R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
137 / 218
────5話*俺のものだよ

18・焦る感情と真実への道筋

しおりを挟む
****♡Side・課長(唯野)

 小さなことが自分に恐怖を与えている。

『板井君が最近、秘書室長と会っているみたいなんだがね。二人はお付き合いでもしているのかな?』
 いつものように社長室に呼ばれ、皇に関しての嫌味を言われるのかと思ったら、矛先が違っていて唯野は驚いた。
 秘書室長の女性は自分と同期入社。彼女が最初に配属されたのは自分と同じ営業であった。しかしその手腕などが認められ、秘書室に配属されたのだ。前室長が結婚退職してからは、彼女が室長として長年勤めている。
 
 彼女は社内一の情報通で有名。てっきり社長側の人間だと思っていた。だがそれを野放しにしているということは、そうではないということなのだろう。
 もっとも、緘口令かんこうれいを強いた約四年前の皇に関する件については、彼女も簡単には口にしないであろう。社長のいうことは絶対だ。
 そして自分の関係している十七年前の出来事について、彼女がどの程度掴んでいるのか分からなかった。

──板井は何を知っているのだろう?
 怖くて聞けない。

 自分への印象が変わってしまったかもしれない。そんなことを想いながら社長室から苦情係に戻ると、板井はいなかった。最近少しギクシャクしてしまっているせいか、悪いことばかり考えてしまう。

 時計を見上げると、昼過ぎであった。塩田と電車は副社長と外へ食べに行ったのかもしれない。板井はいつも、自分が社長室へ呼ばれた時はここへ残っているのだ。休憩に行けよと先に言っていても。

──普段と違うことがこんなに恐怖だなんて。
 
 唯野はデスクに手を置くと、眩暈のする自分自身を片手で支えた。
 元々口数の少ない板井との、帰りの列車での会話が減ったことも、唯野を恐怖に陥れる要因の一つ。先日の違和感の原因が秘書室長にあるなら……。

「課長?」
「!」
 呼ばれて唯野はびくっと肩を震わせた。
「なんです? そんなに驚いて」
と、板井は持っていたペットボトルを一つ唯野に向かって差し出す。
「あ、いや……」
 ”ありがとう”と言って受け取ると、小銭を渡そうとポケットに手を差し入れた。
 板井は時計を見上げ、
「今日は早かったんですね」
と微笑む。

 いつもと変わらないはずなのに、ドキドキしている自分がいた。何を言われるのだろうと、身体が強張る。
「たまには、外に食べに行きませんか?」
と板井。
 唯野は小銭を差し出しながら、ゆっくりとこちらに向き直る彼をぼんやり見ていた。
「顔色、悪いですが。大丈夫ですか?」
 ペットボトルをデスクに置いた手が、唯野に触れる。ひんやりとした感触に現実に戻される唯野。
「? 顔、赤い」
 青ざめていたはずの唯野が触れた途端色づくのを見て、板井は驚いたようだ。

──俺、なんでこんなに板井のことばかり考えているんだ?
 どうしてこんなに不安なんだろう。

「板井、あのさ」
「はい」
「秘書室長と、その……付き合ってるのか?」
 自分でも何故そんなことが怖いのか分からない。
「いいえ。なぜです?」
「そ、そうか」
 付き合ってもいないのに会っているなら、恐らく何か噂話でも聞いているに違いない。知られたくないことの数々が脳裏を過る。
 板井は小銭を差し出す唯野の手を握りこむと、
「課長、離婚されるそうですね」
と切り出した。

「ああ、そのことか」
 それが秘書室長から聞いた話なら、全てを知られている可能性は高い。
 何故なら、その婚姻こそが全ての始まりだったから。
「課長は、まだ塩田のこと好きなんですか?」
「え?」
 驚いたのは質問にではない。ぐいっと腰を引かれたからだ。
「俺があなたを好きだと言ったら、俺にもチャンスはありますか?」

──板井が、俺を好き?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...