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────7話*彼の導く選択
15・恋愛と婚姻と概念
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****♡Side・塩田
「ねえ、塩田。人は環境によって考え方が違う」
”例えばさ”と彼は続ける。
「不倫で騒がれる国もあれば、何も言われない国もあるよね。それは相手とのあり方の考え方が違うからだと思うんだ。もちろん仕事に関してもそうでしょう?」
一夫多妻制は何故あるのかと言えば、日本の場合であるが子孫を残すためだった。今のように医療が整っておらずすぐに子が亡くなってしまう場合が多い。そして、国内などで戦争なでも命を落とすリスクがある為後継ぎが必要だったとも言える。
では何故今は一夫一妻制なのか?
婚姻は母子を守るために作られたものであるから。
他の国が事実婚が多いのは離婚が大変であるのもあるだろうが、日本に比べれば給料に関して格差が低かったりシングルマザーでも子を育てられる環境にあるからだろう。
そして異性に欲情するイコール異性愛と勘違いしている日本と違い、ちゃんと『愛』というものが存在しているから事実婚が成り立つとも言える。
単に性欲発散で女性をはらませるようなゴミ男ばかりだからできた制度であるなら、同性同士の形に一対一が必ずしも成り立つとは言えないのだ。
「確かに重婚はできないよ、日本では。けれども形に関しては本人たちの自由でしょ? 他人にとやかく言われる筋合いもない」
同性同士の恋愛や婚姻で子ができることはない。養子縁組などで家族が増えたとしても。子を中心に考えるのはやはりそれが成り立つ関係だからなのではないだろうか。
たくさんの義母がいて、それでも素直に育った彼だからこそそんなことが言えるのだろうと塩田は思った。自分にはそんな柔軟な考え方はできないと。
「でも俺だけで決めるわけにもいかないし」
「副社長ならいいって言ったよ。塩田のことが好きなんだから、拒否なんかしたいわけないよね」
「紀夫はそれでいいのかよ」
長子がいろんなことを我慢しているのは塩田も分かっている。そして塩田のためなら嫌だとも言わないことも。これ以上何かを我慢させたくないし、傷つけたくない。
「それなんだけどさ、俺は三人で暮らしてみて結構楽しいなと思ってるよ。意外と二人きりになれる時間も多いし」
実際、皇とは仕事の関係で生活リズムが異なり始終一緒にいられるわけではないということを塩田も感じていた。
「ピッタリ合っていたら、たまには二人きりになりたいとか思ったとは思うけれど、むしろ合わないことの方が多いからストレスは感じないかな。そういう意味では」
”塩田は楽しくない?”と問われ、先日三人で出かけた時のことを思い出す。
インドア派の二人ではきっと行かなかったようなところに皇は連れて行ってくれる。今度、旅行に行こうという話もしたところだ。
仮に電車と恋人関係にならず三人でルームシェアしていたとしても楽しかったのではないかとも思える。
しかしそう感じるのは皇が変わったからなのだ。
「返事は急がないけれど、前向きな答えが欲しいな」
と彼。
「俺は、二人がそれで幸せだと言うなら悪くないと思う」
もう嫌なのだ。誰かが望まないことに虐げられて我慢しなければならないのが。
皇が社長に従うことを良いと感じないのは、唯野から受けた恐怖があるから。自分は好きでもない相手に身体を求められることがどれほど怖いことなのか知っている。
それを自らの意思で行っているというのなら、心を殺しているのだろうと思った。皇には他に想う相手がいるのだから。
「そっか。それを聞いたら副社長も喜ぶね」
しゃがんだ体制でこちらを見上げ微笑む電車。
彼が笑ってくれるなら、どんなことでもしたいと思っていた。
「そろそろ仕事行く準備しないと」
立ち上がる彼に腕をのばし、ぎゅっと抱き着くと、
「話聞いてくれてありがとうね」
と彼。
別れを切り出されるのだと思い避けていたのはこちらなのに、責めもしない。
「副社長、今日はお昼奢ってくれるって」
「それは楽しみだな」
塩田は温かい彼の温もりを感じながらそっと目を閉じた。
「ねえ、塩田。人は環境によって考え方が違う」
”例えばさ”と彼は続ける。
「不倫で騒がれる国もあれば、何も言われない国もあるよね。それは相手とのあり方の考え方が違うからだと思うんだ。もちろん仕事に関してもそうでしょう?」
一夫多妻制は何故あるのかと言えば、日本の場合であるが子孫を残すためだった。今のように医療が整っておらずすぐに子が亡くなってしまう場合が多い。そして、国内などで戦争なでも命を落とすリスクがある為後継ぎが必要だったとも言える。
では何故今は一夫一妻制なのか?
婚姻は母子を守るために作られたものであるから。
他の国が事実婚が多いのは離婚が大変であるのもあるだろうが、日本に比べれば給料に関して格差が低かったりシングルマザーでも子を育てられる環境にあるからだろう。
そして異性に欲情するイコール異性愛と勘違いしている日本と違い、ちゃんと『愛』というものが存在しているから事実婚が成り立つとも言える。
単に性欲発散で女性をはらませるようなゴミ男ばかりだからできた制度であるなら、同性同士の形に一対一が必ずしも成り立つとは言えないのだ。
「確かに重婚はできないよ、日本では。けれども形に関しては本人たちの自由でしょ? 他人にとやかく言われる筋合いもない」
同性同士の恋愛や婚姻で子ができることはない。養子縁組などで家族が増えたとしても。子を中心に考えるのはやはりそれが成り立つ関係だからなのではないだろうか。
たくさんの義母がいて、それでも素直に育った彼だからこそそんなことが言えるのだろうと塩田は思った。自分にはそんな柔軟な考え方はできないと。
「でも俺だけで決めるわけにもいかないし」
「副社長ならいいって言ったよ。塩田のことが好きなんだから、拒否なんかしたいわけないよね」
「紀夫はそれでいいのかよ」
長子がいろんなことを我慢しているのは塩田も分かっている。そして塩田のためなら嫌だとも言わないことも。これ以上何かを我慢させたくないし、傷つけたくない。
「それなんだけどさ、俺は三人で暮らしてみて結構楽しいなと思ってるよ。意外と二人きりになれる時間も多いし」
実際、皇とは仕事の関係で生活リズムが異なり始終一緒にいられるわけではないということを塩田も感じていた。
「ピッタリ合っていたら、たまには二人きりになりたいとか思ったとは思うけれど、むしろ合わないことの方が多いからストレスは感じないかな。そういう意味では」
”塩田は楽しくない?”と問われ、先日三人で出かけた時のことを思い出す。
インドア派の二人ではきっと行かなかったようなところに皇は連れて行ってくれる。今度、旅行に行こうという話もしたところだ。
仮に電車と恋人関係にならず三人でルームシェアしていたとしても楽しかったのではないかとも思える。
しかしそう感じるのは皇が変わったからなのだ。
「返事は急がないけれど、前向きな答えが欲しいな」
と彼。
「俺は、二人がそれで幸せだと言うなら悪くないと思う」
もう嫌なのだ。誰かが望まないことに虐げられて我慢しなければならないのが。
皇が社長に従うことを良いと感じないのは、唯野から受けた恐怖があるから。自分は好きでもない相手に身体を求められることがどれほど怖いことなのか知っている。
それを自らの意思で行っているというのなら、心を殺しているのだろうと思った。皇には他に想う相手がいるのだから。
「そっか。それを聞いたら副社長も喜ぶね」
しゃがんだ体制でこちらを見上げ微笑む電車。
彼が笑ってくれるなら、どんなことでもしたいと思っていた。
「そろそろ仕事行く準備しないと」
立ち上がる彼に腕をのばし、ぎゅっと抱き着くと、
「話聞いてくれてありがとうね」
と彼。
別れを切り出されるのだと思い避けていたのはこちらなのに、責めもしない。
「副社長、今日はお昼奢ってくれるって」
「それは楽しみだな」
塩田は温かい彼の温もりを感じながらそっと目を閉じた。
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