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────5話*俺のものだよ
10・日常に差す、光の行方
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****♡Side・副社長(皇)
──それでも自分は……。
塩田が自ら動いたことが同情によるものだったなら、と考えてしまう。恋とは不思議なものだ。要らぬ不安を呼び起こす。
「そんなに不安なら、本人に確認すればいい」
そんなこと出来るわけないのに。こんな気持ちになるのは三人で居た時間が本当に楽しくて、そして安らげたからだと思う。
『うわ、なにこれ。美味っ』
電車は今まで皇に対し悪態ばかりついていたのに、今やそんな様子もない。
『塩田は? 旨いか?』
気にする皇に、何故か笑う塩田。
『何故、そんなに気を遣うんだ』
『副社長、いつもこんな美味しいもの食べてるの? また、誘ってよね』
と電車はニコニコしている。
二人は対照的。感情を言葉にもする電車。感情を口にしない塩田。なのに、どうしてそんな風に自然で居られるのだろうと不思議に思う。
──塩田が好きだから、不安なんだよな。
社に戻ると苦情係へ。
唯野と連れ立って足を踏み入れると、まず板井がこちらに気づく。
「板井、悪い」
恐らくなかなか帰って来ない唯野を心配していたのだろう。デスクに腰かけていた彼は眉を寄せ唯野を見上げている。この課のバランスを取っているのは、板井なのではないかと思った。
「副社長、お帰り」
塩田たちの元へ行くと電車に声をかけられる。二人には唯野に話があると言っておいたので心配はしていないようだ。
「ただいま」
といって皇は塩田の横に腰かけ、デスクトップ画面に向かう。
「遅かったな」
と、塩田。
「うん、課長。昼めしまだだったから、ちょっと外行ってた」
と答えると、
「そっか」
と返って来る。
もしかしたら塩田は自分のことを心配してくれたのではないのかと少し嬉しくなった。
午後の業務はスムーズに進み、自分の仕事に戻ろうとすると、
「ありがとう」
と二人に礼を言われ驚く。
「皇、これ」
と塩田が渡してきたのは、自宅マンションのキー。
「なんかあったら、すぐ連絡してよ。副社長」
電車は自宅からマイカーを取ってくると言っていた。免許を持っていたことに驚く。ならば何故、以前は電車通勤だったのか。
『車、混むし。慌てて事故起こしたら嫌でしょ』
と至極当たり前で、平凡な答え。
『あんまり運転しないけど、ペーパードライバーまではいかないから、大丈夫』
と、あまり信用できないことを言っていた。
『週末どっか連れてけ』
と塩田は言ったが、明らかにこちらを向いている。
どうやら塩田も彼の運転は信用していないようで、その事がとてもおかしかった。
「副社長」
苦情係から商品部を通り、廊下を出ると声をかけられた。社長秘書の神流川だ。一瞬身構えるが、仕事の話のようで二人は連れだって社長室へと向かうのだった。
──それでも自分は……。
塩田が自ら動いたことが同情によるものだったなら、と考えてしまう。恋とは不思議なものだ。要らぬ不安を呼び起こす。
「そんなに不安なら、本人に確認すればいい」
そんなこと出来るわけないのに。こんな気持ちになるのは三人で居た時間が本当に楽しくて、そして安らげたからだと思う。
『うわ、なにこれ。美味っ』
電車は今まで皇に対し悪態ばかりついていたのに、今やそんな様子もない。
『塩田は? 旨いか?』
気にする皇に、何故か笑う塩田。
『何故、そんなに気を遣うんだ』
『副社長、いつもこんな美味しいもの食べてるの? また、誘ってよね』
と電車はニコニコしている。
二人は対照的。感情を言葉にもする電車。感情を口にしない塩田。なのに、どうしてそんな風に自然で居られるのだろうと不思議に思う。
──塩田が好きだから、不安なんだよな。
社に戻ると苦情係へ。
唯野と連れ立って足を踏み入れると、まず板井がこちらに気づく。
「板井、悪い」
恐らくなかなか帰って来ない唯野を心配していたのだろう。デスクに腰かけていた彼は眉を寄せ唯野を見上げている。この課のバランスを取っているのは、板井なのではないかと思った。
「副社長、お帰り」
塩田たちの元へ行くと電車に声をかけられる。二人には唯野に話があると言っておいたので心配はしていないようだ。
「ただいま」
といって皇は塩田の横に腰かけ、デスクトップ画面に向かう。
「遅かったな」
と、塩田。
「うん、課長。昼めしまだだったから、ちょっと外行ってた」
と答えると、
「そっか」
と返って来る。
もしかしたら塩田は自分のことを心配してくれたのではないのかと少し嬉しくなった。
午後の業務はスムーズに進み、自分の仕事に戻ろうとすると、
「ありがとう」
と二人に礼を言われ驚く。
「皇、これ」
と塩田が渡してきたのは、自宅マンションのキー。
「なんかあったら、すぐ連絡してよ。副社長」
電車は自宅からマイカーを取ってくると言っていた。免許を持っていたことに驚く。ならば何故、以前は電車通勤だったのか。
『車、混むし。慌てて事故起こしたら嫌でしょ』
と至極当たり前で、平凡な答え。
『あんまり運転しないけど、ペーパードライバーまではいかないから、大丈夫』
と、あまり信用できないことを言っていた。
『週末どっか連れてけ』
と塩田は言ったが、明らかにこちらを向いている。
どうやら塩田も彼の運転は信用していないようで、その事がとてもおかしかった。
「副社長」
苦情係から商品部を通り、廊下を出ると声をかけられた。社長秘書の神流川だ。一瞬身構えるが、仕事の話のようで二人は連れだって社長室へと向かうのだった。
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