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━3章【正反対の二人】━

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 ****♡Side・美崎

 後悔はしていない。彼の気持ちは充分わかったし、この先離れる時間が増え、不安なのは自分も一緒。
「このお守り、ネコ型なんだな」
「うん、珍しいでしょ」
 と、美崎。二人はここらで有名な、うなぎ屋に向かっている。旅の思い出の一つにするつもりで。
「戻ったら、選挙戦だね」
 鶴城は、K学園高等部の来年度生徒会長に立候補している。
「ああ」
「K学の掲示板では、ほぼ確定だけれど」
「みんな、K学の闇ルールを無くしたいって思ってるんだよ」
 二人の通うK学園には闇ルールというものが存在している。それは付属の初等部から高等部にかけてだ。

 初等部で、あるいじめがあり、それに怒りを覚えた大里グループ社長の末っ子が、作ったものだ。彼はK学園では有名な二大セレブの片割れ。しかも、モデル体型で容姿端麗。成績もよく、人望もある。表向きは王様ではないが、実質的なK学園の王様的な立場にあった。その為、そのルールの浸透は早く、恐れた者も多い。彼は、幼稚園からK学園に在籍する内部生、それ以外の時期から入って来る外部生との確執を断ちたかったのだ。たった一人の大切な人を守るために。しかし今、彼らはそんなK学園を変えようとしてる。自らの手で。

 K学園から、理不尽ないじめと闇ルールを無くそうとしているのだ。外部生も内部生も同じ生徒、仲良くしようよと。だが、いがみ合っているのは、ほんの一部なのだ。実際には、外部生と内部生同士の恋人関係、友人関係は多く存在している。彼らは、ずっと肩身の狭い想いをしてきた。だからこそ、その考えに賛同する者が多くいるのは当然。
「K学変わると良いな」
 と美崎は小さく笑う。自分は来年は高等部にはいない。結果を見ることなく卒業してしまう。

「俺たちが、何代にも渡って築き上げてきた生徒会だろ」
 去年、一昨年と【大崎圭一】が学園を変えようと頑張って来た。自分たちはそれを見て、その気持ちに賛同し、生徒会と風紀という部署は違うけれど協力して頑張ってきたのだから他人事みたいに言うなよ、と彼は言う。
「そうだな」
 圭一は、
『一人一人は小さな力しかないかもしれない。でも協力し合えば必ず大きな力になるから、諦めんな』
 そう残してK学園高等部を卒業していった。あれから一年。自分は、何かを残せたのだろうか。
「優也、泣くなよ」
 どうして涙が溢れるのだろう。

 ──去年は、楽しかったな。

 あの頃はまだ、鶴城とは恋人ではなかったが尊敬する先輩たちが居て、好きな人が近くにいて、とても幸せな時間だと思えた。
「慎」
「ん?」
 肩に添えられた手が温かい。
「先に行って待ってるからさ」
 と美崎。しかし、
「そんな、死ぬときみたいな言い方はやめてくれよ」
「は?」
 感動のワンシーンが台無しになったのだった。
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