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2──弟の想いと思想【実弟】

4  兄に欲情する日【微R】

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 先ほどから繋いだままの指先に目をやった。綺麗な兄の手に。
 姉を別なタクシーに乗せ、自宅へ帰した。心配そうに兄を見つめる彼女へ、後で必ず連絡をすると約束をして。

 現在、優人は兄と共に友人とルームシェアをしているマンションへ向かっている。友人には、兄と少し話したいことがあるから、二人きりにして欲しい告げると、今日は外泊するからごゆっくりと気を使われた。

 隣に乗っている兄に目を向ければ、片手の手の甲を唇にあて、ぼんやりと窓の外を見つめている。
 数個ボタンの外されたままのYシャツから覗く鎖骨が艶っぽく、優人は目のやり場に困った。

 同じ男なのにと思いながら、再び繋いだままの手に視線を戻す。
 兄はどんな風に義兄に抱かれたのだろうか?
 行きのタクシーの中で軽くどんなことをするのか検索はした。
 行為そのものよりも、兄がアイツに良いようにされているのだと思うと怒りが込み上げる。

 確かに自分は異性としかつき合ったことがなかった。一緒に暮らしている相手は兄と同じく全性愛者パンセクシャル。つき合わないか? と言われたこともあったが、秒で断った。

 性愛志向をこうだと言い切ることは難しいと思う。仮に相手の肉体が女性であっても自認性別が男性ならそれは、異性愛とは言わないと思うから。
 ただ一つ言えることがあるなら、自分はタチであるということだ。
 それは誰が相手であろうが変わらないだろう。

 自分よりも小柄で華奢な兄。
 元々家族として好いていた相手だからだろうか?
 兄は性別関係なく、特別だと断言できる。
 だがこの気持ちを今、正しく表現するのは難しい。

 一人考えごとをしていたら、いつの間にか目的地についてしまっていた。
 優人がタクシー料金を払おうとすると、兄がそれを制す。余計な金はかけるなと言わんばかりに。
 仕方なく先に降りると兄が降りるのを待っていた。離れた指先に心細さを感じる。

「兄さん……」
「どうした? そんな顔して」
 どんな顔をしていたというのだろう?
「心配しなくても、ちゃんと降りるよ」
 誰もいないことを確認した兄が、そっと優人の肩に額をつけた。
「お前が好きだから……傍にいたい」
 優人はその言葉にドキリとした。
「中に行こう」
 その手を掴み、足早にあるきだす。
 理性が崩れ落ちそうだ。

「なあ、優人」
「うん?」
 エレベーターの箱の中。
 彼は不安そうな瞳を優人に向ける。
「さっきのことだが」
 言いづらそうにしている兄をじっと見つめる優人。
「お前、俺相手に立つの?」
 優人は思わずしゃがみ込んだ。

──何いってんのこの人。
 
「大丈夫か?……って、おい」
「兄さん」
 優人は突然立ち上がると、彼の背後の壁に手をついた。いわゆる壁ドンというヤツだろう。
「な、なんだよ」
「キス、したい」
「は?」
 言われている意味がわからないと言うように彼はしばし停止し、次いで赤くなる。

「え? ここでか?!」
 慌てふためく彼。
「ここは監視カメラがあるからアウト」
 優人が言い終わるか終わらないかのうちにチンと小気味よい音がし、ガシっとその手首を摑み箱からでた。
「ごめん、兄さん……俺、我慢できそうにない」
「え? 何がだ?」
 自分の部屋に向かいながら彼の方を振り返り、
「兄さんが欲しい」
と告げる。
「優人?」
「俺の下で、甘い声聞かせてよ」
と言えば彼はゆっくりと色づいた。


「はあ……ッ」
 靴を脱ぐのももどかしく、家に入るなり自分の部屋に連れこむ。
 鍵は? と聞かれ、オートロックと返したきり。
「んん……ッ」
 兄がをベッドに押し倒すと、欲望のままに組み伏せその唇を奪った。
 初めは戸惑っていた彼も、次第に欲情し舌を差し出す。
 
 義兄に教え込まれたという割にはたどたどしい彼に興奮を覚えた。
 本当に経験者なのかと疑ってしまいそうなほどだった。
「んッ……ああッ」
 シャツを剥ぎ取り胸の突起に舌を這わせれば、いい反応をする。
 自分の愛撫で感じてくれるのが嬉しい反面、初めてでないことに優人は苛立ちを感じたのだった。
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