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━2章【不器用な二人】━
2-2『彼の気持ち』
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****♡side・美崎
「え? なんで……」
思わず出てしまった美崎の言葉に怪訝そうな顔をしたのはトイレから出てきた【大崎久隆】である。
K学園では二大セレブの片割れと言われる大崎家の次男であり、圭一の弟。彼の父は大崎グループの社長。
──なんで大里と大崎が一緒にホテルに?!
確か大崎って恋人いたよな?
しかも二人は今世間を騒がせている“泥沼の三角関係”ってやつじゃ……。
「変なことをしに入ったわけじゃないですよ。上のレストランで飯食っただけで」
大里は慌て誤解を解こうとするが、久隆は何も言わなかった。彼は口下手らしく、あまり話すところを見たことがない。もっとも泥沼の三角関係の渦中にある三人目、【片倉葵】とは仲が良いようではあるが。
「そ、そうなんだ」
美崎は素直に納得するしかなかった。根掘り葉掘り聞くのもオカシイ。確かに、二人はベタベタしている様子もない。
しかし、次の瞬間。
久隆は頭を下げたと思ったら、
「行こう、聖」
と下の名前で大里のことを呼んだのである。
──は?
今、なんと?
【大崎久隆】と言えば無口、名前すら呼ばないので有名。
噂によれば、外部生だからとイジメに遭っていた【片倉と霧島】に対しては、周りに牽制の意味を込め苗字ではなく名前で呼んでいると聞いたことはある。だがその彼が大里を下の名前で呼んだのだ。
二人は幼馴染みでもあるので驚くべきことではないのかもしれないが、一度だって親し気に『聖』と名前を呼んでいるところを見たことがない。
「あ、いや三人その、デートなんで!」
大里は余計にわけのわからない言葉を残し、久隆を追いかけ去って行った。
──ど、どうなってるの?
大崎には恋人がいて、大里も黒川といつもイチャイチャしていて……。
そもそも大里が黒川と一緒にいるのは、大崎と上手くいかないからだと思っていたのに。
「優也」
呼ばれて鶴城の方に目を向けると、腕を掴まれ壁際に連れていかれる。まさか、こんなところで襲われたりしないよなと青ざめたが、どうやらそうではなかった。
「ボタン、かけ違えてる」
周りから見えないように立ち美崎のシャツのボタンを直していく彼を、じっと見あげていた。
慎が傍にいると、落ち着く。
捨てられるのが怖い。
「慌て追って来てくれたんだな」
鶴城はため息混じりにそう零す。呆れられているのかもしれないと思い、美崎はまた落ち込む。
──何かある度こうやって慎が離れたら、その都度俺は不安になってしまう。
俺たちって、相性悪いんじゃないのかな。
「ごめん、優也」
不意に抱き締められる。欲しかった温もりに、美崎は泣きそうになった。
「怖いよ、慎」
絞り出すように告げる。今、伝えなきゃダメだと思った。
「え?」
「慎に愛想つかされるんじゃないかって、怖くてたまらないんだ」
──いつか捨てられるくらいなら、いっそ。
怯えて側にいるくらいなら別れた方が……。
「まさか別れたいとか言わないよな?」
美崎が何かいう前に予防線を張られてしまう。
「俺は優也と別れたくない。だから婚約したいのに変なこと言わないでくれよ、な?」
「だって!」
思わず、声高になってしまい焦る。
「慎、一人でどっか行くし」
こんな言い方ではなく“側にいて”って言えない自分にまた自己嫌悪だ。
「ごめん、もう一人で行かないから」
美崎を抱き締める鶴城の腕に力が入り、
「頼むから別れるとか言わないでくれよ」
と懇願された。
「ずっと、優也と一緒に居たいんだよ」
──こんな、俺と?
可愛くない言い方しか出来ないのに。
慎の思い通りにならない俺なのに?
「さっきは、ごめん。あのまま側に居たら優也に酷いことしそうで、怖くなったんだ」
「俺、慎に嫌われたのかなって」
「嫌ったりなんてしない。優也が好きで、好きすぎて不安で堪らないんだ」
こんな自信家に見える鶴城が不安を抱えているということに、美崎は驚く。
「返事、ちゃんと待つから。だから、さ」
「うん」
そこで美崎はやっと安心する。
その表情を見て鶴城も安堵の表情を浮かべ、
「飯、行こう」
と、美崎の手を引きエレベーターへと向かうのだった。
「え? なんで……」
思わず出てしまった美崎の言葉に怪訝そうな顔をしたのはトイレから出てきた【大崎久隆】である。
K学園では二大セレブの片割れと言われる大崎家の次男であり、圭一の弟。彼の父は大崎グループの社長。
──なんで大里と大崎が一緒にホテルに?!
確か大崎って恋人いたよな?
しかも二人は今世間を騒がせている“泥沼の三角関係”ってやつじゃ……。
「変なことをしに入ったわけじゃないですよ。上のレストランで飯食っただけで」
大里は慌て誤解を解こうとするが、久隆は何も言わなかった。彼は口下手らしく、あまり話すところを見たことがない。もっとも泥沼の三角関係の渦中にある三人目、【片倉葵】とは仲が良いようではあるが。
「そ、そうなんだ」
美崎は素直に納得するしかなかった。根掘り葉掘り聞くのもオカシイ。確かに、二人はベタベタしている様子もない。
しかし、次の瞬間。
久隆は頭を下げたと思ったら、
「行こう、聖」
と下の名前で大里のことを呼んだのである。
──は?
今、なんと?
【大崎久隆】と言えば無口、名前すら呼ばないので有名。
噂によれば、外部生だからとイジメに遭っていた【片倉と霧島】に対しては、周りに牽制の意味を込め苗字ではなく名前で呼んでいると聞いたことはある。だがその彼が大里を下の名前で呼んだのだ。
二人は幼馴染みでもあるので驚くべきことではないのかもしれないが、一度だって親し気に『聖』と名前を呼んでいるところを見たことがない。
「あ、いや三人その、デートなんで!」
大里は余計にわけのわからない言葉を残し、久隆を追いかけ去って行った。
──ど、どうなってるの?
大崎には恋人がいて、大里も黒川といつもイチャイチャしていて……。
そもそも大里が黒川と一緒にいるのは、大崎と上手くいかないからだと思っていたのに。
「優也」
呼ばれて鶴城の方に目を向けると、腕を掴まれ壁際に連れていかれる。まさか、こんなところで襲われたりしないよなと青ざめたが、どうやらそうではなかった。
「ボタン、かけ違えてる」
周りから見えないように立ち美崎のシャツのボタンを直していく彼を、じっと見あげていた。
慎が傍にいると、落ち着く。
捨てられるのが怖い。
「慌て追って来てくれたんだな」
鶴城はため息混じりにそう零す。呆れられているのかもしれないと思い、美崎はまた落ち込む。
──何かある度こうやって慎が離れたら、その都度俺は不安になってしまう。
俺たちって、相性悪いんじゃないのかな。
「ごめん、優也」
不意に抱き締められる。欲しかった温もりに、美崎は泣きそうになった。
「怖いよ、慎」
絞り出すように告げる。今、伝えなきゃダメだと思った。
「え?」
「慎に愛想つかされるんじゃないかって、怖くてたまらないんだ」
──いつか捨てられるくらいなら、いっそ。
怯えて側にいるくらいなら別れた方が……。
「まさか別れたいとか言わないよな?」
美崎が何かいう前に予防線を張られてしまう。
「俺は優也と別れたくない。だから婚約したいのに変なこと言わないでくれよ、な?」
「だって!」
思わず、声高になってしまい焦る。
「慎、一人でどっか行くし」
こんな言い方ではなく“側にいて”って言えない自分にまた自己嫌悪だ。
「ごめん、もう一人で行かないから」
美崎を抱き締める鶴城の腕に力が入り、
「頼むから別れるとか言わないでくれよ」
と懇願された。
「ずっと、優也と一緒に居たいんだよ」
──こんな、俺と?
可愛くない言い方しか出来ないのに。
慎の思い通りにならない俺なのに?
「さっきは、ごめん。あのまま側に居たら優也に酷いことしそうで、怖くなったんだ」
「俺、慎に嫌われたのかなって」
「嫌ったりなんてしない。優也が好きで、好きすぎて不安で堪らないんだ」
こんな自信家に見える鶴城が不安を抱えているということに、美崎は驚く。
「返事、ちゃんと待つから。だから、さ」
「うん」
そこで美崎はやっと安心する。
その表情を見て鶴城も安堵の表情を浮かべ、
「飯、行こう」
と、美崎の手を引きエレベーターへと向かうのだった。
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