144 / 218
────6話*狂いだした歯車と動き出す運命
2・塩田に執着する人々【微R】
しおりを挟む
****♡Side・板井(同僚)
板井は浅く息をする唯野の肌を、手のひらでゆっくりと撫であげた。
彼は、奥を締め付けながら身を捩る。
「はあ……ッ」
初めてだと言っていたのに、板井はなかなか解放してあげられなかった。
「辛くないですか?」
股を両手で左右に大きく開き、ずいっと身を進めながら板井は唯野に問う。
「へい……きだ。好きにしていいから……もっと」
潤んだ瞳でこちらを見つめる彼。
何を思っているのだろうと、その瞳を覗き込む板井。
「どう……し」
彼が想うのはやはり塩田なのだろうか?
板井はその瞳を見つめて、少し不安になった。
──修二さんが見ているのは俺なのだろうか?
仮にまだ塩田のことを思っていたとしても。
いや。こんなこと考えてはいけない。
全て俺にくれると言ったじゃないか。
貪るように彼に口づけ雑念を払おうとしたが、唯野の手が頬に触れハッとする。時々影の差す彼を前に、板井は葛藤し続けていた。
「板井」
唇を離すと、唯野が不安そうな声を漏らす。
「どうしてそんな顔するんだよ」
「修二さん……俺……」
たった一言で良い。
「好きって言って欲しいです」
板井の言葉に驚いた顔をする、彼。
じっと見つめて返事を待っていると、唯野はほんのり頬を染め、目を泳がせる。
──え?
そんな反応?
板井はその反応を意外に感じていた。
「板井、あのな」
「はい」
「何か誤解してるだろ」
「誤解……」
それは自分が唯野から好かれているということをだろうか?
なんだか自分が間違ったことをしているのではないかと更に不安になる。
しかし、
「好きじゃなかったら、こんなことしない」
「え?」
「お前さ。俺が……いや、いい。好きだよ、板井」
何かを言いかけてやめる唯野。それが何かとても気になった。
「俺は、板井に愛されたい。気が変になるほど」
今度はちゃんと板井の目を真っすぐ見て告げる彼。
板井は軽く唯野に口づけると、
「愛してますよ」
と返答した。
唯野の奥がきゅぅっと締まり、板井は困った表情を浮かべる。
「もっと、愛されたい」
「だからって、そんなに締め付けられたら……」
「お前が変なこと……いうから」
唯野はぎゅっと板井に抱き着き、
「俺にはお前しかいないんだよ」
と震える声で言う。
板井はその言葉の意味を測り兼ねた。彼の背中に腕を回し、優しくその背中を撫でる。
「ずっと気づかないフリしてきたのに」
板井は唯野を慕っていたから常に傍にいただけ。しかしそのことが彼に影響を与えていたこと知った。
「お前に呆れられたら、俺はどうしたらいい?」
彼が自分に縋っているのだと気づく。それは彼にとって見たくない現実であり、失えないものであったことを。
「ずっと甘えてきたよ。知られたくないことを隠して。お前だけは傍に居てくれるんじゃないかって思っていたから」
やがて彼の涙が板井の肩を濡らす。
「全部知られていることを知って、背筋が凍る想いがしたよ。お前に嫌われるのが怖かった」
唯野の吐露に板井の心は締め付けられた。
「お前は俺にとって特別な存在だよ。どうしてこんなに怖くてたまらないのか、お前には分かるんだろう?」
”全部分かってるくせに”と彼は言う。
分かっていてなお、自信がないのか? と言っているのだ。
「確かに塩田のことは好きだったし、自分のものにしたいと思ってた。けれども、なぜ電車も副社長も塩田に執着するのか板井には分かっているはずだ」
──塩田に惹かれ、執着するその本質。
それは塩田が他人に興味を示さないから。
彼に愛されることは、唯一無二と同等だと思えるから。
塩田に惹かれるのは、恋をしたことがなかった者たちばかり。空虚な愛に虚しさを感じ、自分の代わりなどいくらでもいるという恋愛しかしたことがなかった。
そして、唯野もその一人。
だから塩田に惹かれ、その愛を求める。
板井は浅く息をする唯野の肌を、手のひらでゆっくりと撫であげた。
彼は、奥を締め付けながら身を捩る。
「はあ……ッ」
初めてだと言っていたのに、板井はなかなか解放してあげられなかった。
「辛くないですか?」
股を両手で左右に大きく開き、ずいっと身を進めながら板井は唯野に問う。
「へい……きだ。好きにしていいから……もっと」
潤んだ瞳でこちらを見つめる彼。
何を思っているのだろうと、その瞳を覗き込む板井。
「どう……し」
彼が想うのはやはり塩田なのだろうか?
板井はその瞳を見つめて、少し不安になった。
──修二さんが見ているのは俺なのだろうか?
仮にまだ塩田のことを思っていたとしても。
いや。こんなこと考えてはいけない。
全て俺にくれると言ったじゃないか。
貪るように彼に口づけ雑念を払おうとしたが、唯野の手が頬に触れハッとする。時々影の差す彼を前に、板井は葛藤し続けていた。
「板井」
唇を離すと、唯野が不安そうな声を漏らす。
「どうしてそんな顔するんだよ」
「修二さん……俺……」
たった一言で良い。
「好きって言って欲しいです」
板井の言葉に驚いた顔をする、彼。
じっと見つめて返事を待っていると、唯野はほんのり頬を染め、目を泳がせる。
──え?
そんな反応?
板井はその反応を意外に感じていた。
「板井、あのな」
「はい」
「何か誤解してるだろ」
「誤解……」
それは自分が唯野から好かれているということをだろうか?
なんだか自分が間違ったことをしているのではないかと更に不安になる。
しかし、
「好きじゃなかったら、こんなことしない」
「え?」
「お前さ。俺が……いや、いい。好きだよ、板井」
何かを言いかけてやめる唯野。それが何かとても気になった。
「俺は、板井に愛されたい。気が変になるほど」
今度はちゃんと板井の目を真っすぐ見て告げる彼。
板井は軽く唯野に口づけると、
「愛してますよ」
と返答した。
唯野の奥がきゅぅっと締まり、板井は困った表情を浮かべる。
「もっと、愛されたい」
「だからって、そんなに締め付けられたら……」
「お前が変なこと……いうから」
唯野はぎゅっと板井に抱き着き、
「俺にはお前しかいないんだよ」
と震える声で言う。
板井はその言葉の意味を測り兼ねた。彼の背中に腕を回し、優しくその背中を撫でる。
「ずっと気づかないフリしてきたのに」
板井は唯野を慕っていたから常に傍にいただけ。しかしそのことが彼に影響を与えていたこと知った。
「お前に呆れられたら、俺はどうしたらいい?」
彼が自分に縋っているのだと気づく。それは彼にとって見たくない現実であり、失えないものであったことを。
「ずっと甘えてきたよ。知られたくないことを隠して。お前だけは傍に居てくれるんじゃないかって思っていたから」
やがて彼の涙が板井の肩を濡らす。
「全部知られていることを知って、背筋が凍る想いがしたよ。お前に嫌われるのが怖かった」
唯野の吐露に板井の心は締め付けられた。
「お前は俺にとって特別な存在だよ。どうしてこんなに怖くてたまらないのか、お前には分かるんだろう?」
”全部分かってるくせに”と彼は言う。
分かっていてなお、自信がないのか? と言っているのだ。
「確かに塩田のことは好きだったし、自分のものにしたいと思ってた。けれども、なぜ電車も副社長も塩田に執着するのか板井には分かっているはずだ」
──塩田に惹かれ、執着するその本質。
それは塩田が他人に興味を示さないから。
彼に愛されることは、唯一無二と同等だと思えるから。
塩田に惹かれるのは、恋をしたことがなかった者たちばかり。空虚な愛に虚しさを感じ、自分の代わりなどいくらでもいるという恋愛しかしたことがなかった。
そして、唯野もその一人。
だから塩田に惹かれ、その愛を求める。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる