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4 フェミニンな彼女
5・非現実的な愛
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大林が入力したカーナビの案内に従いついた先は、大林家の所有する別荘の一つだった。
「手入れが行き届いているんだな」
海辺の近くのその別荘は白い壁に赤い屋根の木造の建物。
「管理をしてくださっている方に連絡をしておきましたの」
”入りましょう”と言って、車から降りた大林が玄関に向かって行く。外観はお洒落な一軒家。内観は山小屋風。丸太を生かした壁が特徴で自然な白茶色の壁が光り輝いていた。
彼女に導かれて二階へ上がれば、ベッドとシャワー室などの水回りのみ。十二畳ほどの空間が広がっており、大きな窓が並んでいる。
青い空、白い雲、そして砂浜に海。海の向こうにはかすかに島が見える。絶景だ。
「素敵なところでしょう?」
彼女は和宏にそう声をかけると、クローゼットに手をかけた。
アコーディオンドアを開けると、何着かシンプルなドレスがハンガーにかかっている。
大林は長い髪をかき分けると、背中を和宏に向け、
「チャックをおろしていただけます?」
と言葉を発した。
和宏は大林の背中に手を伸ばすと、彼女の要望に応える。
今は二人きり。
ドキドキしながらワンピースのチャックに指をかける。まるで映画のワンシーンの様だなと思いながら、彼女背中を見つめていた。
すとんと落ちるロリータワンピース。次いで彼女がクローゼットから取り出したのはニット素材の体にフィットした膝上のワンピースだった。
「わたくし、本当はこういうスタイルの方が好きですの」
いつも体型の隠れるロリータワンピースばかり着ている彼女の露になる身体のライン。その美ボディに鼻血を吹きそうになった和宏は、思わず鼻を抑える。Vネックで長袖のニット素材のボディコンは、和宏には刺激が強すぎた。
「もう少し身長が欲しかったですわね」
彼女の身長は決して高いとは言えない。
美しい太ももに思わず目が行ってしまうのは致し方ないだろう。
ハンガーに着ていたワンピースをかけると、和宏の手を取りベランダに出る大林。長いストレートの髪が風にさらさらと流れる。
「映画だったらこのまま、駆け落ちして幸せになれますのにね」
彼女はそう言って和宏を見上げた。
現実に待っているのは、望まない婚姻。
和宏は腕を引かれ、求められるままに彼女に口づける。
これから始まる一夜は、きっと夢に違いない。
そんなことを想いながら、大林の背中に腕を回せば彼女は和宏の胸に顔を埋めた。
「大学を卒業するまでは、自由でしてよ」
胸の中で苦し気に言葉を吐き出す大林。
それは自由があと数年しかないことを意味している。
彼女の幸せが、この手の中にしかなかったとしても。
非現実的な短絡的な行動は不幸しか生まないことを知っている。
愛を食って生きることなどできやしない。
どうしてこんなにも自分は無力なんだろう? 和宏は嘆いてもしかたないと思いながらも、自分自身の運命をを呪った。
あと数年で状況は変わるだろうか?
変わるとしたら奇跡でしかないだろう。
「好きな殿方と二人。質素でも一緒にいられたら幸せだと思っていましたわ。でも、現実に幸せというのはそれなりの暮らしの上にある者が感じることですわね」
食うにも困るようでは、幸せどころではないということなのだろう。
「仮にどんなにお金持ちの家に生まれ、たくさんの習い事をし教養を得たとしても。それは実用的とは言えませんの」
昔は家事などを中心として習う花嫁修業なるものがあった。
現代では技術が向上し、ボタン一つでこなせる世の中。
けれども『使う』という発想がなければ、家事をこなすことは難しいだろう。
実用性とは、生きるに直結していることが多い。
人間とは不思議な生き物だ。教養とは生きるに直結していないことも多いのだから。
彼女が何もできなくても、自分がそれを補うというのは非現実的なのだろうか?
愛だけでは生きていけない。分かっているつもりなのに。
「手入れが行き届いているんだな」
海辺の近くのその別荘は白い壁に赤い屋根の木造の建物。
「管理をしてくださっている方に連絡をしておきましたの」
”入りましょう”と言って、車から降りた大林が玄関に向かって行く。外観はお洒落な一軒家。内観は山小屋風。丸太を生かした壁が特徴で自然な白茶色の壁が光り輝いていた。
彼女に導かれて二階へ上がれば、ベッドとシャワー室などの水回りのみ。十二畳ほどの空間が広がっており、大きな窓が並んでいる。
青い空、白い雲、そして砂浜に海。海の向こうにはかすかに島が見える。絶景だ。
「素敵なところでしょう?」
彼女は和宏にそう声をかけると、クローゼットに手をかけた。
アコーディオンドアを開けると、何着かシンプルなドレスがハンガーにかかっている。
大林は長い髪をかき分けると、背中を和宏に向け、
「チャックをおろしていただけます?」
と言葉を発した。
和宏は大林の背中に手を伸ばすと、彼女の要望に応える。
今は二人きり。
ドキドキしながらワンピースのチャックに指をかける。まるで映画のワンシーンの様だなと思いながら、彼女背中を見つめていた。
すとんと落ちるロリータワンピース。次いで彼女がクローゼットから取り出したのはニット素材の体にフィットした膝上のワンピースだった。
「わたくし、本当はこういうスタイルの方が好きですの」
いつも体型の隠れるロリータワンピースばかり着ている彼女の露になる身体のライン。その美ボディに鼻血を吹きそうになった和宏は、思わず鼻を抑える。Vネックで長袖のニット素材のボディコンは、和宏には刺激が強すぎた。
「もう少し身長が欲しかったですわね」
彼女の身長は決して高いとは言えない。
美しい太ももに思わず目が行ってしまうのは致し方ないだろう。
ハンガーに着ていたワンピースをかけると、和宏の手を取りベランダに出る大林。長いストレートの髪が風にさらさらと流れる。
「映画だったらこのまま、駆け落ちして幸せになれますのにね」
彼女はそう言って和宏を見上げた。
現実に待っているのは、望まない婚姻。
和宏は腕を引かれ、求められるままに彼女に口づける。
これから始まる一夜は、きっと夢に違いない。
そんなことを想いながら、大林の背中に腕を回せば彼女は和宏の胸に顔を埋めた。
「大学を卒業するまでは、自由でしてよ」
胸の中で苦し気に言葉を吐き出す大林。
それは自由があと数年しかないことを意味している。
彼女の幸せが、この手の中にしかなかったとしても。
非現実的な短絡的な行動は不幸しか生まないことを知っている。
愛を食って生きることなどできやしない。
どうしてこんなにも自分は無力なんだろう? 和宏は嘆いてもしかたないと思いながらも、自分自身の運命をを呪った。
あと数年で状況は変わるだろうか?
変わるとしたら奇跡でしかないだろう。
「好きな殿方と二人。質素でも一緒にいられたら幸せだと思っていましたわ。でも、現実に幸せというのはそれなりの暮らしの上にある者が感じることですわね」
食うにも困るようでは、幸せどころではないということなのだろう。
「仮にどんなにお金持ちの家に生まれ、たくさんの習い事をし教養を得たとしても。それは実用的とは言えませんの」
昔は家事などを中心として習う花嫁修業なるものがあった。
現代では技術が向上し、ボタン一つでこなせる世の中。
けれども『使う』という発想がなければ、家事をこなすことは難しいだろう。
実用性とは、生きるに直結していることが多い。
人間とは不思議な生き物だ。教養とは生きるに直結していないことも多いのだから。
彼女が何もできなくても、自分がそれを補うというのは非現実的なのだろうか?
愛だけでは生きていけない。分かっているつもりなのに。
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