R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

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────6話*狂いだした歯車と動き出す運命

18・その意味

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****♡Side・板井(同僚)

「ばかじゃねーの?」
 悶々とし眠れない一夜を過ごした翌日。
 板井は昼休み、塩田と電車でんまと共に休憩室にいた。
「バカって……」
 眉を寄せる板井。
「いくら本当のことでも言い過ぎだよ、塩田」
 電車はフォローをしたつもりなのか、抗議したのかわからないが更に追い打ちをかけてくる。
「お前らどっちもバカだよ」
「え? 俺も?!」
「違う。ややこしくなるからちょっと黙ってて、紀夫」
 塩田は電車の腕を掴むとソファーに押し付けた。
 ソファーに押し付けられた彼はきょとんとした表情で塩田を見上げる。
「課長と板井の話ししてんだよ」
 呆れ気味の塩田に軽く両手を広げる電車。やれやれと言ったところだろうか。ため息を一つつくと両手をポケットに突っ込んで板井に向き直る塩田。

「課長が板井に絶対の信頼をおいているのは、みんなわかってる」
「それは仕事の話だろ?」
「あのなあ、板井。課長は何故かは知らんが簡単に他人を信用しないんだよ」
 その理由については板井の方が理解していた。
 元妻に騙された、元会長に嵌められたことがきっかけだろう。
「そんな人が板井のことは信頼してんだよ。その意味を考えろよ」
 塩田の言いたいことはわかる。だが、気持ちがついていかないのだ。

「じゃあ、なんで課長が俺にあんなこと出来たのか考えたことあるのか?」
 唯野はないにも等しい選択肢を提示し、塩田に無理矢理肉体関係を求めた。
「普通なら上司に報告され、それなりの処分を受けるだろうな」
 皇もその件については同罪だろう。だが、唯野は塩田が皇の件を報告しないから便乗したわけではない。
 根本的に塩田は他言する気がないとわかっていたから事に及んだのだ。つまり、唯野は塩田だから強行しただけで、別の誰かであれば踏みとどまっただろう。

「特別とかそれ以前に、危険だと判断したら実行しない人だ。総括ならきっとそんなの関係ない」
 仮に同じ想いで他の誰かを好きになったなら実行には移さない。
 塩田が言いたいのは行動に出たのは想いの強さとは無関係だと言うこと。
「あんなことして、嫌われないなんてあの人は思ってないはずだ」
 嫌われる覚悟。それは失う覚悟と同等。
「なあ、わかるよな板井。あの人は板井には嫌われたくないんだよ。その意味もうわかるだろ?」
 どうしてそこまで塩田が板井に心を尽くすのか。その答えならもう知っている。言っていることも理解できた。
 だが、どうしても首を縦に振れないのは自分に自信がないから。

 今回のことで何故彼が人を引き付けるのかわかってしまった。
 皇が執着するのも、唯野が惹かれたのも納得したのだ。

「なあ、どうして課長は塩田なら強行できたんだ? 人を信用しないあの人が何故塩田なら危険ではないと判断できた?」
「じゃあ、さ。お前が俺を襲ったと仮定してそれを上に報告すると思うか?」
 塩田が上に報告しないのは、何故なのか。そこに答えはあるのだろう。

 他人に興味を示さない彼。
 皇の時は売り言葉に買い言葉だった。
 唯野の時は他の部署の奴に拉致され輪姦まわされそうになったところを助けられてのこと。
 報告したところで勝ち目はないとは思えない。セクハラの域を超えている。報告次第では強制性交と判断されてもおかしくはない。
 きっと二人の立場を考えてというわけでもないだろうし、社長に恩があってのことでもないだろう。
 
「俺は課長や皇だから報告しないだけだ。板井、お前でもな」
 ”わからないのかよ”という視線。
 眉を寄せ困り顔で塩田を見つめていると、彼はポケットに手を突っ込んだまま電車でんまの膝に腰かけた。そんな彼の腰に腕を回す電車。
「ごめん。塩田の性格をかんがみてもわからない」
「ばかだねえ、板井」
 今度は電車から”バカ”だと言われる始末。
 段々自分が情けなくなってくる。
「塩田はみんなのことが”ダイスキ”だからだよ」
 ”ね!”というようにぎゅっと塩田を抱きしめる彼を見て板井は驚くのだった。
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