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13──新たな環境での日常【兄】
1 和宏の疑問
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片織たちを見送ってようやく一息つく。
スマホの画面に目を落とすと最新のメッセージが。
書かれている場所に向かうと優人の友人である平田がいた。
「優人は?」
彼が軽く会釈をするので和宏は”やあ”というように手を挙げる。
「中に飲み物買いに行きました」
「そっか」
親指を後ろに向け、珈琲ショップを示す彼。
和宏は数度軽く頷き平田の隣に立つと両手をポケットに突っ込む。
「歩いて来たんですか?」
彼に問われ、そちらを見上げる和宏。平田は自分よりも頭一つ分くらい背が高い。
「すぐそこだからね」
待ち合わせ場所は自宅マンションから徒歩五分ほどの場所であった。これから三人で映画に行こうというのある。
「お仕事忙しいのでは?」
ちっとも返信をしない和宏にそう感じたのかも知れない彼。
「ああ、さっきは打合せしていたから。別に忙しくはないよ」
映画に行こうというのはどうやら彼の案。
家にこもりがちになってしまう和宏を気遣ってのことらしい。
「初めは外食でもって話だったですが、”飯は家で食いたい”と優人が言うので」
優人が待っている間、気まずくならないように話を振ってくれるのがありがたい。
「まあ、外食しがちになるから」
しかし主に家族としか会話をしない和宏は当たり障りのない返答しかできなかった。
「お持たせ。アイスティーで良かった?」
三人分の飲み物を購入した優人が店から出てくる。
その問いかけは和宏に対するものであった。
「ああ。さんきゅ」
ここで受け取るのかと思っていたら、車で渡すとのこと。優人は尻のポケットから車のキーを取り出すと、手を差し出す平田に渡す。
和宏はそれを眺めながら、普段の二人はこんな感じなのかと思った。
先に行く平田。その後に続く和宏と優人。
「兄さんは一緒に出掛ける友人とかいたりする?」
隣を歩きながら問う優人。
「友人ねえ。片織くらいかな」
「担当さんね」
考えてみれば義弟の阿貴が家に来てから彼と行動することが多かったと思う。それ以前を思い浮かべると、優人や妹の佳奈と出かけることが多かった。
ほとんど家族としか出かけたことがないなと改めて思う和宏。
「優人は……」
「俺は平田としか出かけないな」
優人が平田と友人になったのは大学に入ってからだ。それ以前のことはよく知らない和宏。
人当たりは良いもののあの事件以来、優人には仲の良い友人がないということくらいは知っている。
「どういうところに行くんだ?」
それは純粋な好奇心。
「うーん。喫茶店とか服買いに行ったり……映画?」
何故最後が疑問形なのか謎だが、へえと相槌を打つ和宏。
「おいおい、どこ行くの。駐車場、ここ」
会話に夢中になっていた二人は平田に呼び止められ、そちらを振り返る。
「悪い」
と肩を竦める優人。
「しかし、紅茶好きだね」
後部座席に乗り込んだ和宏は、助手席から飲み物を差し出す優人から紙コップを受け取り、平田に視線を向けた。恐らくその言葉は自分に向けられたものではないだろう。
「お姉ちゃんの影響だね」
と優人。
佳奈の紅茶缶集めは趣味。それにつき合って飲んでいるうちに和宏たち一家はいつの間にか紅茶派になってしまったという経緯がある。
「そういや、佳奈とはどうなの?」
と和宏。
それは別に恋愛のことを指してるわけではない。
平田は元は優人とルームシェアしていたが和宏と暮らすことになり、妹の佳奈がその後釜としてルームシェアすることになったのである。
「どうと言われましても。あまり変わりませんねえ」
と彼。
二人がシートベルトしているのを確認し、左右確認をしてから車を駐車場から出す。
「違うことと言えば、佳奈さんは料理もしてくれることですかね」
優人は料理はしなかったのか? と言うように優人へ視線を向けると、
「俺の時は平田が料理担当だったからね」
と。
「担当というか、優人がやりたがらないからだろ」
と平田。
和宏は不思議に思いながら二人の会話を聞いていたのだった。
スマホの画面に目を落とすと最新のメッセージが。
書かれている場所に向かうと優人の友人である平田がいた。
「優人は?」
彼が軽く会釈をするので和宏は”やあ”というように手を挙げる。
「中に飲み物買いに行きました」
「そっか」
親指を後ろに向け、珈琲ショップを示す彼。
和宏は数度軽く頷き平田の隣に立つと両手をポケットに突っ込む。
「歩いて来たんですか?」
彼に問われ、そちらを見上げる和宏。平田は自分よりも頭一つ分くらい背が高い。
「すぐそこだからね」
待ち合わせ場所は自宅マンションから徒歩五分ほどの場所であった。これから三人で映画に行こうというのある。
「お仕事忙しいのでは?」
ちっとも返信をしない和宏にそう感じたのかも知れない彼。
「ああ、さっきは打合せしていたから。別に忙しくはないよ」
映画に行こうというのはどうやら彼の案。
家にこもりがちになってしまう和宏を気遣ってのことらしい。
「初めは外食でもって話だったですが、”飯は家で食いたい”と優人が言うので」
優人が待っている間、気まずくならないように話を振ってくれるのがありがたい。
「まあ、外食しがちになるから」
しかし主に家族としか会話をしない和宏は当たり障りのない返答しかできなかった。
「お持たせ。アイスティーで良かった?」
三人分の飲み物を購入した優人が店から出てくる。
その問いかけは和宏に対するものであった。
「ああ。さんきゅ」
ここで受け取るのかと思っていたら、車で渡すとのこと。優人は尻のポケットから車のキーを取り出すと、手を差し出す平田に渡す。
和宏はそれを眺めながら、普段の二人はこんな感じなのかと思った。
先に行く平田。その後に続く和宏と優人。
「兄さんは一緒に出掛ける友人とかいたりする?」
隣を歩きながら問う優人。
「友人ねえ。片織くらいかな」
「担当さんね」
考えてみれば義弟の阿貴が家に来てから彼と行動することが多かったと思う。それ以前を思い浮かべると、優人や妹の佳奈と出かけることが多かった。
ほとんど家族としか出かけたことがないなと改めて思う和宏。
「優人は……」
「俺は平田としか出かけないな」
優人が平田と友人になったのは大学に入ってからだ。それ以前のことはよく知らない和宏。
人当たりは良いもののあの事件以来、優人には仲の良い友人がないということくらいは知っている。
「どういうところに行くんだ?」
それは純粋な好奇心。
「うーん。喫茶店とか服買いに行ったり……映画?」
何故最後が疑問形なのか謎だが、へえと相槌を打つ和宏。
「おいおい、どこ行くの。駐車場、ここ」
会話に夢中になっていた二人は平田に呼び止められ、そちらを振り返る。
「悪い」
と肩を竦める優人。
「しかし、紅茶好きだね」
後部座席に乗り込んだ和宏は、助手席から飲み物を差し出す優人から紙コップを受け取り、平田に視線を向けた。恐らくその言葉は自分に向けられたものではないだろう。
「お姉ちゃんの影響だね」
と優人。
佳奈の紅茶缶集めは趣味。それにつき合って飲んでいるうちに和宏たち一家はいつの間にか紅茶派になってしまったという経緯がある。
「そういや、佳奈とはどうなの?」
と和宏。
それは別に恋愛のことを指してるわけではない。
平田は元は優人とルームシェアしていたが和宏と暮らすことになり、妹の佳奈がその後釜としてルームシェアすることになったのである。
「どうと言われましても。あまり変わりませんねえ」
と彼。
二人がシートベルトしているのを確認し、左右確認をしてから車を駐車場から出す。
「違うことと言えば、佳奈さんは料理もしてくれることですかね」
優人は料理はしなかったのか? と言うように優人へ視線を向けると、
「俺の時は平田が料理担当だったからね」
と。
「担当というか、優人がやりたがらないからだろ」
と平田。
和宏は不思議に思いながら二人の会話を聞いていたのだった。
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