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18──自分を取り巻く環境【実弟】
2 優しい時間
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「この微妙な映画を観て、兄さんはどうしようって言うの」
「レビューを載せるらしい」
「これの?!」
素朴な疑問に対し返ってきた言葉に驚く優人。
「現時点では微妙だけれど、そのうち面白くなるかもしれないし」
という兄に対し、優人は眉を潜めると、
「確か兄さんは、面白い映画は冒頭から興味をそそる展開って言ってなかった?」
「まあ、それは否定しないけど。意外とこの微妙な流れも後々伏線として回収されるかもしれないしさ」
「へえ」
思わず棒読みの相槌になってしまう優人に笑う彼。
兄の隣で片膝を抱える優人の頬に彼の手が伸びる。
「そんな顔するなよ」
ふふっと笑いながら頬に触れるその温かい手。優人はその手を取ると甲にちゅっと口づけた。
──まあ、仕事だから仕方ないか。
それにしても、と思う。
世の中には大まかに分けて方向性が三つある。映像と音で作るもの。絵と文字で作るもの。そして文字のみで物語を紡ぐもの。
この三つは伝え方が違うし、受け取り方も違うだろう。
文字だけで伝えるには細かく心情や舞台背景などを伝える必要がある。しかし映像と音となれば説明はぐっと減る。その代わり決められた時間で伝えたいもの、表現したいものを詰め込む必要が出てくるだろう。
つまりこの三つは伝え方がイコールにはならないということだ。そうなってくるとスタイルによって冒頭の表現法も変わってくる。
映像と音声で作るのであれば、舞台については観るだけでなんとなく理解できるものだ。もちろんわかるように表現しなければ伝わらないだろう。
──つまり面白くないのはそこにあるんだよね。
おおよそ二時間の映画でやるような内容ではない。主題はしっかりしているものの、その短さがスピード感を増し感動どころではなかった。
──これなら回想という形で盛り込んだらいいのに。
これじゃあ、ただ断片的に死ぬ直前を繰り返しているだけに見える。
”失敗だよ、この映画”と思いながらソファーから立ち上がるとカウンターの椅子に掛けていたパーカーのポケットに手を差し入れる。目的のモノを取り出すと再び兄の隣に腰かけた。
「使われてる曲は悪くないと思うんだよね」
「何、そういうアプローチで行くの。本編に触れないレビューはどうかと思うよ?」
兄の手を取りながら意見を述べる優人。
「だって、面白くない映画のレビューなんて書いたことないし」
「何気に酷いこと言ってない?」
「え?」
無意識の不満だったのか、ハッとしてこちらを見る彼。
「あ、いや。あくまでも個人の感想だよ。面白いと感じる人もいるだろうし」
「ふうん」
優人はポケットから取り出したものを兄の指に嵌めながら。
「冷たッ」
部屋は暖かくとも、外気に触れていなかった金属は冷たかったかと思いながら小さく笑うと、彼が手元に視線を落とす。
「ペアリング」
何と聞かれる前に答える優人に驚いた顔をする兄。
「頼んでたの今日受け取ってきたからさ、もちろんしてくれるでしょ?」
先に嵌めておいて何を言っているんだと言う彼の視線を感じるが、そんなことはお構いなしである。
「それは、もちろん」
優人は自分の前から離れていく兄の手を眺めていた。
「アンティークなデザインなんだな。綺麗」
「うん。兄さんが喜ぶと思って」
”恋人の証だよ”と続ければ、
「誰かに聞かれたら、恋人から貰ったって言うよ」
と彼。
優人はそんな兄をニコニコしながら見つめていた。
「さて、続き観ないと」
「レビューなら途中まででも書けるんじゃない? 感想じゃないんだし」
まだ観るのという気持ちを隠さずにそう意見すれば、
「そういうこと言う?」
と苦笑いする兄。
「観たところでネタバレはできないわけだし、早くイチャイチャしようよ」
「そうだけど、ミスリードはできるでしょ?」
「え……これって、最初の主人に再会する話だよね。はじめからネタバレしてるじゃん」
ゲンナリする優人に対し、兄は笑いながら軽く肩を竦めたのだった。
「レビューを載せるらしい」
「これの?!」
素朴な疑問に対し返ってきた言葉に驚く優人。
「現時点では微妙だけれど、そのうち面白くなるかもしれないし」
という兄に対し、優人は眉を潜めると、
「確か兄さんは、面白い映画は冒頭から興味をそそる展開って言ってなかった?」
「まあ、それは否定しないけど。意外とこの微妙な流れも後々伏線として回収されるかもしれないしさ」
「へえ」
思わず棒読みの相槌になってしまう優人に笑う彼。
兄の隣で片膝を抱える優人の頬に彼の手が伸びる。
「そんな顔するなよ」
ふふっと笑いながら頬に触れるその温かい手。優人はその手を取ると甲にちゅっと口づけた。
──まあ、仕事だから仕方ないか。
それにしても、と思う。
世の中には大まかに分けて方向性が三つある。映像と音で作るもの。絵と文字で作るもの。そして文字のみで物語を紡ぐもの。
この三つは伝え方が違うし、受け取り方も違うだろう。
文字だけで伝えるには細かく心情や舞台背景などを伝える必要がある。しかし映像と音となれば説明はぐっと減る。その代わり決められた時間で伝えたいもの、表現したいものを詰め込む必要が出てくるだろう。
つまりこの三つは伝え方がイコールにはならないということだ。そうなってくるとスタイルによって冒頭の表現法も変わってくる。
映像と音声で作るのであれば、舞台については観るだけでなんとなく理解できるものだ。もちろんわかるように表現しなければ伝わらないだろう。
──つまり面白くないのはそこにあるんだよね。
おおよそ二時間の映画でやるような内容ではない。主題はしっかりしているものの、その短さがスピード感を増し感動どころではなかった。
──これなら回想という形で盛り込んだらいいのに。
これじゃあ、ただ断片的に死ぬ直前を繰り返しているだけに見える。
”失敗だよ、この映画”と思いながらソファーから立ち上がるとカウンターの椅子に掛けていたパーカーのポケットに手を差し入れる。目的のモノを取り出すと再び兄の隣に腰かけた。
「使われてる曲は悪くないと思うんだよね」
「何、そういうアプローチで行くの。本編に触れないレビューはどうかと思うよ?」
兄の手を取りながら意見を述べる優人。
「だって、面白くない映画のレビューなんて書いたことないし」
「何気に酷いこと言ってない?」
「え?」
無意識の不満だったのか、ハッとしてこちらを見る彼。
「あ、いや。あくまでも個人の感想だよ。面白いと感じる人もいるだろうし」
「ふうん」
優人はポケットから取り出したものを兄の指に嵌めながら。
「冷たッ」
部屋は暖かくとも、外気に触れていなかった金属は冷たかったかと思いながら小さく笑うと、彼が手元に視線を落とす。
「ペアリング」
何と聞かれる前に答える優人に驚いた顔をする兄。
「頼んでたの今日受け取ってきたからさ、もちろんしてくれるでしょ?」
先に嵌めておいて何を言っているんだと言う彼の視線を感じるが、そんなことはお構いなしである。
「それは、もちろん」
優人は自分の前から離れていく兄の手を眺めていた。
「アンティークなデザインなんだな。綺麗」
「うん。兄さんが喜ぶと思って」
”恋人の証だよ”と続ければ、
「誰かに聞かれたら、恋人から貰ったって言うよ」
と彼。
優人はそんな兄をニコニコしながら見つめていた。
「さて、続き観ないと」
「レビューなら途中まででも書けるんじゃない? 感想じゃないんだし」
まだ観るのという気持ちを隠さずにそう意見すれば、
「そういうこと言う?」
と苦笑いする兄。
「観たところでネタバレはできないわけだし、早くイチャイチャしようよ」
「そうだけど、ミスリードはできるでしょ?」
「え……これって、最初の主人に再会する話だよね。はじめからネタバレしてるじゃん」
ゲンナリする優人に対し、兄は笑いながら軽く肩を竦めたのだった。
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