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━2章【不器用な二人】━
6『様子がオカシイ理由』
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****♡Side・美崎(風紀委員長)
翌朝。
十時ごろから観光へ出かけようと、鶴城が言うので。美崎がロビーにある土産物屋でお土産を物色していると、程なくして彼がやって来た。
「そんなに買うのか? ネコの人形焼き」
と、美崎の手元を覗き込み、彼はペアのマグカップを手に取る。
「うん。風紀委員のみんなにと、大崎先輩と白石に」
彼は白石という名前を出した途端、変な顔をした。
「妬いてたくせに、買ってくんだ」
それは白石が鶴城に電話をしてきたことを指している。
「それとこれは別」
「ふーん。優しいことで」
抑揚のない声でそう言うと彼は、
「俺、これ買うわ」
とネコのマグカップを掲げてみせる。
「お土産?」
「そ、大崎先輩に」
どうやら、ここのチケットのお礼らしい。
「優也は要らないだろ? うちにあるし」
「そうだけど……」
彼が買ってくれるなら、なんでも嬉しいと思ってしまう自分がいる。だが、そんなこと言えるわけもない。婚約に返事もせず、甘え続けることは良心が痛む。
「うちには、これにしようぜ」
まるで気持ちを汲んでくれたように、彼は黒猫のペアの箸置きに手を伸ばす。美崎は思わず、目を輝かせた。
「なんだよ、ほんとにネコ好きなんだな」
「だって、この箸置き可愛いし」
と目をキラキラさせ彼の手元を見つめていると、ぐいっと腰を引かれ、
「優也のほうがよっぽど可愛いよ」
と、言われてしまう。
「何言ってるんだよ、もう」
美崎は真っ赤になって、彼の胸を押し返す。
「ま、いいや」
と笑う彼。
そう言えば、朝起きた時からなんだか様子が変だ。昨日、自分が寝た後、何かあったのだろうか。
「慎」
「ん? どした」
レジに向かおうとした彼を思わず引き留める、美崎。
「あ、あのさ。昨日あの後何かあった?」
「な……何かって?」
美崎の質問に、彼の顔が引きつる。
──やっぱり、何かあったのか?
「浮気、してる?」
彼が変な態度を取るのがどうにも引っ掛かった。確かに、昨日の夜までは何もなかった。いつも通りだったのだ。チャンスがあるとすれば、自分が寝てから起きるまで。
だが、
「は?」
と言われてしまう。誤魔化しているというわけではなく、自然に出た”は?”だったようだ。
「朝っぱらから変な事言うなよ。旅行中に浮気とか、サスペンスじゃあるまいし」
と、笑う彼。
浮気という線は消えたが違和感は抜けない。
「俺は、一生優也一筋だから」
と、急に真面目な顔をして言う。
「だから、婚約のこと本気で考えて」
藪蛇だったようである。
しかし、
「うん」
と、美崎は返事をしてしまっていたのだった。
翌朝。
十時ごろから観光へ出かけようと、鶴城が言うので。美崎がロビーにある土産物屋でお土産を物色していると、程なくして彼がやって来た。
「そんなに買うのか? ネコの人形焼き」
と、美崎の手元を覗き込み、彼はペアのマグカップを手に取る。
「うん。風紀委員のみんなにと、大崎先輩と白石に」
彼は白石という名前を出した途端、変な顔をした。
「妬いてたくせに、買ってくんだ」
それは白石が鶴城に電話をしてきたことを指している。
「それとこれは別」
「ふーん。優しいことで」
抑揚のない声でそう言うと彼は、
「俺、これ買うわ」
とネコのマグカップを掲げてみせる。
「お土産?」
「そ、大崎先輩に」
どうやら、ここのチケットのお礼らしい。
「優也は要らないだろ? うちにあるし」
「そうだけど……」
彼が買ってくれるなら、なんでも嬉しいと思ってしまう自分がいる。だが、そんなこと言えるわけもない。婚約に返事もせず、甘え続けることは良心が痛む。
「うちには、これにしようぜ」
まるで気持ちを汲んでくれたように、彼は黒猫のペアの箸置きに手を伸ばす。美崎は思わず、目を輝かせた。
「なんだよ、ほんとにネコ好きなんだな」
「だって、この箸置き可愛いし」
と目をキラキラさせ彼の手元を見つめていると、ぐいっと腰を引かれ、
「優也のほうがよっぽど可愛いよ」
と、言われてしまう。
「何言ってるんだよ、もう」
美崎は真っ赤になって、彼の胸を押し返す。
「ま、いいや」
と笑う彼。
そう言えば、朝起きた時からなんだか様子が変だ。昨日、自分が寝た後、何かあったのだろうか。
「慎」
「ん? どした」
レジに向かおうとした彼を思わず引き留める、美崎。
「あ、あのさ。昨日あの後何かあった?」
「な……何かって?」
美崎の質問に、彼の顔が引きつる。
──やっぱり、何かあったのか?
「浮気、してる?」
彼が変な態度を取るのがどうにも引っ掛かった。確かに、昨日の夜までは何もなかった。いつも通りだったのだ。チャンスがあるとすれば、自分が寝てから起きるまで。
だが、
「は?」
と言われてしまう。誤魔化しているというわけではなく、自然に出た”は?”だったようだ。
「朝っぱらから変な事言うなよ。旅行中に浮気とか、サスペンスじゃあるまいし」
と、笑う彼。
浮気という線は消えたが違和感は抜けない。
「俺は、一生優也一筋だから」
と、急に真面目な顔をして言う。
「だから、婚約のこと本気で考えて」
藪蛇だったようである。
しかし、
「うん」
と、美崎は返事をしてしまっていたのだった。
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