R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
200 / 218
────8話*この手を離さないで

12・副社長と専務

しおりを挟む
****♡Side・板井(同僚)

「我が社の事情を調べていた板井君には改めて説明する必要はないと思うが、株原には二通りの人事がある」
 一つは人事部によるもの。もう一つは社長によるもの。
 後者は特殊であり、ある目的を持って行われるものだ。
 人事に関しては個々の会社によって方針は異なるとは思うが、配属に関しては社員が何らかの理由を持ち希望をするものと会社の決定によって決められるものがあると思う。それは我が社株原でも変わらない。
 だが我が社の社長による人事というのは非常に特殊で、今回のように私的な理由が絡んでいる場合が多い。

「君たち三人も社長自らスカウトを行った人材だが、皇副社長も同様に社長が自らスカウトを行った人材なんだよ」
 唯野は入社試験を通ったが、皇は是非にと招いたということなのだろう。だから相手を知った時期が異なり、初めから待遇も違っていたというのは想像に難くない。
「苦情係は確かに『唯野君を閉じ込めるための鳥かご』ではあるが、塩田君との出会いが結果的に苦情係を立ち上げるきっかけになっている」
 ”鳥かご”が苦情係だったのはたまたまということ。
「それって……」
「社長にとってはなんでも良かったんだよ。唯野君を傍に置けるなら」

 口実なんてなんでも良いとも受け取れるが、同時に唯野がなんでもできることを指していた。

「なあ、板井君」
「はい」
「君は何があっても唯野君の傍にいてあげられるの?」
「無論、何があっても別れるつもりはありません」
「そう。なら、覚悟しておくことだね」
 寂し気な専務の眼差し。
 彼の言う覚悟がなんなのか、板井にも想像はできた。

『唯野君は皇副社長を救うためなら、自己犠牲も厭わないだろう。それが彼自身を救う道でもあるから』
 帰り道の車の中で、板井は専務が言っていたことを反芻する。できれば穏便に解決したい案件だが、雲行きが怪しくなってきていた。

 社長が唯野に手を出さなかったのは自分の気持ちに無自覚だったこともあるだろうが、唯野が異性と婚姻した事実も関係しているようだ。
 だが唯野にとってはそうではない。
 皇が入社するまでは自分に対して特別扱いをしていた社長が、手のひらを返した。それどころか恋人にしたいという。
 自分には手を出さなかった彼が皇には違った。唯野が社長に対してどんな気持ちを抱いていたのか定かではないが、それなりにショックも受けたのではないかと思う。

 専務は黒岩を恨んでいた。彼が唯野につき合おうなどと言わなければ、唯野が元会長の標的にされることはなかった。それと同時に唯野は黒岩に気があると専務は感じていたようだ。
 それなのに、唯野が結婚をするとすぐに自分も籍を入れた。まるで当てつけのように。
『唯野君は認めないと思うが、彼は黒岩君のことが好きだったと思うよ』
 簡単に諦めるくらいなら唯野にそんなことを言うべきではないと専務は言った。

 黒岩に関しては何を考えているのかまったくわからない。
 この件に関して一度、話を聞くべきだとは思う。皇にしつこくしていたようだが、本当に皇に気があるのだろうか。
 何だか頭痛がしてきたなと思いながら、マンションのドアを開ける。
「おかえり」
 出迎えてくれた唯野にちゅっと口づけをすると、ぎゅっと抱きしめた。
「専務と話をしてきたんだって?」
「ええ」
 靴を脱ぎリビングへ向かう。唯野からも聞きたいことはあるが、まだ考えが纏まっていなかった。
「元気そうだった?」
「専務とならお会いになるのでは?」
 専務は社長のアドバイザー的な立場にある。それなら社長室で会うこともあるのではないかと思っていた。

「会う機会がないんだよね。もっとも……社長が良く思わないだろうし」
 よく思わない理由については唯野が理解しているようには見えない。だが今の板井にはその理由に見当がついていた。
「修二さん」
「うん?」
「何があっても俺の愛は変わりません」
「どうしたんだ、急に」
「覚えていて欲しいんです。この先、何があっても変わらないこと。そして疑わないで欲しい、俺の愛を」
 唯野は近い将来、最悪の選択をするだろう。けれども、この手は離さないと板井は心に誓ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...