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────7話*彼の導く選択
20・不可解なデート
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****♡Side・電車(同僚・恋人)
「今日はいろいろ勉強してきたんだ」
遊園地のゲート前で腕を組み、どや顔で宣言する塩田が可愛い。
「遊園地で恋人が別れるのは、待ち時間に会話がないかららしい」
「へえ」
適当に相槌を打ちながら塩田の腕を解くとその手を掴む電車。
「なんでもいいけど、早く行かないと混むよ」
「あ、ああ……って速いよ」
走る電車に腕を引かれ、慌てる塩田。
「まずはこれだね。フリーパスだから好きなだけ好きなものに乗れるよ。しかも今日は平日!」
「だな」
明るく塩田に言ってみたものの、平日にわざわざ有給休暇を取って遊園地に遊びに来るリーマンってどうなんだ? と思ったが黙って置く。
空いているとは言っても、そこそこ客で賑わう遊園地である。土日ほどではないが、待ち時間はありそうだ。
「で、塩田はなんの調査をしたんだっけ?」
やっぱりサスペンスかと思いながら先ほどの話に戻せば、嬉しそうな顔をする彼。
「ふふん。聞いて驚け、遊園地を百倍楽しむ方法だ」
「初めて来たのに?」
何と比べるんだと思いながらも塩田の話に耳を傾ける電車。
「初めてもクソもないだろ? 百倍だぞ」
塩田の話だけで十分百倍は楽しめるよと心の中で爆笑しながらパンフレットに目を向ける。
「しかし、遊園地の中は食品関係がバカ高いね」
「そうだな」
儲けを出すには仕方ないとしても、こんなキャラだのなんだの技術料なのかと思うと辟易した。
「遊園地に来ること自体が相当な道楽なのかもしれないね」
男女の場合はこれで相手の懐具合や器量や度量を見極めているのだろうか。
──世の中というのは、どんな国でも多少の男尊女卑観念はあると思うんだよね。だから女性が相手の男によってその後の生活や人生が決まるというのも理解できるし、そのために相手の度量などを測る必要があるのは当然だとは思うけれど。
自分はパンセクシャルであるとは思うが、どうしても女性に対して恋愛感情を持つことが出来なかったのはそこにあると思う。
恋愛の先には必ずとは言わないが婚姻というゴールがあり、そのために審査されることになるだろう。それは二人が暮らしていく、共に生活していくには仕方ないとしても、数字で見られているような気がして嫌なのだ。
男女の関係に人間という概念はあるのだろうか?
それはずっと疑問に思っていることだ。仮に男女格差がなくなったとして、子を産むことのできる女性と子を産むことのできない男性には肉体的格差がある。
言い換えれば、女性には子を産むという特別な能力があっても男性には家族のために金を稼ぐという手段しかない。
世の中がいくら男尊女卑であっても、実際には男は女に劣る生き物。
働くことなら男女関係なく誰にでもできる。しかし子を産むことは女性にしかできない。
──劣っているのだから品定めされてもおかしくはないし、その後金を稼ぐ道具となってもなんら不思議はない。
そう思っちゃうんだよね。
恋が出来なかったのは、自分の中にその理念が根付いているからなのだろうとも思う。その上、あんな父を見て育ったのだ。
「紀夫」
「うん?」
じっとこちらを見上げる彼。考え事をしていたのがバレたのだろうか。
「デート、嬉しい」
「え? 何、可愛いんだけど」
ゲームのこととなると異常に熱を上げて言葉にする方ではあるが、普段は言葉少なに想いを伝える彼。本人は感情表現が下手なことを自覚し、気にしてもいるがそんなことは電車にとっては些細なこと。
「じゃあ、まだデートしようか」
嬉しくなって提案すれば、
「次は海だな」
と候補を上げられる。
「海」
ゲンナリした顔で彼の言葉を復唱するが。
「そう、海」
「俺たちインドア派なのに、今度は海! 何するの、海で」
それは素朴な疑問。
「海と言えばBQQ」
「びーきゅー?」
「バーベキューだ!」
「それならBBQだよね?」
二人の会話を聴いていたのだろうか。後ろに並んでいたカップルが吹いた。
こうして二人は並んでいる間、アトラクションと化していたのだった。
「今日はいろいろ勉強してきたんだ」
遊園地のゲート前で腕を組み、どや顔で宣言する塩田が可愛い。
「遊園地で恋人が別れるのは、待ち時間に会話がないかららしい」
「へえ」
適当に相槌を打ちながら塩田の腕を解くとその手を掴む電車。
「なんでもいいけど、早く行かないと混むよ」
「あ、ああ……って速いよ」
走る電車に腕を引かれ、慌てる塩田。
「まずはこれだね。フリーパスだから好きなだけ好きなものに乗れるよ。しかも今日は平日!」
「だな」
明るく塩田に言ってみたものの、平日にわざわざ有給休暇を取って遊園地に遊びに来るリーマンってどうなんだ? と思ったが黙って置く。
空いているとは言っても、そこそこ客で賑わう遊園地である。土日ほどではないが、待ち時間はありそうだ。
「で、塩田はなんの調査をしたんだっけ?」
やっぱりサスペンスかと思いながら先ほどの話に戻せば、嬉しそうな顔をする彼。
「ふふん。聞いて驚け、遊園地を百倍楽しむ方法だ」
「初めて来たのに?」
何と比べるんだと思いながらも塩田の話に耳を傾ける電車。
「初めてもクソもないだろ? 百倍だぞ」
塩田の話だけで十分百倍は楽しめるよと心の中で爆笑しながらパンフレットに目を向ける。
「しかし、遊園地の中は食品関係がバカ高いね」
「そうだな」
儲けを出すには仕方ないとしても、こんなキャラだのなんだの技術料なのかと思うと辟易した。
「遊園地に来ること自体が相当な道楽なのかもしれないね」
男女の場合はこれで相手の懐具合や器量や度量を見極めているのだろうか。
──世の中というのは、どんな国でも多少の男尊女卑観念はあると思うんだよね。だから女性が相手の男によってその後の生活や人生が決まるというのも理解できるし、そのために相手の度量などを測る必要があるのは当然だとは思うけれど。
自分はパンセクシャルであるとは思うが、どうしても女性に対して恋愛感情を持つことが出来なかったのはそこにあると思う。
恋愛の先には必ずとは言わないが婚姻というゴールがあり、そのために審査されることになるだろう。それは二人が暮らしていく、共に生活していくには仕方ないとしても、数字で見られているような気がして嫌なのだ。
男女の関係に人間という概念はあるのだろうか?
それはずっと疑問に思っていることだ。仮に男女格差がなくなったとして、子を産むことのできる女性と子を産むことのできない男性には肉体的格差がある。
言い換えれば、女性には子を産むという特別な能力があっても男性には家族のために金を稼ぐという手段しかない。
世の中がいくら男尊女卑であっても、実際には男は女に劣る生き物。
働くことなら男女関係なく誰にでもできる。しかし子を産むことは女性にしかできない。
──劣っているのだから品定めされてもおかしくはないし、その後金を稼ぐ道具となってもなんら不思議はない。
そう思っちゃうんだよね。
恋が出来なかったのは、自分の中にその理念が根付いているからなのだろうとも思う。その上、あんな父を見て育ったのだ。
「紀夫」
「うん?」
じっとこちらを見上げる彼。考え事をしていたのがバレたのだろうか。
「デート、嬉しい」
「え? 何、可愛いんだけど」
ゲームのこととなると異常に熱を上げて言葉にする方ではあるが、普段は言葉少なに想いを伝える彼。本人は感情表現が下手なことを自覚し、気にしてもいるがそんなことは電車にとっては些細なこと。
「じゃあ、まだデートしようか」
嬉しくなって提案すれば、
「次は海だな」
と候補を上げられる。
「海」
ゲンナリした顔で彼の言葉を復唱するが。
「そう、海」
「俺たちインドア派なのに、今度は海! 何するの、海で」
それは素朴な疑問。
「海と言えばBQQ」
「びーきゅー?」
「バーベキューだ!」
「それならBBQだよね?」
二人の会話を聴いていたのだろうか。後ろに並んでいたカップルが吹いた。
こうして二人は並んでいる間、アトラクションと化していたのだった。
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