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────5話*俺のものだよ

22・二人の始まりは前途多難で【R】

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****♡Side・板井(同僚)

 手に入らないと思っていたものが、ある日突然手に入ってしまったなら?

 板井は唯野を後ろから抱きしめると、下着の上から彼の中心部を優しく撫であげた。上はワイシャツ一枚という何ともそそるカッコ。しかもローライズボクサー。引き締まった彼の身体を際立たせている。
「こういうの、好きなのかよ」
 浅く息をしながら板井を斜めに見上げる唯野は、少し困った顔をして。
 その言葉に板井が、
「ワイシャツ一枚って、エロいじゃないですか」
と返答すれば、彼は肩を竦める。
「じゃあ、か……修二さんは、どんなのが好みなんです?」

 ”課長”と呼ぼうとして先ほど言われたことを思い出す。
『お付き合いするなら、プライベートで課長って呼ぶのは止めろよ』
 唯野の少し拗ねているような口調に愛しさを感じ、思わず口づけると、
『んッ……おま……聞いてんのか?』
と眉を寄せ、困った顔をされた。
 仕事では怒られたことなんてなかったのに、ここへ来て数度、怒られる。
『修二さん』
 耳元で囁けば真っ赤になり、板井の肩に顔をうずめた。
『で、どっちがいいんだよ』
と唯野に問われ、
『抱かせてくれるんですか?』
と聞き返せば、
『初めてだから、リードしろよな』
と真っ赤な顔をして言う。

 そこで、板井は真剣な表情をしてじっと唯野を見つめた。
『な、なんだよ』
 板井の肩に顔をうずめていた彼が顔を上げ、こちらを見つめ返す。
『経験があるとでも思ってるのか?』
とムッとしている。
『初めての相手、俺でいいんですか?』
 言ってしまってから板井は後悔した。彼の瞳に宿ったのは怒りだ。
『お前、何もわかってない』

 謝ることしかできない自分。
 自分は唯野のことが好きで……でも、彼は?
 彼の心を今、言葉にしろと言ったところで、それは無理なのだろう。

──解りたいのに、分からない。
 自信もない。
 だが、心に引っかかっている言葉はある。

『板井に幻滅されるのが怖いんだよ』

 どうしてあの時、”何故?”と問わなかったのか、今更ながら後悔した。きっとそれが彼の答えなのだ。
 板井は”ごめんなさい”と告げ、彼に口づける。唯野は何も言わなかった。
 何も解決することもなく、今に至る。

「俺は、別に……」
 唯野は、塩田に無理やり肉体関係を迫った割には淡泊なことに気づく。それはずっと感じていた違和感だった。性欲が強くて、というわけではない。単に自分に塩田の気持ちを向けたかっただけなのだと分かり、複雑な気持ちになる。

──分かっていたことではあるけれど、きっついな。
 そんだけ好きだったってことだろ?

 ため息をつく板井に、びくっと肩を揺らす唯野。板井には彼が何を考えているのか全く分からなかった。
 それなのにこのまま強硬手段に出て良いのだろうか?
「板井、気乗りしないなら……ッ?!」
 板井はそれ以上言わせまいと、手を彼の下着の中に滑り込ませ、胸の突起に優しく触れる。首筋を吸い上げ、指先で胸の突起をコロコロと転がした。
「んんッ」
 腕の中で身を捩る彼。彼自身を握り込み、根元の方から扱きあげれば、
「あッ……板井ッ……」
 涙目で何かを訴えている。

──解りたい。
 そして、あなたの全てを……。

 ”じゃあ、お前にやるよ。俺の全て”

──違う。
 初めから修二さんは、俺に全てを俺にくれるつもりで……?

 唯野が自分に電話をかけてきた時点で、彼が決心していたことに板井は気づく。腕の中の唯野が愛しかった。こうなっても良いと思ったから、連絡をくれたのだ。選ばせてくれるのは、”お前のものだから”好きにして良いという意味。

──それなのに、俺はなんて馬鹿な質問をしたのだろう。

「はあッ……」
 ぎゅっと目を閉じる彼から下着を引き抜くと、鈴口へ続くぷっくりと膨れた部分を親指の腹と人差し指でこねくり回す。
「まっ……そんなにしたら」
「待たない。って良いですよ」
「やめ……俺ばっかじゃないかよ」
 上気して濡れた瞳。このまま彼を閉じ込めてしまいたいと思った。
「大丈夫、お楽しみはこれからですから」
「ん……ッ」
 板井は鈴口から熱を放つ彼を、優しい笑みを浮かべ眺めていたのだった。
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