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────8話*この手を離さないで
2・予感と確信【微R】
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****♡Side・副社長(皇)
『好きなタイプというのは存在するとは思うよ。でも、それは統計による結果論でしかない』
落ち込む皇に電車はそう言った。
『好かれる確証には繋がらないし、嫌われる理由にもならないんだよ』
続く言葉に皇が顔をあげると、彼は優しい目をしていたのだった。
塩田を襲った当時の自分は、彼に執着してしまうことに関して間違った認識があった。単純に、自分に見向きもしない彼が気に入らないからだと思っていたのだ。いつだって注目を浴びていたはずの自分に。
今なら十分すぎるくらい分かる。
彼には副社長の肩書も。
若くしてその座を手にしたことも。
見目が良くてちやほやされていることも。
どうでもいいことでしかなかった。
彼の興味はそんなことでは引けない。
塩田の心を動かすのは見た目の良さでも能力でも地位でもない。
真っ直ぐな心だけ。
──そんな彼の視界に入りたかったのだろう、自分は。
何度目か分からない口づけを交わしながら、彼に縋る。
初めからこうしてしていればよかったのだ。
自分の心と向きあって、何故こんなにも彼に執着してしまうのか。真剣に考えればよかった。
何もかも間違えて、後悔ばかりしている自分に彼は優しく触れた。
「んんッ……」
蕾を押し開きながら彼自身が侵入してくる。
「まだ何か余計なこと考えてるのか?」
塩田の指先が首筋から肩に触れ、背中に回った。
「いい加減、覚悟を決めたらどうだ?」
深く押し込まれ、涙目で彼を見つめ返す。
「覚悟?」
「社長と戦う覚悟」
塩田は不敵な笑みを浮かべる。
皇はその笑顔に心を奪われていた。
──塩田は部下で年下で……。
ちがう……俺の好きな人。
「俺は覚悟を決めた。だから今、こうなってる」
確かにこれは社長に知れたらまずい状況だろう。
そもそも呉崎社長がこの件について放っておくのは、何も相手が塩田だからというわけではない。そのくらい皇にも想像がつく。
塩田には電車紀夫という恋人がいて、皇は横恋慕状態。そんな二人のところへ転がり込んだところで、どうになるわけもないと高をくくっているから。
そして塩田との関係において皇の方がタチだと誤認しているからだ。
もし真実を知ったなら黙ってはいないだろう。
黒岩に部屋を見せようとしただけなのにあんなに怒るのは、その立場にある。ベッドの上での立場に。
でなければ皇に婚約者がいた時、なにもしてこなかったことに説明がつかない。
「まさか、このまま現状維持だなんて甘いこと考えてないよな?」
隙あらば、皇の身体を良いようにしたいと考えている社長のことだ。チャンスが来ればまた言いくるめられて抱かれることになるだろう。
それについては皇も理解している。
「俺たちはもう戦う覚悟を決めてる。あとは皇次第だ」
塩田の言葉に皇は瞳を閉じた。
何処までも唯野に従う板井。
黒岩に向かって行った唯野。
先日二人でデートに出かけた塩田と電車。
恐らく唯野を動かしたのは電車であろう。
自分の知らないところで着々とコトは進んでいる。
閉じた瞳から涙が溢れる。自分勝手な自分のためにどうして彼らはそこまでしてくれるのか?
自業自得だと嘲笑えばいいのに。
「仕事をやめれば自由を手に入れられるだろう。でもそれで叶う自由ならとっくにそうしているよな」
皇の涙を拭う彼の指先が温かい。
「だから、俺たちと自由を手に入れよう」
優しく耳元で囁かれ、皇はコクコクと頷いた。
まるでそれが合図のように彼が腰を動かし始める。
彼に奥まで突かれながら、開放感を味わう。何故か近い将来自分は自由を手に入れられる確信があった。それは彼らの協力があるからなのか、それとも覚悟を決めたからなのか定かではない。
ただ、何かが変わる予感がしたのだ。
「ああッ……」
「ここ、いいのか?」
「んッ……いいッ」
その時が来るまで。
いや、今は彼がくれる快感に身を任せようと思ったのだった。
『好きなタイプというのは存在するとは思うよ。でも、それは統計による結果論でしかない』
落ち込む皇に電車はそう言った。
『好かれる確証には繋がらないし、嫌われる理由にもならないんだよ』
続く言葉に皇が顔をあげると、彼は優しい目をしていたのだった。
塩田を襲った当時の自分は、彼に執着してしまうことに関して間違った認識があった。単純に、自分に見向きもしない彼が気に入らないからだと思っていたのだ。いつだって注目を浴びていたはずの自分に。
今なら十分すぎるくらい分かる。
彼には副社長の肩書も。
若くしてその座を手にしたことも。
見目が良くてちやほやされていることも。
どうでもいいことでしかなかった。
彼の興味はそんなことでは引けない。
塩田の心を動かすのは見た目の良さでも能力でも地位でもない。
真っ直ぐな心だけ。
──そんな彼の視界に入りたかったのだろう、自分は。
何度目か分からない口づけを交わしながら、彼に縋る。
初めからこうしてしていればよかったのだ。
自分の心と向きあって、何故こんなにも彼に執着してしまうのか。真剣に考えればよかった。
何もかも間違えて、後悔ばかりしている自分に彼は優しく触れた。
「んんッ……」
蕾を押し開きながら彼自身が侵入してくる。
「まだ何か余計なこと考えてるのか?」
塩田の指先が首筋から肩に触れ、背中に回った。
「いい加減、覚悟を決めたらどうだ?」
深く押し込まれ、涙目で彼を見つめ返す。
「覚悟?」
「社長と戦う覚悟」
塩田は不敵な笑みを浮かべる。
皇はその笑顔に心を奪われていた。
──塩田は部下で年下で……。
ちがう……俺の好きな人。
「俺は覚悟を決めた。だから今、こうなってる」
確かにこれは社長に知れたらまずい状況だろう。
そもそも呉崎社長がこの件について放っておくのは、何も相手が塩田だからというわけではない。そのくらい皇にも想像がつく。
塩田には電車紀夫という恋人がいて、皇は横恋慕状態。そんな二人のところへ転がり込んだところで、どうになるわけもないと高をくくっているから。
そして塩田との関係において皇の方がタチだと誤認しているからだ。
もし真実を知ったなら黙ってはいないだろう。
黒岩に部屋を見せようとしただけなのにあんなに怒るのは、その立場にある。ベッドの上での立場に。
でなければ皇に婚約者がいた時、なにもしてこなかったことに説明がつかない。
「まさか、このまま現状維持だなんて甘いこと考えてないよな?」
隙あらば、皇の身体を良いようにしたいと考えている社長のことだ。チャンスが来ればまた言いくるめられて抱かれることになるだろう。
それについては皇も理解している。
「俺たちはもう戦う覚悟を決めてる。あとは皇次第だ」
塩田の言葉に皇は瞳を閉じた。
何処までも唯野に従う板井。
黒岩に向かって行った唯野。
先日二人でデートに出かけた塩田と電車。
恐らく唯野を動かしたのは電車であろう。
自分の知らないところで着々とコトは進んでいる。
閉じた瞳から涙が溢れる。自分勝手な自分のためにどうして彼らはそこまでしてくれるのか?
自業自得だと嘲笑えばいいのに。
「仕事をやめれば自由を手に入れられるだろう。でもそれで叶う自由ならとっくにそうしているよな」
皇の涙を拭う彼の指先が温かい。
「だから、俺たちと自由を手に入れよう」
優しく耳元で囁かれ、皇はコクコクと頷いた。
まるでそれが合図のように彼が腰を動かし始める。
彼に奥まで突かれながら、開放感を味わう。何故か近い将来自分は自由を手に入れられる確信があった。それは彼らの協力があるからなのか、それとも覚悟を決めたからなのか定かではない。
ただ、何かが変わる予感がしたのだ。
「ああッ……」
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その時が来るまで。
いや、今は彼がくれる快感に身を任せようと思ったのだった。
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