R18【同性恋愛】リーマン物語『俺のものになってよ』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
135 / 218
────5話*俺のものだよ

16・小さな糸と始まりの日

しおりを挟む
****♡Side・電車でんま

 ──いくら何でも酷いよ、塩田ー。

 電車でんまは現在心の中でブツクサ言いながら、自家用車で塩田のマンションに向かっている。実家に辿り着きスマホに目をやると数十分前に塩田からメッセージが届いていた。

 ”皇を迎えに行ってくる。夕飯何か買って帰るけど、欲しい物あるか?”

 電車の妄想では助手席に彼が座り、
『紀夫、運転上手い。きゃー素敵ー!』
とキャッキャッ言われるはずだったのに、と。
(おそらく塩田はそんなことは言わない)

──まだ死にたくない! って断るなんて。
 俺は安全運転なのに。

 今夜は塩田をアンアン言わせてやる! と意気込みながら信号でブレーキを踏む。
「あれ? 板井だ」
 確か板井は会社から二、三駅隣だったはず。定かでないのは路線が違うためだ。道路標識を見上げると、どうやらその辺らしい。
 同じ部署の同僚であり同期入社の板井は真面目で常識人。ムスッとしているわけではないが、真面目な顔をしている時の方が多いため、笑顔の印象はなかった。しかしよく一緒に呑みに行く仲でもあり、仲は良い方だと思っている。その板井がコンビニエンスストアで女性と立ち話をしていた。

──板井って意外とモテるのかな? 
 もしかして彼女?

 電車は要らぬことだとは思ったが挨拶でもしとこうと思い、信号が変わると同時にハンドルを切る。
「板井」
 窓を開け声をかけると、どこからだと言うように彼はきょろきょろと辺りを見回す。電車は駐車場に車を停めると運転席から降り立った。
電車でんま? こんなところで何しているんだ?」
と彼。
 一緒に居た女性がこちらに向かって手を振る。
「電車くんじゃない」
 どうやら一緒に居たのは隣の課、商品部の女性らしい。電車も良く知る人物だった。

「電車、車持ってたんだな。しかも、ワゴン車?」
と板井は電車の車に目をやって。
「うち兄弟多いからさ。お出かけするのに大人数乗れるやつ買ったんだ」
 ”買い替える予定だけど”と付け加え。
「へえ、意外。末っ子かと思ってた」
と板井が言うと隣の女性も同意と言わんばかりに頷く。
「えー。ところで二人とも、家はこの辺りなの?」
 女性の方は会社帰りという服装だが、板井は私服だった。
「そうなの。コンビニ寄ったらバッタリ会っちゃって。板井くんにこの辺の美味しい焼き鳥屋さん教えてあげてたんだ」

 わが社、通称株原かぶげんは残業はしても一日二時間までと決まっている。もちろん労働基準法に違反する残業時間は認められていない。社長は腹黒いが、意外とクリーンな会社であり働く環境は良いのだ。意味なく厳しいことを言う上司がいるという話も聞いたことがない。
 部署によって残業の有り無しも違い終業時間が異なるので、同じ駅を使用していても気づかないことはよくあることだ。就職して一年以上経つが、二人が同じ駅に住んでいたということを今日知っても不思議はないのである。

「今度、みんなで一緒に行きませんか?」
と彼女。
「部長誘えば、奢ってくれるしー」
 商品部の部長は愛嬌のあるバーコード禿。でっぷりとしたお腹がトレードマーク。しょっちゅう部下を連れ、焼き肉屋に行くような人であった。気前が良く、明るいので部下に人気だ。しかしお姉言葉がいささか気になる。
 部長は塩田がお気に入りで、苦情係のメンツもよく昼をごちそうになっていた。
「いいねえ」
と電車。
 板井は何故か複雑な表情をしている。どうしたんだろうと彼を見つめていると電車の視線に気づいたのか、
「そうだな」
とにこやかに微笑んだ。

──なんだ? 今の。

 それは電車が彼に初めていだいた違和感。板井が不審な行動をし始めたのも、思えばこの頃からだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...