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━1章【HAPPY ENDには程遠い】━
6.5 名前
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****♡side・鶴城
「鶴城くんって、下の名前慎って言うんだー」
「え? ああ」
鶴城が生徒会室で帰り支度をしていたら、来年風紀委員長になるらしい【白石風花】が挨拶に来たのだが。何故か馴れ馴れしい。
「慎って呼んでもいい?」
それは彼女からの突然の打診。
「は?」
鶴城はただ漠然と嫌な予感がした。
理由はよく分からないが、彼女の馴れ馴れしさに好意ではなく悪意を感じるのだ。白石は同級生。風紀委員と生徒会役員は合同で校内の見回りをする為、よく顔を合わせる。だから見知った仲ではあるのだが。
「いや、ダメだよ」
彼女の兄である”白石先輩”については良く知っていた。
K学園には中、高、大学部の生徒会と学生会で作られた裏掲示板というものがある。ログインするためには学生学生が必要な治安は良いSNS。そこには学生の投票で決まる、学内押し活の定番とも言える『学内イケメンランキングやモテランキング』というものが存在し、白石先輩こと【白石奏斗】はそのランキングの常連。名前だけなら知っているというK学生も多くいた。
彼はいろんな噂を流されているようで、見た目は軽い感じがするがとても真面目な人だった。確か他校に彼女がいたという噂を聞いたことがある。とても清い交際をしていたのだとか。鶴城とは大違いである。
ただ、受験間近に喧嘩別れをし、その後荒れていたことも知っていた。かといって不良になるというわけでもなく、それまで彼女一筋だったのが色んな人と遊び歩くようになった程度のこと。
『クールなイケメンでもともとモテてはいたが、以前にもましてモテるようになった』という話も人づてに聞いた。
「どうして? 来年は協力して学園の生徒を守っていくんだし仲良くしたほうがお互いの為だと思うの」
──長い演説だな。
言っていることは普通だが、刺々しさを感じる。
「だから、慎。いいでしょ?」
「やめろって」
こんなところ誰かに見られたら面倒だなと思っていたのだが。
「じゃあ、くんつけるから。慎……」
生徒会室のドアが開き、鶴城は白石の狙いが何なのかに気づく。
「慎くん」
”わざとだ”と鶴城は思った。
ドアを開けた美崎と目が合う。白石は彼に誤解をさせようとしている。
「鶴城、帰るぞ」
聞こえたのか聞こえなかったのか、美崎はそのことについて何も言わない。
「ああ……」
鶴城はカバンを掴むと席を立とうとするが、
『美崎先輩、顔色一つ変えないのね』
と、白石にそっと囁かれ思わず彼女の方を見る。
鶴城は血の気が引いてゆくのを感じた。
『ねえ、諦めたら?』
白石はそう続けたのである。
「誰がっ」
「またね、慎くん」
彼女の蔑んだ瞳。悪寒。
「やめろ」
何故か鶴城は青ざめた。カバンを持つ手が心なしか震えている。
彼女は敵だ、頭の中で警報がなる。気をつけろと。
鶴城は知らなかったのだ、白石がバレンタインに美崎に告白していたことを。あの時どれほど自分が美崎を傷つけたのか、そのせいで白石に恨まれていることを。
──白石が怖い。
何を考えてる?
何をしようとしている?
「鶴城? どうしたんだ」
近づいて来た美崎は不思議そうに鶴城を見上げる。
「美崎、早く帰ろう」
鶴城は彼の手を掴むと引きずるように生徒会室を後にした。
一刻も早く彼女の元から離れなければ、そう思いながら。
「鶴城くんって、下の名前慎って言うんだー」
「え? ああ」
鶴城が生徒会室で帰り支度をしていたら、来年風紀委員長になるらしい【白石風花】が挨拶に来たのだが。何故か馴れ馴れしい。
「慎って呼んでもいい?」
それは彼女からの突然の打診。
「は?」
鶴城はただ漠然と嫌な予感がした。
理由はよく分からないが、彼女の馴れ馴れしさに好意ではなく悪意を感じるのだ。白石は同級生。風紀委員と生徒会役員は合同で校内の見回りをする為、よく顔を合わせる。だから見知った仲ではあるのだが。
「いや、ダメだよ」
彼女の兄である”白石先輩”については良く知っていた。
K学園には中、高、大学部の生徒会と学生会で作られた裏掲示板というものがある。ログインするためには学生学生が必要な治安は良いSNS。そこには学生の投票で決まる、学内押し活の定番とも言える『学内イケメンランキングやモテランキング』というものが存在し、白石先輩こと【白石奏斗】はそのランキングの常連。名前だけなら知っているというK学生も多くいた。
彼はいろんな噂を流されているようで、見た目は軽い感じがするがとても真面目な人だった。確か他校に彼女がいたという噂を聞いたことがある。とても清い交際をしていたのだとか。鶴城とは大違いである。
ただ、受験間近に喧嘩別れをし、その後荒れていたことも知っていた。かといって不良になるというわけでもなく、それまで彼女一筋だったのが色んな人と遊び歩くようになった程度のこと。
『クールなイケメンでもともとモテてはいたが、以前にもましてモテるようになった』という話も人づてに聞いた。
「どうして? 来年は協力して学園の生徒を守っていくんだし仲良くしたほうがお互いの為だと思うの」
──長い演説だな。
言っていることは普通だが、刺々しさを感じる。
「だから、慎。いいでしょ?」
「やめろって」
こんなところ誰かに見られたら面倒だなと思っていたのだが。
「じゃあ、くんつけるから。慎……」
生徒会室のドアが開き、鶴城は白石の狙いが何なのかに気づく。
「慎くん」
”わざとだ”と鶴城は思った。
ドアを開けた美崎と目が合う。白石は彼に誤解をさせようとしている。
「鶴城、帰るぞ」
聞こえたのか聞こえなかったのか、美崎はそのことについて何も言わない。
「ああ……」
鶴城はカバンを掴むと席を立とうとするが、
『美崎先輩、顔色一つ変えないのね』
と、白石にそっと囁かれ思わず彼女の方を見る。
鶴城は血の気が引いてゆくのを感じた。
『ねえ、諦めたら?』
白石はそう続けたのである。
「誰がっ」
「またね、慎くん」
彼女の蔑んだ瞳。悪寒。
「やめろ」
何故か鶴城は青ざめた。カバンを持つ手が心なしか震えている。
彼女は敵だ、頭の中で警報がなる。気をつけろと。
鶴城は知らなかったのだ、白石がバレンタインに美崎に告白していたことを。あの時どれほど自分が美崎を傷つけたのか、そのせいで白石に恨まれていることを。
──白石が怖い。
何を考えてる?
何をしようとしている?
「鶴城? どうしたんだ」
近づいて来た美崎は不思議そうに鶴城を見上げる。
「美崎、早く帰ろう」
鶴城は彼の手を掴むと引きずるように生徒会室を後にした。
一刻も早く彼女の元から離れなければ、そう思いながら。
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