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1話【振り回されるのは、いつものこと】
6 殺す気か⁉
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****♡side・塩田
「以往ちゃん、あなたモテるのねえ」
と、別室で課長に電話をしていた塩田の母が複雑な表情をしながらリビングに戻ってくる。
「は?」
なんのことだ、というように眉を寄せる塩田。
「皇さんがね……」
──皇?!
塩田はおもむろに嫌な顔をした。嫌な予感しかしない。
「以往ちゃんを俺に下さいって。でも、以往ちゃんには紀夫くんがいるでしょ?」
「無論だ。断る! 俺は紀夫と結婚すると決めている」
ぎゅっと電車の手を握ると、隣の彼は真っ赤な顔をしてうつむいた。
「ママももちろん、本人の意思を尊重しますって言ったんだけれど……以往ちゃんに”首を洗ってそこで待ってろ!”と伝言してほしいっていうのよ」
──なんだ? 俺を殺す気か?!
副社長からの伝言の内容に塩田の父がお茶を吹く。
「なにか間違ってないか? その伝言は……」
「なにもかもが間違いだ! あの野郎……」
塩田はこぶしを握り締める。その手を見つめていた塩田の母は、何かを思いついたように突然、
「お昼は寿司にしましょう」
と両手をポンっと打った。カオスである。
「早急に紀夫の家にも挨拶にいく」
塩田が寿司を食べながらそう発言すると、
「あら、いいわね」
と塩田の母が両手を胸の前で合わせ、ニコリと微笑む。
「え?!」
と声を上げたのは電車である。
何かまずいことでもあるのか? というように電車の方へ視線を向ければ、
「うちはその……」
と困った表情を浮かべていた。
そういえば、と塩田は思う。電車の家族について何も聞いたことがなかったな、と。
彼の家族について知っていることと言えば、父に見合いをさせられそうになったことくらいのものだ。これは何も知らないに等しいのではないだろうか?
──俺は紀夫の家族構成すら知らない。
「普通じゃないから……その……驚くかも」
普通じゃないといえば、アラブの宮殿のような塩田の家も充分普通じゃないと思われるが、その上を行くのだろうか?
「多少のことでは驚かないけれど、紀夫くんの家はどんな感じなの?」
と、塩田の母。電車は目を泳がせていたが、覚悟を決めたようにポツリポツリと話し出す。
「うちは母が亡くなってから、父が五回再婚していて……」
──五回?
それは不幸が重なったのか?
それとも保険金殺……(自重)
塩田が複雑な表情をしていると、母も同じことを考えたのか両手を口元にあてて驚いた顔をしている。
父はムンクの叫びのようなポーズで青ざめていた。
「ちがっ! 生きてる! 生きてるから!」
三人の表情の意味に気づいた電車が慌てて否定する。
「なんというか、酒癖が悪くて酔った勢いでその……」
つまり、酔うと下半身が大暴れするらしい。毎回浮気現場を押さえられ、離婚すること四回。現在は六人目の妻と六人の子供たちと暮らしているらしい。
詳しい話を聞いてから後日挨拶に行くことに決め、今日は実家でゆっくり過ごすことにしたのだが。
おおよそ落ち着くとは縁遠い塩田の自室で二人っきりになると、電車はキラキラと煌めくシャンデリアに目が眩みつつ、
「幻滅した?」
と不安そうに。
「親父の下半身に?」
と電車の問いに、塩田は眉を寄せる。
「仮に幻滅したところで、親父の下半身とは結婚しないぞ? 俺が結婚するのは紀夫だ」
親父でなくとも、下半身と結婚する人はそうそういない。
「でも、結婚を反対されたりとか……」
「そんなことは俺の知ったことではない」
と、金色の落ち着かないベッドにふんぞり返る塩田。
そんな塩田を見て、電車はクスリと笑う。
「そういえばさっき、ママさんに怒られてたね。って……え?!」
やっと笑顔になった彼を塩田は押し倒したのだった。
「以往ちゃん、あなたモテるのねえ」
と、別室で課長に電話をしていた塩田の母が複雑な表情をしながらリビングに戻ってくる。
「は?」
なんのことだ、というように眉を寄せる塩田。
「皇さんがね……」
──皇?!
塩田はおもむろに嫌な顔をした。嫌な予感しかしない。
「以往ちゃんを俺に下さいって。でも、以往ちゃんには紀夫くんがいるでしょ?」
「無論だ。断る! 俺は紀夫と結婚すると決めている」
ぎゅっと電車の手を握ると、隣の彼は真っ赤な顔をしてうつむいた。
「ママももちろん、本人の意思を尊重しますって言ったんだけれど……以往ちゃんに”首を洗ってそこで待ってろ!”と伝言してほしいっていうのよ」
──なんだ? 俺を殺す気か?!
副社長からの伝言の内容に塩田の父がお茶を吹く。
「なにか間違ってないか? その伝言は……」
「なにもかもが間違いだ! あの野郎……」
塩田はこぶしを握り締める。その手を見つめていた塩田の母は、何かを思いついたように突然、
「お昼は寿司にしましょう」
と両手をポンっと打った。カオスである。
「早急に紀夫の家にも挨拶にいく」
塩田が寿司を食べながらそう発言すると、
「あら、いいわね」
と塩田の母が両手を胸の前で合わせ、ニコリと微笑む。
「え?!」
と声を上げたのは電車である。
何かまずいことでもあるのか? というように電車の方へ視線を向ければ、
「うちはその……」
と困った表情を浮かべていた。
そういえば、と塩田は思う。電車の家族について何も聞いたことがなかったな、と。
彼の家族について知っていることと言えば、父に見合いをさせられそうになったことくらいのものだ。これは何も知らないに等しいのではないだろうか?
──俺は紀夫の家族構成すら知らない。
「普通じゃないから……その……驚くかも」
普通じゃないといえば、アラブの宮殿のような塩田の家も充分普通じゃないと思われるが、その上を行くのだろうか?
「多少のことでは驚かないけれど、紀夫くんの家はどんな感じなの?」
と、塩田の母。電車は目を泳がせていたが、覚悟を決めたようにポツリポツリと話し出す。
「うちは母が亡くなってから、父が五回再婚していて……」
──五回?
それは不幸が重なったのか?
それとも保険金殺……(自重)
塩田が複雑な表情をしていると、母も同じことを考えたのか両手を口元にあてて驚いた顔をしている。
父はムンクの叫びのようなポーズで青ざめていた。
「ちがっ! 生きてる! 生きてるから!」
三人の表情の意味に気づいた電車が慌てて否定する。
「なんというか、酒癖が悪くて酔った勢いでその……」
つまり、酔うと下半身が大暴れするらしい。毎回浮気現場を押さえられ、離婚すること四回。現在は六人目の妻と六人の子供たちと暮らしているらしい。
詳しい話を聞いてから後日挨拶に行くことに決め、今日は実家でゆっくり過ごすことにしたのだが。
おおよそ落ち着くとは縁遠い塩田の自室で二人っきりになると、電車はキラキラと煌めくシャンデリアに目が眩みつつ、
「幻滅した?」
と不安そうに。
「親父の下半身に?」
と電車の問いに、塩田は眉を寄せる。
「仮に幻滅したところで、親父の下半身とは結婚しないぞ? 俺が結婚するのは紀夫だ」
親父でなくとも、下半身と結婚する人はそうそういない。
「でも、結婚を反対されたりとか……」
「そんなことは俺の知ったことではない」
と、金色の落ち着かないベッドにふんぞり返る塩田。
そんな塩田を見て、電車はクスリと笑う。
「そういえばさっき、ママさんに怒られてたね。って……え?!」
やっと笑顔になった彼を塩田は押し倒したのだった。
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