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4話【幻想ではない愛を】
5 駐車場で待ち受ける罠
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****♡side・塩田
「何それ、ホントにそのまま持っていくの?」
「大丈夫だろ。リボンかけてもらったし。バーコードにはお買い上げありがとうございますシール張ってあるし」
電車に問われ、塩田は胸に抱えたアザラシの赤ちゃんのぬいぐるみを少し掲げた。思った以上にデカいが想像していたより、だいぶ軽い。
「心配なら店員に入り口までついてきて貰うか?」
眉を潜めた塩田に首を横に振る彼。
「万引き疑惑をかけられることは特に心配はしてないよ。ただ……塩田が可愛すぎて」
「なんだ? またギアを入れる気なのかよ」
もうただの変態だ。
「うん、まあ。極力ギアは入れない方向で頑張るよ」
「そうしてくれ」
こんなところでギアを入れるとか、どうかしていると思いながら彼のスマホの画面をのぞき込む。どうにもアザラシが邪魔だ。
「万が一ギアが入った時はこのアザラシで隠せるぞ」
いい思い付きだとばかりに提案すれは、
「前かがみでアザラシのぬいぐるみ持ってるとか、気持ち悪い人じゃん」
と彼。
「いや、ギアを入れようとする時点でアウトだろ」
「えー」
「えー、じゃない。ところで待ち合わせ場所は駐車場?」
「そうそう、着いたみたい」
水族館に着くなり早々に解散したのは全員でここに来た為だ。電車の義理の母や兄弟たちは館内に入っていったが、塩田たちが用のあるのは土産物屋のみ。任務遂行と言わんばかりに直行したのである。
土産物屋で自分の身長の二分の一ほどもあるぬいぐるみを抱えてレジに向かうと、係のお姉さんに二度見された。その上、何故か購入記念と言いくるめられ記念撮影までされたのだった。
「じゃあ俺の両親はもう水族館に着いているのか。面倒なことになる前に……」
塩田はぬいぐるみを抱えなおし、駐車場へ急ごうと彼に言おうとしたところで館内放送。
『お客様のお呼び出しを致します。……から起こしの塩田様。お連れ様が駐車場でお待ちです……』
「ああああああ。遅かったか」
「なんで迷子のお知らせ?」
塩田と電車は迷子の案内で放送されたのだった。
「迷子なんだろ」
ため息を一つつくと塩田は売店から外へ出て駐車場を目指す。慌ててそれに続く電車。まさか刺客がいるとも知らずに。
「はあい、紀夫ちゃんに以往ちゃん」
館内放送で告げられた区画へ行くと見慣れた車と何故か疲れ切った管理人が立っていた。
「俺の両親は?」
「それなら、もう中に」
「は?」
行き違いになることも考慮して車のキーは電車の義母に渡してくれるよう頼んである。待ちきれずに館内に向かったなら、ココへ呼び出したのは両親ではない。まさか管理人が放送を頼んだとは考え辛い。何故なら電車とメッセージのやり取りをしていたのだから。
「行き会えるのか?」
「それは大丈夫でしょう。直接やり取りをしていたみたいだし」
「では、放送は?」
首を傾げた電車に管理人は気まずそうな顔をする。
車の中は紫外線カットのフィルムのせいで見えない。十人乗りの車だ。両親が乗っても十分座席に空きがあったはずだ。
「なんか、すごく嫌な予感がするんだけど」
電車は一歩車から下がり、塩田の腕を掴む。
いつでも逃走する準備万端と言ったところだろうか?
「何処から漏れたのかは知らないけれど、課長さんにわたしが以往ちゃんたちを迎えに行くことが知れたのよね」
嫌な予感的中だ。だがその情報が漏れたというなら、大方塩田の母からだろう。
「それで?」
「お迎えの人数が一人増えたのよ。でも、ボスじゃないわ」
「ボス?」
通常ボスと言えば、上司やトップなどを言う。しかし、それは何か違うような気がした。
何故なら、塩田家は魔王城と呼ばれている。そして、課長唯野は勇者と呼ばれているのだ。となると、この場合のボスはボス敵の方がしっくりくる。
「で、勇者の使者は一体?」
ごくりと唾を飲み込む電車。
逃げ辛いなとその隣でアザラシを押し付ける塩田。
果たしてこれは、中ボス戦なのか?
「何それ、ホントにそのまま持っていくの?」
「大丈夫だろ。リボンかけてもらったし。バーコードにはお買い上げありがとうございますシール張ってあるし」
電車に問われ、塩田は胸に抱えたアザラシの赤ちゃんのぬいぐるみを少し掲げた。思った以上にデカいが想像していたより、だいぶ軽い。
「心配なら店員に入り口までついてきて貰うか?」
眉を潜めた塩田に首を横に振る彼。
「万引き疑惑をかけられることは特に心配はしてないよ。ただ……塩田が可愛すぎて」
「なんだ? またギアを入れる気なのかよ」
もうただの変態だ。
「うん、まあ。極力ギアは入れない方向で頑張るよ」
「そうしてくれ」
こんなところでギアを入れるとか、どうかしていると思いながら彼のスマホの画面をのぞき込む。どうにもアザラシが邪魔だ。
「万が一ギアが入った時はこのアザラシで隠せるぞ」
いい思い付きだとばかりに提案すれは、
「前かがみでアザラシのぬいぐるみ持ってるとか、気持ち悪い人じゃん」
と彼。
「いや、ギアを入れようとする時点でアウトだろ」
「えー」
「えー、じゃない。ところで待ち合わせ場所は駐車場?」
「そうそう、着いたみたい」
水族館に着くなり早々に解散したのは全員でここに来た為だ。電車の義理の母や兄弟たちは館内に入っていったが、塩田たちが用のあるのは土産物屋のみ。任務遂行と言わんばかりに直行したのである。
土産物屋で自分の身長の二分の一ほどもあるぬいぐるみを抱えてレジに向かうと、係のお姉さんに二度見された。その上、何故か購入記念と言いくるめられ記念撮影までされたのだった。
「じゃあ俺の両親はもう水族館に着いているのか。面倒なことになる前に……」
塩田はぬいぐるみを抱えなおし、駐車場へ急ごうと彼に言おうとしたところで館内放送。
『お客様のお呼び出しを致します。……から起こしの塩田様。お連れ様が駐車場でお待ちです……』
「ああああああ。遅かったか」
「なんで迷子のお知らせ?」
塩田と電車は迷子の案内で放送されたのだった。
「迷子なんだろ」
ため息を一つつくと塩田は売店から外へ出て駐車場を目指す。慌ててそれに続く電車。まさか刺客がいるとも知らずに。
「はあい、紀夫ちゃんに以往ちゃん」
館内放送で告げられた区画へ行くと見慣れた車と何故か疲れ切った管理人が立っていた。
「俺の両親は?」
「それなら、もう中に」
「は?」
行き違いになることも考慮して車のキーは電車の義母に渡してくれるよう頼んである。待ちきれずに館内に向かったなら、ココへ呼び出したのは両親ではない。まさか管理人が放送を頼んだとは考え辛い。何故なら電車とメッセージのやり取りをしていたのだから。
「行き会えるのか?」
「それは大丈夫でしょう。直接やり取りをしていたみたいだし」
「では、放送は?」
首を傾げた電車に管理人は気まずそうな顔をする。
車の中は紫外線カットのフィルムのせいで見えない。十人乗りの車だ。両親が乗っても十分座席に空きがあったはずだ。
「なんか、すごく嫌な予感がするんだけど」
電車は一歩車から下がり、塩田の腕を掴む。
いつでも逃走する準備万端と言ったところだろうか?
「何処から漏れたのかは知らないけれど、課長さんにわたしが以往ちゃんたちを迎えに行くことが知れたのよね」
嫌な予感的中だ。だがその情報が漏れたというなら、大方塩田の母からだろう。
「それで?」
「お迎えの人数が一人増えたのよ。でも、ボスじゃないわ」
「ボス?」
通常ボスと言えば、上司やトップなどを言う。しかし、それは何か違うような気がした。
何故なら、塩田家は魔王城と呼ばれている。そして、課長唯野は勇者と呼ばれているのだ。となると、この場合のボスはボス敵の方がしっくりくる。
「で、勇者の使者は一体?」
ごくりと唾を飲み込む電車。
逃げ辛いなとその隣でアザラシを押し付ける塩田。
果たしてこれは、中ボス戦なのか?
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