上 下
24 / 30
リーマン物語2

────3『魔王…もとい、王子に遭遇』

しおりを挟む
────3『魔王…もとい、王子に遭遇』

リムジンから降りた塩田は不機嫌極まりなかった。何故か車内でセクハラに合うという、不測の事態に。それと言うのも、勝手に管理人が乗っていたからである。
「ちょっと、お兄ちゃん!」
「なんだ、まな」
そして今、門のところで変態兄弟に遭遇。
「なんで、パンツかぶってるの」
「何をいう。まなの素敵なお兄ちゃんのトレードマークはピンクのスケスケおパンティじゃないか」
これは、お洒落なんだぞ!と主張している。

相変わらず、わけのわからんやつが多いな。

案の定、警備の者に止められる、変な兄弟の横を塩田は涼し気に通り過ぎる。
”気づいていても、涼しい顔で”
某、CMの言葉を思い浮かべながら。

やたら長い階段を上ると、人々がダンスを楽しんでいた。中央で何やら注目を浴びているのが王子(皇)とやら、らしい。
「やあ、麗しき愚民ども」
王子は人々に大げさなアクションで言葉を発している。見た目はイケメンの部類だが…。

────あんまり、関わりたくないな。
早く帰ってドラマの続きを観たいが…。先ほどの魔法使いとの会話を思い出す。
『十二時で魔法が解けるから、気を付けて』
と、魔法使いに言われ、
『いや。早々に帰りたいんだが』
と希望を伝えると、
『何言ってる。子供じゃないんだから、夜更かししたまえ』
と強引に押し切られた。言ってることが無茶苦茶だ。

とりあえず、目立たないところへ行こうとし、王子に呼び止められる。
「よく来たね、俺様の城へようこそ」
歓迎されているのか、違うのか今一分かりかねる挨拶だ。しかも、王子というより魔王である。
「塩田が来てくれるなんて、感激だな」
ガラスの靴を頼りに探し出すはずのストーリーなのに、既に身バレしているようだ。
「いや、魔法使いに無理やり連れてこられた」
塩田は王子の相手が面倒になり、正直に告げるが、
「魔法使い?まさか…都市伝説の?」
「この期に及んで、下ネタはやめろ!」
魔法使いは、既婚者なため魔法使いではない。妖精にもならない。

「まあいい。話しが進まなくなりそうだから、俺様と踊ろう」
「断る!」
「ほう、俺様の誘いを断るとは。さては、運動音痴だな」
「俺は、ドラマの続きが観たいんだ。貴様と戯れている暇はない」
腕組みをし、ふんぞり返る塩田に彼が何やら耳打ちをした。
「!」

しおりを挟む

処理中です...