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────8話*この手を離さないで
1・躊躇いがちな想い【R】
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****♡Side・副社長(皇)
「気をつけて」
「そっちこそ」
皇は電車に言葉を返すと小さく手をあげる。
隣の塩田はただ静かに電車を見つめていた。
「心配?」
「少し」
黒のワゴンが駐車場から出るのを見送って彼に問いかければ、短い返事。
塩田は皇の方は見ずにそのまま助手席に乗り込んだ。皇はそんな塩田を一瞥し、車に回り込むように運転席へ向かう。やはり今回のデートは乗り気でなかったのかと落胆しながら。
「何が心配?」
エンジンをかけると同時に彼の手はカーナビに伸びる。
「運転かな」
「電車は安全運転だろ?」
「でも、まだまだペーパーに近いだろ」
「まあ、一般的には勘を取り戻すのに2、3か月かかるらしいしね」
それでも電車は努力家だ。勘を取り戻すために積極的に助手席に乗っていたし、自ら運転することに努めた。
”きっと大丈夫だ”と言えば、少しだけ表情を緩める彼。塩田がどれほど電車が大切なのか皇は理解した。
「今日の。乗り気じゃなかった?」
「なんで」
彼の好きな曲がスピーカーから流れ始める。少し不機嫌そうな声に皇はドキリとした。
「乗り気でもないのに、俺が行くとでも?」
「いや……それは」
「デートとか、あまりしたことがないからガッカリされたら嫌だとは思うけれど、これでも楽しみにしてた」
ムッとされた理由がわかり、その理由が意外過ぎて皇はどうしていいのか分からない。
「自信なくて……ごめん」
「謝るのやめろよ」
「うん」
素直に頷くと横からグイっと腕を掴まれる。
「あ……」
皇はちゅっと口づけられて熱があった。
「で、どこ連れっていてくれるんだよ」
なんで平気なんだと皇はハンドルに突っ伏す。
「俺の行きたいとこでいい?」
「ああ」
シートベルトを締めながら彼がふっと笑う。その笑みに胸が締め付けられる。どれほど自分が彼を好きなのか再確認した。
笑顔が見られるだけでこんなに幸せになる。
ロマンチックな気分に浸りながらシートベルトを締め、アクセルを踏む。
そう、ロマンチックな一夜にする予定だったのに。
夜景の綺麗な展望レストランで食事をして、ゆっくり話をして。
そんな理想を抱いていたはずの皇は、どうしてこうなったと心の中で頭を抱える。いや、現状が悪いわけではない。想定外だっただけだ。
「ま……っ」
「ん?」
「塩田、待って」
顔を覗き込まれ、皇は腕で顔を覆う。
「待てないくせに」
「んんっ……あっ」
海が見渡せるホテルにチェックインし、荷物を置いたら出かけるつもりでいたのに。気づけばベッドの上で組み伏せられていた。
「いつも自信家でふんぞり返っている皇が、こんな風に自信なさげにしていたら……」
「んッ……」
奥に指を滑り込ませた彼は笑みを浮かべこちらを見ている。
「あッ……」
一番恥ずかしいところに指を差し込まれ、水音を立てられていた。皇は快感に身を捩りながら、潤んだ瞳を彼に向ける。
いつもは電車に促されない限り積極的ではない彼に。
「俺をその気にさせたのは皇なんだから、責任取れよ」
「そんなこと……してな」
「でも、ここはその気みたいだぞ。こんなに締めけて」
確かに奥は快感に支配され彼を欲しがっていた。指だけでは満足できないほどに。何度も何度も彼の中指が奥を刺激する。
「いつもそんな風に」
「うん?」
このままでは達ってしまいそうだと思った皇は塩田に別の話を振った。
「電車を誘っているのか? 積極的に」
「俺が? どうだろうな」
余裕の笑みを浮かべる彼が少し悔しい。
「どうだと思う?」
いつもより饒舌な彼。その様子から彼が言う通り乗り気なのだと感じた。
「んんッ……電車は自分からしそうにないから、塩田が誘っているん……だろ」
「最近はそうでもないよ」
「んッ」
快感の波をやり過ごそうと彼にしがみ付けば口づけをくれる。慣れたものだなと思いながら、その口づけに酔う。
「ほんと、皇の中。熱くてとろけそうだな」
「いう……な」
二人の熱い夜はこれからだ。
「気をつけて」
「そっちこそ」
皇は電車に言葉を返すと小さく手をあげる。
隣の塩田はただ静かに電車を見つめていた。
「心配?」
「少し」
黒のワゴンが駐車場から出るのを見送って彼に問いかければ、短い返事。
塩田は皇の方は見ずにそのまま助手席に乗り込んだ。皇はそんな塩田を一瞥し、車に回り込むように運転席へ向かう。やはり今回のデートは乗り気でなかったのかと落胆しながら。
「何が心配?」
エンジンをかけると同時に彼の手はカーナビに伸びる。
「運転かな」
「電車は安全運転だろ?」
「でも、まだまだペーパーに近いだろ」
「まあ、一般的には勘を取り戻すのに2、3か月かかるらしいしね」
それでも電車は努力家だ。勘を取り戻すために積極的に助手席に乗っていたし、自ら運転することに努めた。
”きっと大丈夫だ”と言えば、少しだけ表情を緩める彼。塩田がどれほど電車が大切なのか皇は理解した。
「今日の。乗り気じゃなかった?」
「なんで」
彼の好きな曲がスピーカーから流れ始める。少し不機嫌そうな声に皇はドキリとした。
「乗り気でもないのに、俺が行くとでも?」
「いや……それは」
「デートとか、あまりしたことがないからガッカリされたら嫌だとは思うけれど、これでも楽しみにしてた」
ムッとされた理由がわかり、その理由が意外過ぎて皇はどうしていいのか分からない。
「自信なくて……ごめん」
「謝るのやめろよ」
「うん」
素直に頷くと横からグイっと腕を掴まれる。
「あ……」
皇はちゅっと口づけられて熱があった。
「で、どこ連れっていてくれるんだよ」
なんで平気なんだと皇はハンドルに突っ伏す。
「俺の行きたいとこでいい?」
「ああ」
シートベルトを締めながら彼がふっと笑う。その笑みに胸が締め付けられる。どれほど自分が彼を好きなのか再確認した。
笑顔が見られるだけでこんなに幸せになる。
ロマンチックな気分に浸りながらシートベルトを締め、アクセルを踏む。
そう、ロマンチックな一夜にする予定だったのに。
夜景の綺麗な展望レストランで食事をして、ゆっくり話をして。
そんな理想を抱いていたはずの皇は、どうしてこうなったと心の中で頭を抱える。いや、現状が悪いわけではない。想定外だっただけだ。
「ま……っ」
「ん?」
「塩田、待って」
顔を覗き込まれ、皇は腕で顔を覆う。
「待てないくせに」
「んんっ……あっ」
海が見渡せるホテルにチェックインし、荷物を置いたら出かけるつもりでいたのに。気づけばベッドの上で組み伏せられていた。
「いつも自信家でふんぞり返っている皇が、こんな風に自信なさげにしていたら……」
「んッ……」
奥に指を滑り込ませた彼は笑みを浮かべこちらを見ている。
「あッ……」
一番恥ずかしいところに指を差し込まれ、水音を立てられていた。皇は快感に身を捩りながら、潤んだ瞳を彼に向ける。
いつもは電車に促されない限り積極的ではない彼に。
「俺をその気にさせたのは皇なんだから、責任取れよ」
「そんなこと……してな」
「でも、ここはその気みたいだぞ。こんなに締めけて」
確かに奥は快感に支配され彼を欲しがっていた。指だけでは満足できないほどに。何度も何度も彼の中指が奥を刺激する。
「いつもそんな風に」
「うん?」
このままでは達ってしまいそうだと思った皇は塩田に別の話を振った。
「電車を誘っているのか? 積極的に」
「俺が? どうだろうな」
余裕の笑みを浮かべる彼が少し悔しい。
「どうだと思う?」
いつもより饒舌な彼。その様子から彼が言う通り乗り気なのだと感じた。
「んんッ……電車は自分からしそうにないから、塩田が誘っているん……だろ」
「最近はそうでもないよ」
「んッ」
快感の波をやり過ごそうと彼にしがみ付けば口づけをくれる。慣れたものだなと思いながら、その口づけに酔う。
「ほんと、皇の中。熱くてとろけそうだな」
「いう……な」
二人の熱い夜はこれからだ。
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