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19──彼の心を蝕むもの【兄】
1 勘違い【R】
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『優人くんを救えるのはあなたしかいないの。わかるでしょ?』
『うん、分かってるよ』
『遠江をあなたから遠ざけることは簡単。でも、彼が本当に責めているのは自分自身』
『ちゃんと分かっている』
恋した相手がたまたま同性で、たまたま弟だっただけ。
そんな風に開き直れたならどんなにか楽だろう。
想い合えることは相手が誰であっても奇跡。家族だって他人には違いないのだから。自分以外は他の個体で、それぞれ自分というものがある。一心同体ではない。
そんな奇跡的な関係になれたというのに、自分はその最愛の相手を苦しめている。自分たちがもし家族でなかったなら、こんなに苦しめなくて良かったのだろうか? 母の言うことを聞いて傍に居たなら。
何を悔もうとも過去は変わらない。変えることなどできはしない。
「和宏」
行為の最中だけ名前で呼ぶ彼。
きっとどうしたら恋人らしくなれるのか、対等な関係でいられるのか模索しているに違いない。
──いつでも名前で呼ばれたいと望むのは贅沢だろうか?
名前で呼ばれるたび、こんなに心が跳ねるのに。
兄ではなく、自分自身が愛されているのだと感じられるのに。
こんなことを言ってしまったら、どんな反応をされるのだろう。そう思うといつだって口を噤んでしまう自分がいる。
「痛くない?」
「ん……」
ゆっくりと奥から指を引き抜かれ、小さく声が漏れた。
大事にされていることは分かっている。言えばきっと希望だって叶えてくれるに違いない。でもそれではダメなのだ。
きっと自分が無理やり言わせている気分になってしまうから。
「痛いの?」
「気持ちいいよ」
恥ずかしさを振り切って言葉を述べれば優人が切なげに眉を寄せる。
「じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔するの」
「え?」
不意に優しく抱きしめられた。
背中を撫でる温かく優しい手。股に彼の熱を感じているのに、自分の欲望を抑え込んで和宏のケアをしようとしているのだ。
──どうしていつも、理性が上回るのか俺にはわからないよ。
「何を考えてるの」
優人の言葉に返せる回答を和宏は持ち合わせていなかった。
「俺の事だけ考えていてよ」
「考えてるよ」
即答した和宏に彼の大きなため息。
「じゃあ、余計なことを考えているわけだ」
「?!」
耳たぶを甘噛みされ、耳元で名前を呼ばれた和宏は一気に欲情を煽られる。
「俺に名前呼ばれただけで、ほらもう」
和宏自身に絡まる彼の指。
「ここは達きたいっていってる」
「ん……ダメ。それ……やぁッ」
鈴口をぐりぐりと刺激され、和宏は快感に胸をのけぞらせた。
「今は余計なこと考えないで。考えたらお仕置きだよ?」
「何……い……あああッ」
「良い反応」
普段はこんな風に意地悪するような奴ではない。和宏の態度がよっぽど腹に据えかねたか。
首筋を這う唇。胸の突起に触れる指。先ほどまで中を刺激されていたせいか、物足りなくて思わず腰を揺らしてしまう。
「優人……意地悪しないで。中、欲しいッ」
必死になる和宏に彼は驚いた顔をする。
「え?」
その反応から意地悪しているのは無意識なのだと感じた。
「意地悪してるつもりは……我慢できないの?」
和宏は熱で潤んだ瞳を彼に向け、こくこくと頷いてみせる。
「可愛いなあ」
優人の目が優しく細められて、和宏はぐいっと両股を広げられた。
──あ……どうしよう。恥ずかしくなってきた。
「なに、どうしたの」
自分が言ってしまった言葉を思い出し、両手で顔を覆う和宏。
そんな和宏に笑いを含んだ彼の声。
「やだって言ってもやめないよ? 欲しいって言ったのは和宏なんだから」
「そんなこと……いわな……んんッ」
腰を一気に押し進められ、和宏は快感に耐えた。
挿れた瞬間に達くなど恥ずかしくて耐えられない。
「こっち見てよ」
彼の手が和宏の手首を掴む。
「恥ずかしいよ」
「何を今更」
どうやら行為のことと勘違いされているようである。
『うん、分かってるよ』
『遠江をあなたから遠ざけることは簡単。でも、彼が本当に責めているのは自分自身』
『ちゃんと分かっている』
恋した相手がたまたま同性で、たまたま弟だっただけ。
そんな風に開き直れたならどんなにか楽だろう。
想い合えることは相手が誰であっても奇跡。家族だって他人には違いないのだから。自分以外は他の個体で、それぞれ自分というものがある。一心同体ではない。
そんな奇跡的な関係になれたというのに、自分はその最愛の相手を苦しめている。自分たちがもし家族でなかったなら、こんなに苦しめなくて良かったのだろうか? 母の言うことを聞いて傍に居たなら。
何を悔もうとも過去は変わらない。変えることなどできはしない。
「和宏」
行為の最中だけ名前で呼ぶ彼。
きっとどうしたら恋人らしくなれるのか、対等な関係でいられるのか模索しているに違いない。
──いつでも名前で呼ばれたいと望むのは贅沢だろうか?
名前で呼ばれるたび、こんなに心が跳ねるのに。
兄ではなく、自分自身が愛されているのだと感じられるのに。
こんなことを言ってしまったら、どんな反応をされるのだろう。そう思うといつだって口を噤んでしまう自分がいる。
「痛くない?」
「ん……」
ゆっくりと奥から指を引き抜かれ、小さく声が漏れた。
大事にされていることは分かっている。言えばきっと希望だって叶えてくれるに違いない。でもそれではダメなのだ。
きっと自分が無理やり言わせている気分になってしまうから。
「痛いの?」
「気持ちいいよ」
恥ずかしさを振り切って言葉を述べれば優人が切なげに眉を寄せる。
「じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔するの」
「え?」
不意に優しく抱きしめられた。
背中を撫でる温かく優しい手。股に彼の熱を感じているのに、自分の欲望を抑え込んで和宏のケアをしようとしているのだ。
──どうしていつも、理性が上回るのか俺にはわからないよ。
「何を考えてるの」
優人の言葉に返せる回答を和宏は持ち合わせていなかった。
「俺の事だけ考えていてよ」
「考えてるよ」
即答した和宏に彼の大きなため息。
「じゃあ、余計なことを考えているわけだ」
「?!」
耳たぶを甘噛みされ、耳元で名前を呼ばれた和宏は一気に欲情を煽られる。
「俺に名前呼ばれただけで、ほらもう」
和宏自身に絡まる彼の指。
「ここは達きたいっていってる」
「ん……ダメ。それ……やぁッ」
鈴口をぐりぐりと刺激され、和宏は快感に胸をのけぞらせた。
「今は余計なこと考えないで。考えたらお仕置きだよ?」
「何……い……あああッ」
「良い反応」
普段はこんな風に意地悪するような奴ではない。和宏の態度がよっぽど腹に据えかねたか。
首筋を這う唇。胸の突起に触れる指。先ほどまで中を刺激されていたせいか、物足りなくて思わず腰を揺らしてしまう。
「優人……意地悪しないで。中、欲しいッ」
必死になる和宏に彼は驚いた顔をする。
「え?」
その反応から意地悪しているのは無意識なのだと感じた。
「意地悪してるつもりは……我慢できないの?」
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挿れた瞬間に達くなど恥ずかしくて耐えられない。
「こっち見てよ」
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「恥ずかしいよ」
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どうやら行為のことと勘違いされているようである。
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