奢に見える理人は、二人を見上げ”おめーらがデカすぎなんだ”と心の中で悪態をついた。
K学園。幼稚園から大学院まであるマンモス校。自分たちの親の代にはいろいろと問題も起きたようだが、今は至って平和らしい。
理人たちはサークルの勧誘を面倒に思い、早々に入るところを決めることにしたのである。
エスカレーター式なだけあって、中学時代に恋人が出来なかった組は高校でも変化はないが、大学ともなると外部の人間が増える。もちろん新しい出会いがあるはずだ。
──今年こそ、二人には恋人ができるかもしれな……。
いや、それはないか。
二人とも中高と男女関係なくモテていたのを思い出し、理人は裕也の方に視線を向ける。
『裕也はなんで恋人作らねーの?』
高等部時代に理人は、彼にそう質問したことがあった。
『俺、優紀のことが好きなんだ』
中庭で他のクラスの女子から告白を受けていた優紀を眺めながら、彼はそういう。
『内緒な』
と笑って。
『ああ』
裕也の言葉に理人の胸がチリっと痛む。自分から聞いておいてバカだなと思いながら。
──勝ち目なんて初めから無いんだ。
それでももし、優紀に恋人が出来たなら……。
自分に一パーセントでも勝機はあるだろか?
そんなことを思いながら、
『優紀は好きな人とかいないのか?』
理人は彼に問いかけたのだ。
『は?』
中庭で後輩から告白を受けている裕也を眺めていた優紀は、心底驚いた顔をしてこちらに目を向けた。
『いや……だって、あんなしょっちゅうコクられてんのに、誰とも付き合わないから好きな奴でもいんのかと』
と理人が付け加えると、なんだかガッカリした顔ををして、
『そういうことな』
と小さく笑う。
『理人はいんの? 好きな人』
『え? 俺?』
まさか聞き返されるとは思っていなかった。
『まあ、いたとしても渡さねえけどな』
そう言って、優紀は理人の腕を掴む。
『優紀?』
一瞬険しい顔をしていた彼が極上の笑みを浮かべ、掴んだ理人の腕を引き寄せる。
そして理人の耳元で、
『好きだよ、理人』
と囁いたのだった。
──なんでこうなった?
『呑みサーで良いんじゃない?』
ガタイが良くて、体育会系に見られやすい鶴城裕也。普段は穏やかで、物腰も柔らかく一人あたりも良いが、頑固な一面も持ち合わせた幼馴染みの一人。
『裕也がそういうなら、いいんじゃね?』
明るく中性的で、すらりとした体形に整った顔をした姫川優紀。酒なんて一滴も呑めないくせに、裕也の意見に適当に合わせる。
『な、理人』
門倉理人は優紀に返答を求められ、
『俺は別になんでもいい』
とため息をつきながら頷く。
二人に比べ小柄で華奢に見える理人は、二人を見上げ”おめーらがデカすぎなんだ”と心の中で悪態をついた。
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理人たちはサークルの勧誘を面倒に思い、早々に入るところを決めることにしたのである。
エスカレーター式なだけあって、中学時代に恋人が出来なかった組は高校でも変化はないが、大学ともなると外部の人間が増える。もちろん新しい出会いがあるはずだ。
──今年こそ、二人には恋人ができるかもしれな……。
いや、それはないか。
二人とも中高と男女関係なくモテていたのを思い出し、理人は裕也の方に視線を向ける。
『裕也はなんで恋人作らねーの?』
高等部時代に理人は、彼にそう質問したことがあった。
『俺、優紀のことが好きなんだ』
中庭で他のクラスの女子から告白を受けていた優紀を眺めながら、彼はそういう。
『内緒な』
と笑って。
『ああ』
裕也の言葉に理人の胸がチリっと痛む。自分から聞いておいてバカだなと思いながら。
──勝ち目なんて初めから無いんだ。
それでももし、優紀に恋人が出来たなら……。
自分に一パーセントでも勝機はあるだろか?
そんなことを思いながら、
『優紀は好きな人とかいないのか?』
理人は彼に問いかけたのだ。
『は?』
中庭で後輩から告白を受けている裕也を眺めていた優紀は、心底驚いた顔をしてこちらに目を向けた。
『いや……だって、あんなしょっちゅうコクられてんのに、誰とも付き合わないから好きな奴でもいんのかと』
と理人が付け加えると、なんだかガッカリした顔ををして、
『そういうことな』
と小さく笑う。
『理人はいんの? 好きな人』
『え? 俺?』
まさか聞き返されるとは思っていなかった。
『まあ、いたとしても渡さねえけどな』
そう言って、優紀は理人の腕を掴む。
『優紀?』
一瞬険しい顔をしていた彼が極上の笑みを浮かべ、掴んだ理人の腕を引き寄せる。
そして理人の耳元で、
『好きだよ、理人』
と囁いたのだった。
──なんでこうなった?
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