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────5話*俺のものだよ
17・板井と秘書室長の密談
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****♡Side・板井(同僚)
「こんな時間にこんなところに呼び出して、大丈夫なんですか?」
板井は夜中近く、駅とは反対方向のあるバーに居た。
それというのも、
『明日は休みでしょ、ちょっと出てこない?』
と社長室長からメッセージを受け取ったためである。
彼女から課長、唯野の話を聞いてからというもの何処となく唯野とギクシャクしているような気がしていた。そんな折に呼び出されたのだ。
自分は唯野に対し変な行動を取ったつもりはなかったが、気づくとこちらを伺っている唯野と目が合う。彼はその都度、気まずそうに視線を逸らすが板井は踏み込もうとはしなかった。むしろ余計なことを言ってこちらの動向に気づかれては困ると思っている。
それに最近、彼以外の視線を感じる気がするのだ。それは社内だったり、電車の中だったり。どうやら誰かに監視されているような気がしていた。
なのでここへ来るときもわざわざ非常階段を使い、真っ暗な中をそっと抜け出したのだ。
「平気よ、私一人身だし」
と彼女。
彼女に家族があれば浮気を疑われるのではないかと思った板井は少しホッとする。
「それより、尾行されているって話、ホント?」
「なんとなくですが」
と板井は声を潜める。
このバーは二十四時間営業のレストランの地下にあった。しかもレストランの中を通るという変わった仕組みで会員制。密談などによく使われるらしく、盗聴器を仕掛けられても電波を遮断するような壁になっている。もちろんスマホの電波も届かない。
ここへ来るとき、入り口で彼女から送られてきた画面を見せると奥へと案内された。そこは従業員の休憩室と表には書かれていたが、中はロッカールームとなってる。
『ここは一体?』
と思っているとロッカーの一部がスライドされ入り口が現れた時には、まるで映画のワンシーンのように感じたものだ。
「しかしよくこんなところを知っていますね」
と板井。
「まあね。うちの会社いろいろあるでしょ。表で話せないことたくさんあるから」
”知り合いが作ってくれたのよ”と彼女は言う。
今では口コミで広がり、一部の人間が利用しているらしい。信用できる人物しか利用ができないため完全会員制であり、一見さんお断りでもある。
「板井君を尾行しているのは、おそらく社長の協力者でしょうね」
彼女の言葉に板井は眉を顰め、ビールのグラスに手を伸ばす。お洒落なガラスの小皿に乗ったカシューナッツを彼女はつまんでいた。
「社長は何故、俺の動向なんかを気にするんです?」
それは素朴な疑問だった。
板井が現時点で知っていることと言えば、唯野が離婚をするということと、社長が皇にご執心だということくらい。
「それは板井君が私とコンタクトを取ったからよ」
近づいてきたのは彼女の方からであったが、それがどう社長に影響を与えるのかまだ板井には分っていない。
「社長はどこかで分かってるのよ。皇副社長が自分のものにならないということを」
言って彼女はクスッと笑うと、カクテルのグラスを傾けた。
「彼を手に入れるには、唯野君が必要なの」
──どういうことなんだ?
それなのに何故、俺を調べるんだ?
「唯野君を思い通りに動かすには、板井君の動向が関係しているということよ」
「課長と俺が一体どう関係しているんです?」
板井には全く想像がつかない。
「やだ、板井君って自分のことには鈍感なのね」
その後、板井は唯野のことについて彼女から詳しく聞かされることとなるのだった。それが唯野にとって板井には知られたくない過去だとは知らずに。
「こんな時間にこんなところに呼び出して、大丈夫なんですか?」
板井は夜中近く、駅とは反対方向のあるバーに居た。
それというのも、
『明日は休みでしょ、ちょっと出てこない?』
と社長室長からメッセージを受け取ったためである。
彼女から課長、唯野の話を聞いてからというもの何処となく唯野とギクシャクしているような気がしていた。そんな折に呼び出されたのだ。
自分は唯野に対し変な行動を取ったつもりはなかったが、気づくとこちらを伺っている唯野と目が合う。彼はその都度、気まずそうに視線を逸らすが板井は踏み込もうとはしなかった。むしろ余計なことを言ってこちらの動向に気づかれては困ると思っている。
それに最近、彼以外の視線を感じる気がするのだ。それは社内だったり、電車の中だったり。どうやら誰かに監視されているような気がしていた。
なのでここへ来るときもわざわざ非常階段を使い、真っ暗な中をそっと抜け出したのだ。
「平気よ、私一人身だし」
と彼女。
彼女に家族があれば浮気を疑われるのではないかと思った板井は少しホッとする。
「それより、尾行されているって話、ホント?」
「なんとなくですが」
と板井は声を潜める。
このバーは二十四時間営業のレストランの地下にあった。しかもレストランの中を通るという変わった仕組みで会員制。密談などによく使われるらしく、盗聴器を仕掛けられても電波を遮断するような壁になっている。もちろんスマホの電波も届かない。
ここへ来るとき、入り口で彼女から送られてきた画面を見せると奥へと案内された。そこは従業員の休憩室と表には書かれていたが、中はロッカールームとなってる。
『ここは一体?』
と思っているとロッカーの一部がスライドされ入り口が現れた時には、まるで映画のワンシーンのように感じたものだ。
「しかしよくこんなところを知っていますね」
と板井。
「まあね。うちの会社いろいろあるでしょ。表で話せないことたくさんあるから」
”知り合いが作ってくれたのよ”と彼女は言う。
今では口コミで広がり、一部の人間が利用しているらしい。信用できる人物しか利用ができないため完全会員制であり、一見さんお断りでもある。
「板井君を尾行しているのは、おそらく社長の協力者でしょうね」
彼女の言葉に板井は眉を顰め、ビールのグラスに手を伸ばす。お洒落なガラスの小皿に乗ったカシューナッツを彼女はつまんでいた。
「社長は何故、俺の動向なんかを気にするんです?」
それは素朴な疑問だった。
板井が現時点で知っていることと言えば、唯野が離婚をするということと、社長が皇にご執心だということくらい。
「それは板井君が私とコンタクトを取ったからよ」
近づいてきたのは彼女の方からであったが、それがどう社長に影響を与えるのかまだ板井には分っていない。
「社長はどこかで分かってるのよ。皇副社長が自分のものにならないということを」
言って彼女はクスッと笑うと、カクテルのグラスを傾けた。
「彼を手に入れるには、唯野君が必要なの」
──どういうことなんだ?
それなのに何故、俺を調べるんだ?
「唯野君を思い通りに動かすには、板井君の動向が関係しているということよ」
「課長と俺が一体どう関係しているんです?」
板井には全く想像がつかない。
「やだ、板井君って自分のことには鈍感なのね」
その後、板井は唯野のことについて彼女から詳しく聞かされることとなるのだった。それが唯野にとって板井には知られたくない過去だとは知らずに。
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