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5話【何それ、カオス】
2 カオス以外の何物でもなく
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****♡side・電車
「で、次のミッションはなんだ。我らが暴君」
「暴君って……おま」
帰るなり塩田はこれである。
暴君と言われた課長唯野は、珍しく絶句していた。
「あんな命令を部下に出すなんて、暴君以外のなんだと言うんだ」
ここは株原本社にある苦情係。
正しい名称は『悪質クレーマー対策課』ではあるが、そんな呼び方をする者は誰もいない。
「いい案だと思ったんだよ。悪かったって」
「いい案なわけあるか! 人をなんだと思ってるんだ」
それは正論である。
「でも、苦情係なのに部下からクレーム来ちゃう上司とか笑っちゃうよね」
電車が場を和ませようと隣に立つ板井に言えば、
「笑えるか。頭痛しかしない」
と反論されてしまう。
「えー、でも。板井はこんな頭痛のする上司が好きなんでしょ? love的な意味で」
電車の発言に塩田が額に手をやった。
「今、それ言うか?」
板井は痛いところを突かれたのか、頭を抱えしゃがみ込んでしまう。
「善は急げって言うし」
「だとしても、今言うタイミングじゃなかっただろ」
ゲンナリする塩田。
「え、板井。俺のこと好きなの?」
遅れて反応する唯野。状況は更にカオスと化した。
「塩田、電車に空気を読むこと教えろよ」
「何言っているんだ、今更。紀夫は空気を読まない。それが紀夫スタンダードだ」
自分のせいで揉めているのは理解したが、こんな時どうするべきか迷う。
やはりここは定番の。
「俺のために争わないで!」
腕を組みふんぞり返る塩田と頭を抱える板井の間に割り込む電車。
”なんだこの茶番……”と呟く唯野。
「別に争ってはいない。板井の物分かりが悪いだけだからな」
「俺が悪いのか?」
無茶苦茶である。
仕方がないので、空気を読む気のない電車は唯野の両手を掴む。
自分が何とかせねば、この場は収まらないだろう。
「ここは一つ、暴君が忠犬とおつきあいをして丸く収めるというのは……」
「その案、乗った。そうしよう、暴君」
いつの間にか電車と塩田にナチュラルに暴君扱いされていた唯野は固まった。
と、そこへ更なるカオスの襲来。
「Hey! Shiota and the merry idiots」
副社長の皇とその金魚の糞である。
「嫌味度が増したな」
冷静な塩田の感想に『何故だ』と講義する皇。
「おかえりなさい」
社長秘書の神流川は苦情係の業務を手伝ってくれたにも関わらず、なんら変わらない態度。
「土産は?」
当然のごとく手を出す、総括黒岩。
「はい、お土産ですよ」
小さいことは気にしないがモットーな電車は誰にもツッコまずに黒岩にお土産の紙袋を渡した。
「ええっと……バナナ型黒糖唐辛子饅頭? 美味しいのか、これ」
「土産なので、その辺は判り兼ねますね」
早速包みを開ける黒岩。
「だから塩にしようと言ったのに」
いつの間にか隣に立った塩田が眉を寄せて。
「塩とかもらっても困るが」
”なかなか悪くない。美味しくもないが。”それが黒岩の感想のようだ。
「美味しいとまた買ってこいと言われかねないからな。不味いくらいで丁度いいんだ」
塩田の暴論を聞き流し、黒岩は何故か唯野に関心を移す。
唯野は板井と何やら話をしていたところらしい。肝心な部分を聞き逃した塩田が舌打ちをした、
「エンターテイメントと言うのはだなあ……」
「なんの話をしてるの、塩田」
「いや。二人はつき合うことにしたらしいが、その経緯を見逃したなと思って」
「え、つき合うのか?! 唯野」
それに反応したのは黒岩。
皇は饅頭を一口含むと『これは不味すぎる』と嘆いている。
「離婚するし、明日にも判を押せば問題ないだろう。別に社内恋愛は禁止されていないしな」
「決断がお早いことで」
神流川はいつの間にか全員分のお茶を用意し、饅頭に手を伸ばす。
「だそうだ、皇」
「は?」
お茶に手を伸ばそうとして黒岩の方を見上げる皇。
「早速離婚し、早急につき合おう皇」
”何言ってんだ”と言う顔をし、何か言いかけた皇だったが。
「ちょっと待て! 黒岩」
何故か”待った”をかけたのは唯野であった。
「で、次のミッションはなんだ。我らが暴君」
「暴君って……おま」
帰るなり塩田はこれである。
暴君と言われた課長唯野は、珍しく絶句していた。
「あんな命令を部下に出すなんて、暴君以外のなんだと言うんだ」
ここは株原本社にある苦情係。
正しい名称は『悪質クレーマー対策課』ではあるが、そんな呼び方をする者は誰もいない。
「いい案だと思ったんだよ。悪かったって」
「いい案なわけあるか! 人をなんだと思ってるんだ」
それは正論である。
「でも、苦情係なのに部下からクレーム来ちゃう上司とか笑っちゃうよね」
電車が場を和ませようと隣に立つ板井に言えば、
「笑えるか。頭痛しかしない」
と反論されてしまう。
「えー、でも。板井はこんな頭痛のする上司が好きなんでしょ? love的な意味で」
電車の発言に塩田が額に手をやった。
「今、それ言うか?」
板井は痛いところを突かれたのか、頭を抱えしゃがみ込んでしまう。
「善は急げって言うし」
「だとしても、今言うタイミングじゃなかっただろ」
ゲンナリする塩田。
「え、板井。俺のこと好きなの?」
遅れて反応する唯野。状況は更にカオスと化した。
「塩田、電車に空気を読むこと教えろよ」
「何言っているんだ、今更。紀夫は空気を読まない。それが紀夫スタンダードだ」
自分のせいで揉めているのは理解したが、こんな時どうするべきか迷う。
やはりここは定番の。
「俺のために争わないで!」
腕を組みふんぞり返る塩田と頭を抱える板井の間に割り込む電車。
”なんだこの茶番……”と呟く唯野。
「別に争ってはいない。板井の物分かりが悪いだけだからな」
「俺が悪いのか?」
無茶苦茶である。
仕方がないので、空気を読む気のない電車は唯野の両手を掴む。
自分が何とかせねば、この場は収まらないだろう。
「ここは一つ、暴君が忠犬とおつきあいをして丸く収めるというのは……」
「その案、乗った。そうしよう、暴君」
いつの間にか電車と塩田にナチュラルに暴君扱いされていた唯野は固まった。
と、そこへ更なるカオスの襲来。
「Hey! Shiota and the merry idiots」
副社長の皇とその金魚の糞である。
「嫌味度が増したな」
冷静な塩田の感想に『何故だ』と講義する皇。
「おかえりなさい」
社長秘書の神流川は苦情係の業務を手伝ってくれたにも関わらず、なんら変わらない態度。
「土産は?」
当然のごとく手を出す、総括黒岩。
「はい、お土産ですよ」
小さいことは気にしないがモットーな電車は誰にもツッコまずに黒岩にお土産の紙袋を渡した。
「ええっと……バナナ型黒糖唐辛子饅頭? 美味しいのか、これ」
「土産なので、その辺は判り兼ねますね」
早速包みを開ける黒岩。
「だから塩にしようと言ったのに」
いつの間にか隣に立った塩田が眉を寄せて。
「塩とかもらっても困るが」
”なかなか悪くない。美味しくもないが。”それが黒岩の感想のようだ。
「美味しいとまた買ってこいと言われかねないからな。不味いくらいで丁度いいんだ」
塩田の暴論を聞き流し、黒岩は何故か唯野に関心を移す。
唯野は板井と何やら話をしていたところらしい。肝心な部分を聞き逃した塩田が舌打ちをした、
「エンターテイメントと言うのはだなあ……」
「なんの話をしてるの、塩田」
「いや。二人はつき合うことにしたらしいが、その経緯を見逃したなと思って」
「え、つき合うのか?! 唯野」
それに反応したのは黒岩。
皇は饅頭を一口含むと『これは不味すぎる』と嘆いている。
「離婚するし、明日にも判を押せば問題ないだろう。別に社内恋愛は禁止されていないしな」
「決断がお早いことで」
神流川はいつの間にか全員分のお茶を用意し、饅頭に手を伸ばす。
「だそうだ、皇」
「は?」
お茶に手を伸ばそうとして黒岩の方を見上げる皇。
「早速離婚し、早急につき合おう皇」
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