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────5話*俺のものだよ
12・嬉しい待ち合わせ
しおりを挟む****♡Side・副社長(皇)
「まったく……」
”なんて察しがいいんだ”と思いながら塩田との通話を終えた皇は、
「皇くん」
と、社長に声をかけられた。
「これから呑みに行かないかね」
とお猪口を口もとに持っていく仕草をする、社長。
しかし皇は、
「これから用事があるので」
とすかさず断り綺麗に身体を折った。
塩田が作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない。
隙を見せない皇に、さすがの社長もそれ以上は強引に出来ないのか、
「用があるなら、仕方ないね」
と一瞬顔を曇らせたが、
「では、店が閉まってしまうんで」
と踵を返そうとすると、用事の内容が人と会う為ではないと気づいた彼は笑顔を見せた。
「慌てて事故を起こさないようにね」
と。
呉崎社長の自分への想いが肉欲ではなく愛情だと気づき始めてはいたが、それと同時に塩田への想いが増している。上司である唯野課長の指示とは言え、塩田は優しい。自分に好意があるのではないかと勘違いしてしまいそうなほどに。
『あんまり買いすぎるなよ、豚になるだけだから』
彼の言葉を思い出し、皇は肩を竦める。辛らつに感じてしまうような言葉に優しさを感じたのはいつからだったか。
「初めに酷いことをしたのは、俺なのに」
皇は呟きつつ、デパートへ入っていく。ここにしかない土産を買う為に。皇はフロアの中央付近まで行くとエスカレーターに乗り込む。目的は酒のつまみのチャーシューと角煮。このデパ地下に有名店があるらしい。
支払いの段になりスマホに視線を移すと、どうやら塩田からメッセージが届いていたようだ。支払いを済ませメッセを開くと『駅にいるから迎えに来て』と一言。
「駅って、ここの?」
社長の誘いをどうしても断りたかった皇は、今回の出張に自分の車で来ている。車は駅のパーキングに停めてあった。
「塩田?」
デパートを出ると、彼に連絡を入れる。
『ああ、今どこ』
「駅に、向かってる」
『どっちから来る?』
「東」
まるでデートの待ち合わせのようだなと、顔がにやけてしまう。
『じゃあ、東にいる』
「わかった」
通話を切ると自然と早歩きになった。塩田が自分を待っていてくれることがこんなに嬉しいなんて。いや待っていてくれることなんて、この先ありはしないと諦めていたからだ。
──あれ? ところで電車は?
二人で来ているのなら、電車が黙っているわけがない。しかし塩田の周りで声はしなかった。そこで、車を取りに行くと言っていた話を思い出す。という事は別行動をしたという事なのだろうか。
「皇」
駅に着くと、すぐに塩田から声をかけられる。
先ほどから気になっていたことを問えば、
「まだ死にたくない」
と、一言。
──どれだけ運転信用してないんだよ。
皇はなんだか複雑な気持ちになったのだった。
「まったく……」
”なんて察しがいいんだ”と思いながら塩田との通話を終えた皇は、
「皇くん」
と、社長に声をかけられた。
「これから呑みに行かないかね」
とお猪口を口もとに持っていく仕草をする、社長。
しかし皇は、
「これから用事があるので」
とすかさず断り綺麗に身体を折った。
塩田が作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない。
隙を見せない皇に、さすがの社長もそれ以上は強引に出来ないのか、
「用があるなら、仕方ないね」
と一瞬顔を曇らせたが、
「では、店が閉まってしまうんで」
と踵を返そうとすると、用事の内容が人と会う為ではないと気づいた彼は笑顔を見せた。
「慌てて事故を起こさないようにね」
と。
呉崎社長の自分への想いが肉欲ではなく愛情だと気づき始めてはいたが、それと同時に塩田への想いが増している。上司である唯野課長の指示とは言え、塩田は優しい。自分に好意があるのではないかと勘違いしてしまいそうなほどに。
『あんまり買いすぎるなよ、豚になるだけだから』
彼の言葉を思い出し、皇は肩を竦める。辛らつに感じてしまうような言葉に優しさを感じたのはいつからだったか。
「初めに酷いことをしたのは、俺なのに」
皇は呟きつつ、デパートへ入っていく。ここにしかない土産を買う為に。皇はフロアの中央付近まで行くとエスカレーターに乗り込む。目的は酒のつまみのチャーシューと角煮。このデパ地下に有名店があるらしい。
支払いの段になりスマホに視線を移すと、どうやら塩田からメッセージが届いていたようだ。支払いを済ませメッセを開くと『駅にいるから迎えに来て』と一言。
「駅って、ここの?」
社長の誘いをどうしても断りたかった皇は、今回の出張に自分の車で来ている。車は駅のパーキングに停めてあった。
「塩田?」
デパートを出ると、彼に連絡を入れる。
『ああ、今どこ』
「駅に、向かってる」
『どっちから来る?』
「東」
まるでデートの待ち合わせのようだなと、顔がにやけてしまう。
『じゃあ、東にいる』
「わかった」
通話を切ると自然と早歩きになった。塩田が自分を待っていてくれることがこんなに嬉しいなんて。いや待っていてくれることなんて、この先ありはしないと諦めていたからだ。
──あれ? ところで電車は?
二人で来ているのなら、電車が黙っているわけがない。しかし塩田の周りで声はしなかった。そこで、車を取りに行くと言っていた話を思い出す。という事は別行動をしたという事なのだろうか。
「皇」
駅に着くと、すぐに塩田から声をかけられる。
先ほどから気になっていたことを問えば、
「まだ死にたくない」
と、一言。
──どれだけ運転信用してないんだよ。
皇はなんだか複雑な気持ちになったのだった。
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