28 / 52
━1章【HAPPY ENDには程遠い】━
11-1 愛されたい【R】
しおりを挟む
****♡side・美崎
脇腹を撫で上げ鎖骨に吸い付く鶴城が美崎の瞳に映り、
「灯り、消してやるから」
“もっと乱れて、俺のために”と囁く。
鶴城が自分に何を求めているのかまったくわからないまま、彼が後ろに手を伸ばし室内の明かりを絞っていくのを美崎は見つめていた。
──欲しいもの、全部あげたら
もっと愛してくれる?
「まこと」
キスが欲しくて鶴城の背中に手を伸ばす。
「んんッ」
欲しいものをすぐに与えられ、絞った間接照明の柔らかな光の中で美崎は潤んだ瞳を彼に向けた。身体の奥に確かな彼の情熱を感じながら。
「やんッ」
美崎は強く腕を引かれて対面騎乗位にさせられ、不安になる。
「腰振って」
「いやッ」
「大丈夫だから、ほら」
うなじに舌が這い、美崎はビクッと身体を震わせた。身体を駆け抜ける快感。
「んッ……ああ……」
鶴城の首に両腕を絡ませ腰を上下に動かせば、静かな部屋にプチゅプチゅッと彼のものが美崎の奥に出はいりする卑猥な音が響く。
「ああ……んッ」
喘ぎ声の間に彼に何度も口づけされ、快楽に落とされていく。
「まこと……慎ッ」
美崎はうわ言のように、何度も愛しい男の名を呼んだ。
「優也、綺麗だよ」
──彼に必死にしがみつくのは、何から振り落とされないためなのだろうか?
もっと、愛されたい。
狂気のような、その愛で。
「あああッ」
「前も触ってあげるよ、優也」
「ダメぇッ……」
首を横に振れば、美崎の潤んだ瞳から涙が転げ落ちた。
「怖くないよ、大丈夫」
「まことぉ……一緒に堕ちて……」
「いいよ、どこまでも堕ちてやる」
「ああああッ」
激しく突き上げられ、耐え難い激情の波が美崎を襲う。
「一緒にいこう、優也」
****
情事のあと、美崎は気を失うかのように力尽き眠っていた。
──この、絶倫男めッ。
でも好き。
ああ、末期だ。
美崎はベッドにうつ伏せになり頬杖をつくと、この自分限定”万年発情期男”を恨めしげに見つめた。恋の病とはいうが、重病人だと自分自身を心のなかで揶揄する。
シュッとした輪郭、意思の強そうな眉。
自分を愛しそうに見つめるあの情熱的な瞳。
筋肉質だけど、ほどよい体型。
あの声。
「で、なにやってんだ?」
ついに美崎は、スマホを見つめ何かしている鶴城に不機嫌そうに声をかけた。
「何って、大崎先輩に報告」
「ふーん」
美崎は上体を起こし、彼がヘッドボードに置いてくれたペットボトルの水を取り上げ、キャップを捻る。
──何時だよ。
お腹すいたなぁ……。
その前に、シャワーしなきゃな。
「ラブラブになれましたって」
ぼんやりと考え事をしながらベットボトルの飲み口を口元に充てていたが彼の言葉に美崎は、
「ぶっ!」
と思わず水を吹いた。
「はぁっ?!」
鶴城は満面の笑みを浮かべ画面を見せてくるが、
「なっ! なんだよ、これ」
美崎は添付した写真を見つめ鶴城に抗議した。どうやら美崎が寝ている時に撮ったらしく、ベッドに寝っ転がった鶴城が自分を胸に抱き寄せ、自撮りしている。
「ラブラブ写メ」
「裸……」
「問題ないだろ、どうせ布団被せてるし」
鶴城はニコニコしているが、そういう問題ではない。どうみてもヤっちゃった後写真だ。言うなればサスペンスの浮気現場の写真のような。
「なんでそうなの…」
「いいだろ! 自慢したいんだからっ。優也は俺のだって」
美崎はため息をつく。
──大崎先輩に自慢して、どーすんの。
相変わらず、わけわかんない独占欲。
「優也は俺のなんだから……」
「?」
押し殺した声で鶴城が言うので、思わずそちらに視線を移して美崎はギョッとする。
「な、なんで泣きそうなんだよ⁉」
「うるさい。感極まったんだ。ちくしょー」
──なんだ、この猿……。
**・**
美崎は脱衣場で一端歩みを止めると、振り返った。
「なんで付いてくるんだよ」
背後に鶴城。
「一緒に入ろうや」
「え、なんで」
鶴城の言葉に嫌な顔をしてそう返す。
「ホテルでも一緒に入らないなんて!」
大袈裟にムンクの叫びの真似をする彼に“こんなヤツだったっけ?”とシラーっと視線を向けた。
──鶴城ってもっとさ……。
……ヤバい、襲われた記憶しかない。
そうだ、こんなヤツだよ。
万年発情期めッ。
「優也ー。な? 入ろう? イチャイチャしようやー」
”イチャイチャ……”と、美崎は反復する。
──イチャイチャなんかで済むわけなかろう?!
絶倫男がッ。
このままヤり殺されるに決まってる。
俺は、腹が減ったんだッ。
却下、却下。
「腹減ったから、パス」
「ええええ?!」
なにその理由、と彼は不服そうだ。
「あ、じゃあさ大崎グループ系列の高級レストラン連れてっちゃる」
──な、なんだって!?
ここから近いとなると……。
美崎は顎に手をやり、周辺の地図を思い浮かべ、
「ステーキ?!」
とテンションが上がった。
「そそ、高級ブランド肉食わせちゃる」
「慎、すきーっ」
美崎は牛肉には目がない。
その中でもステーキが大好きで人が変わったようにはしゃぐ美崎に、鶴城はニンマリする。
「早く! 肉」
「肉?」
「違った、慎」
名前すら間違える喜びっぷりに鶴城は困惑した。
美崎は気にせず、腰に巻いていたタオルを取ると浴室に入っていく。
「優也はそんなにステーキが好きだったのか……」
鶴城はなんだか複雑な気持ちになっていたのだった。
脇腹を撫で上げ鎖骨に吸い付く鶴城が美崎の瞳に映り、
「灯り、消してやるから」
“もっと乱れて、俺のために”と囁く。
鶴城が自分に何を求めているのかまったくわからないまま、彼が後ろに手を伸ばし室内の明かりを絞っていくのを美崎は見つめていた。
──欲しいもの、全部あげたら
もっと愛してくれる?
「まこと」
キスが欲しくて鶴城の背中に手を伸ばす。
「んんッ」
欲しいものをすぐに与えられ、絞った間接照明の柔らかな光の中で美崎は潤んだ瞳を彼に向けた。身体の奥に確かな彼の情熱を感じながら。
「やんッ」
美崎は強く腕を引かれて対面騎乗位にさせられ、不安になる。
「腰振って」
「いやッ」
「大丈夫だから、ほら」
うなじに舌が這い、美崎はビクッと身体を震わせた。身体を駆け抜ける快感。
「んッ……ああ……」
鶴城の首に両腕を絡ませ腰を上下に動かせば、静かな部屋にプチゅプチゅッと彼のものが美崎の奥に出はいりする卑猥な音が響く。
「ああ……んッ」
喘ぎ声の間に彼に何度も口づけされ、快楽に落とされていく。
「まこと……慎ッ」
美崎はうわ言のように、何度も愛しい男の名を呼んだ。
「優也、綺麗だよ」
──彼に必死にしがみつくのは、何から振り落とされないためなのだろうか?
もっと、愛されたい。
狂気のような、その愛で。
「あああッ」
「前も触ってあげるよ、優也」
「ダメぇッ……」
首を横に振れば、美崎の潤んだ瞳から涙が転げ落ちた。
「怖くないよ、大丈夫」
「まことぉ……一緒に堕ちて……」
「いいよ、どこまでも堕ちてやる」
「ああああッ」
激しく突き上げられ、耐え難い激情の波が美崎を襲う。
「一緒にいこう、優也」
****
情事のあと、美崎は気を失うかのように力尽き眠っていた。
──この、絶倫男めッ。
でも好き。
ああ、末期だ。
美崎はベッドにうつ伏せになり頬杖をつくと、この自分限定”万年発情期男”を恨めしげに見つめた。恋の病とはいうが、重病人だと自分自身を心のなかで揶揄する。
シュッとした輪郭、意思の強そうな眉。
自分を愛しそうに見つめるあの情熱的な瞳。
筋肉質だけど、ほどよい体型。
あの声。
「で、なにやってんだ?」
ついに美崎は、スマホを見つめ何かしている鶴城に不機嫌そうに声をかけた。
「何って、大崎先輩に報告」
「ふーん」
美崎は上体を起こし、彼がヘッドボードに置いてくれたペットボトルの水を取り上げ、キャップを捻る。
──何時だよ。
お腹すいたなぁ……。
その前に、シャワーしなきゃな。
「ラブラブになれましたって」
ぼんやりと考え事をしながらベットボトルの飲み口を口元に充てていたが彼の言葉に美崎は、
「ぶっ!」
と思わず水を吹いた。
「はぁっ?!」
鶴城は満面の笑みを浮かべ画面を見せてくるが、
「なっ! なんだよ、これ」
美崎は添付した写真を見つめ鶴城に抗議した。どうやら美崎が寝ている時に撮ったらしく、ベッドに寝っ転がった鶴城が自分を胸に抱き寄せ、自撮りしている。
「ラブラブ写メ」
「裸……」
「問題ないだろ、どうせ布団被せてるし」
鶴城はニコニコしているが、そういう問題ではない。どうみてもヤっちゃった後写真だ。言うなればサスペンスの浮気現場の写真のような。
「なんでそうなの…」
「いいだろ! 自慢したいんだからっ。優也は俺のだって」
美崎はため息をつく。
──大崎先輩に自慢して、どーすんの。
相変わらず、わけわかんない独占欲。
「優也は俺のなんだから……」
「?」
押し殺した声で鶴城が言うので、思わずそちらに視線を移して美崎はギョッとする。
「な、なんで泣きそうなんだよ⁉」
「うるさい。感極まったんだ。ちくしょー」
──なんだ、この猿……。
**・**
美崎は脱衣場で一端歩みを止めると、振り返った。
「なんで付いてくるんだよ」
背後に鶴城。
「一緒に入ろうや」
「え、なんで」
鶴城の言葉に嫌な顔をしてそう返す。
「ホテルでも一緒に入らないなんて!」
大袈裟にムンクの叫びの真似をする彼に“こんなヤツだったっけ?”とシラーっと視線を向けた。
──鶴城ってもっとさ……。
……ヤバい、襲われた記憶しかない。
そうだ、こんなヤツだよ。
万年発情期めッ。
「優也ー。な? 入ろう? イチャイチャしようやー」
”イチャイチャ……”と、美崎は反復する。
──イチャイチャなんかで済むわけなかろう?!
絶倫男がッ。
このままヤり殺されるに決まってる。
俺は、腹が減ったんだッ。
却下、却下。
「腹減ったから、パス」
「ええええ?!」
なにその理由、と彼は不服そうだ。
「あ、じゃあさ大崎グループ系列の高級レストラン連れてっちゃる」
──な、なんだって!?
ここから近いとなると……。
美崎は顎に手をやり、周辺の地図を思い浮かべ、
「ステーキ?!」
とテンションが上がった。
「そそ、高級ブランド肉食わせちゃる」
「慎、すきーっ」
美崎は牛肉には目がない。
その中でもステーキが大好きで人が変わったようにはしゃぐ美崎に、鶴城はニンマリする。
「早く! 肉」
「肉?」
「違った、慎」
名前すら間違える喜びっぷりに鶴城は困惑した。
美崎は気にせず、腰に巻いていたタオルを取ると浴室に入っていく。
「優也はそんなにステーキが好きだったのか……」
鶴城はなんだか複雑な気持ちになっていたのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる