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━2章【不器用な二人】━
1.5『可愛い彼に強引な約束』
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****♡side・鶴城
美崎は茶碗セットの入った袋を抱え嬉しそうに隣を歩いている。
鶴城はそれを穏やかな笑みを浮かべ見下ろしていた。
──優也、可愛い。
最近凄く可愛いんだよなぁ。
美崎の髪に触れると彼は不思議そうにこちらに目を向ける。鶴城は口元を綻ばせそんな彼を見つめた。
「紺で良かった?」
「えっ! う、うん」
美崎本人は、自分は可愛くないなどと言うが無自覚なだけ。いつも素直になれなくて、そんな自分自身が嫌でしょんぼりする彼。バレていないと思っているだろうが、鶴城ですら気づくほどわかりやすい。
しっかりと繋いだ手。左手の薬指に光る指輪。
鶴城は二十歳になったら、彼と結婚したいと考えていた。その時はまだ学生ではあるけれど。今はやっと付き合うことを承諾してくれ、同棲を始めたばかり。
しかし鶴城は、彼とは死ぬまで一緒に居たい、そんな風に思っている。
──こんなに好きになるなんて思ってもいなかった。
「優也」
「なに……?」
「ここ、入ろう?」
それは大崎グループ系列の高級ホテルで。
「え? だって……」
口ごもる彼。行き先はラブホテルだと思っていたのだろうか。驚きに目を見開く。
「予約してあるから、大丈夫だよ」
自分にとっても彼にとっても先輩であり大崎グループの社長の息子でもある”大崎 圭一”を通し、先ほどここに予約を入れていた。
「え?」
ほんの十数分前の話である。
「入ろう、映画よりも素敵なものが見られるよ」
美崎の手を引き中に入っていくと、ホテルマンが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました」
食事は部屋と展望レストランのどちらでとるか聞かれ、レストランを選んだ。この時間なら夜景が綺麗なはず。まずはルームキーを受け取り、エレベーターに乗り込む。美しいエレベーターガールが案内をしてくれたのだが、彼はヤキモチを妬いたのかぎゅっと握った手に力を込める。
鶴城はそんな彼が愛しかった。
**・**
「わぁ」
部屋に入ると美崎が嬉しそうな声をあげる。部屋に入ると全面ガラスばりのリビングが広がっていた。電気を点けなかったため、まるで窓一面がパノラマのように感じるほど夜景が浮かび上がり綺麗だ。目を輝かせ窓に貼り付く彼が可愛い。
「気に入ってくれた?」
「え? うん」
彼はキラキラした目をそのまま鶴城に向けた。
──くそ可愛いじゃねえかあああ! おい。
「優也」
鶴城は彼の名を呼び、その腕を掴む。
「うん?」
「ずっとさ、大事にするから」
美崎の瞳が揺れる。鶴城は彼のその髪に手を差し入れ、親指の腹で耳を撫でた。
「一生、側にいてよ」
彼は鶴城の言葉にゆっくりと両腕を伸ばす。
──ああ……。
好きだ、好き。
たまらん!
「え?」
鶴城は、ゆっくりと抱きつこうとしていた美崎をさっと抱き上げ、月明かりと夜景の光のなか隣の寝室へ向かう。
「結婚、してくれるよな?」
「慎、まッ……」
「夕食の前に優也が欲しい」
美崎が照れたような困った表情をする。そんな姿に我慢ができなくなった鶴城は彼に覆い被さると優しく口づけた。
「いつも、強引」
ぽつりと溢した彼は、怒っているわけでは無さそうで。鶴城は調子に乗る。首筋に吸い付きながら、彼の服に手をかけた。
「答え、聞かせて」
鶴城は強引にでも、結婚の約束を交わそうとしていたのだった。
美崎は茶碗セットの入った袋を抱え嬉しそうに隣を歩いている。
鶴城はそれを穏やかな笑みを浮かべ見下ろしていた。
──優也、可愛い。
最近凄く可愛いんだよなぁ。
美崎の髪に触れると彼は不思議そうにこちらに目を向ける。鶴城は口元を綻ばせそんな彼を見つめた。
「紺で良かった?」
「えっ! う、うん」
美崎本人は、自分は可愛くないなどと言うが無自覚なだけ。いつも素直になれなくて、そんな自分自身が嫌でしょんぼりする彼。バレていないと思っているだろうが、鶴城ですら気づくほどわかりやすい。
しっかりと繋いだ手。左手の薬指に光る指輪。
鶴城は二十歳になったら、彼と結婚したいと考えていた。その時はまだ学生ではあるけれど。今はやっと付き合うことを承諾してくれ、同棲を始めたばかり。
しかし鶴城は、彼とは死ぬまで一緒に居たい、そんな風に思っている。
──こんなに好きになるなんて思ってもいなかった。
「優也」
「なに……?」
「ここ、入ろう?」
それは大崎グループ系列の高級ホテルで。
「え? だって……」
口ごもる彼。行き先はラブホテルだと思っていたのだろうか。驚きに目を見開く。
「予約してあるから、大丈夫だよ」
自分にとっても彼にとっても先輩であり大崎グループの社長の息子でもある”大崎 圭一”を通し、先ほどここに予約を入れていた。
「え?」
ほんの十数分前の話である。
「入ろう、映画よりも素敵なものが見られるよ」
美崎の手を引き中に入っていくと、ホテルマンが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました」
食事は部屋と展望レストランのどちらでとるか聞かれ、レストランを選んだ。この時間なら夜景が綺麗なはず。まずはルームキーを受け取り、エレベーターに乗り込む。美しいエレベーターガールが案内をしてくれたのだが、彼はヤキモチを妬いたのかぎゅっと握った手に力を込める。
鶴城はそんな彼が愛しかった。
**・**
「わぁ」
部屋に入ると美崎が嬉しそうな声をあげる。部屋に入ると全面ガラスばりのリビングが広がっていた。電気を点けなかったため、まるで窓一面がパノラマのように感じるほど夜景が浮かび上がり綺麗だ。目を輝かせ窓に貼り付く彼が可愛い。
「気に入ってくれた?」
「え? うん」
彼はキラキラした目をそのまま鶴城に向けた。
──くそ可愛いじゃねえかあああ! おい。
「優也」
鶴城は彼の名を呼び、その腕を掴む。
「うん?」
「ずっとさ、大事にするから」
美崎の瞳が揺れる。鶴城は彼のその髪に手を差し入れ、親指の腹で耳を撫でた。
「一生、側にいてよ」
彼は鶴城の言葉にゆっくりと両腕を伸ばす。
──ああ……。
好きだ、好き。
たまらん!
「え?」
鶴城は、ゆっくりと抱きつこうとしていた美崎をさっと抱き上げ、月明かりと夜景の光のなか隣の寝室へ向かう。
「結婚、してくれるよな?」
「慎、まッ……」
「夕食の前に優也が欲しい」
美崎が照れたような困った表情をする。そんな姿に我慢ができなくなった鶴城は彼に覆い被さると優しく口づけた。
「いつも、強引」
ぽつりと溢した彼は、怒っているわけでは無さそうで。鶴城は調子に乗る。首筋に吸い付きながら、彼の服に手をかけた。
「答え、聞かせて」
鶴城は強引にでも、結婚の約束を交わそうとしていたのだった。
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