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────5話*俺のものだよ
7・パワハラ社長と課長の関係
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****♡Side・課長(唯野)
──随分、仲良くなったんだな。
塩田と電車、皇副社長の関係は以前とは少しづつ変わりつつあり、周りからもそれは見て取れた。自分が出した指示によるものではあるが複雑な心境である。
苦情係の課長こと唯野はコーヒーを一口含むと、スマホのお知らせランプが点灯していることに気づく。
──またか。
どうやら着信のようだ。わが社、(株)原始人の社長呉崎からである。
「なんです?」
画面をスライドさせ、通話を押す。相手はとても不機嫌そうだ。秘書も通さず、しょっちゅう唯野を社長室に呼ぶ。自分にとってはパワハラ上司。
『社長室に来たまえ、唯野くん』
「忙しいんですが、電話じゃダメなんですか?」
正直そんなに忙しいわけではないが相手をするのが面倒だ。元凶は社長から皇への執着心。唯野が営業部に居た頃からこうである。
皇は入社四年ほどになるから、このパワハラも四年目。だいぶ慣れた。
『君、塩田くんに似てきたね』
「お褒めに預かり光栄です」
『褒めてない』
大方、皇が社長よりも塩田たちを優先することが気に入らないのだろう。呉崎社長はかなりのやり手だが、皇のこととなると周りが見えなくなってしまう。
──神流川も黒岩も皇に夢中だしな。
黒岩は皇と社長との情事の録画されたUSBを社長から渡されて以来、トチ狂ったことばかり言っている。そんなにイイなら見せて見ろといったところ、拒否された。
「どうせ、皇副社長のことでしょう?」
『分かっているなら、早く来たまえ』
あの人の我儘にも困ったものだと思いながら通話を切ると、
「板井、悪いが社長室へ行ってくる」
と真面目に仕事をしている彼に告げる。
「またですか?」
この課で唯野がしょっちゅう社長室に呼ばれているのを知っているのは、板井だけだ。もっとも、この課が稼働し始めた当時は堂々と呼ばれていたが。
「あのおっさん、かまってちゃんだから」
とオーバーに肩を竦めてみせると、いつもは真面目な顔しか見せない板井が笑う。
「まあ、商品部の部長ほどじゃないが」
「唯野ちゃん、ぼくを呼んだぁ?」
地獄耳だ。ひょいっと隣の商品部から顔を見せる、でっぷりとした腹にバーコード禿の部長。社長の上を行くかまってちゃんであり、塩田は彼を塩豚と呼んでいる。
「呼んでない」
と唯野が返すと、
「きいいいいッ」
彼はハンカチを噛みしめながら、戻っていった。
「板井。俺、昼までに戻ってこられるか分からないから」
「分かりました」
「塩田たちは、昼副社長と外出るみたいだから、ちゃんとお前も休憩行けよ」
「そう思うなら、さっさと戻ってきてください」
唯野が空けた穴を埋めてくれているのは、いつだって彼だ。
「ん、善処はするよ」
そういうと唯野はコーヒーカップをデスクに置き、苦情係を後にした。皇が見ていることにも気づかずに。
──随分、仲良くなったんだな。
塩田と電車、皇副社長の関係は以前とは少しづつ変わりつつあり、周りからもそれは見て取れた。自分が出した指示によるものではあるが複雑な心境である。
苦情係の課長こと唯野はコーヒーを一口含むと、スマホのお知らせランプが点灯していることに気づく。
──またか。
どうやら着信のようだ。わが社、(株)原始人の社長呉崎からである。
「なんです?」
画面をスライドさせ、通話を押す。相手はとても不機嫌そうだ。秘書も通さず、しょっちゅう唯野を社長室に呼ぶ。自分にとってはパワハラ上司。
『社長室に来たまえ、唯野くん』
「忙しいんですが、電話じゃダメなんですか?」
正直そんなに忙しいわけではないが相手をするのが面倒だ。元凶は社長から皇への執着心。唯野が営業部に居た頃からこうである。
皇は入社四年ほどになるから、このパワハラも四年目。だいぶ慣れた。
『君、塩田くんに似てきたね』
「お褒めに預かり光栄です」
『褒めてない』
大方、皇が社長よりも塩田たちを優先することが気に入らないのだろう。呉崎社長はかなりのやり手だが、皇のこととなると周りが見えなくなってしまう。
──神流川も黒岩も皇に夢中だしな。
黒岩は皇と社長との情事の録画されたUSBを社長から渡されて以来、トチ狂ったことばかり言っている。そんなにイイなら見せて見ろといったところ、拒否された。
「どうせ、皇副社長のことでしょう?」
『分かっているなら、早く来たまえ』
あの人の我儘にも困ったものだと思いながら通話を切ると、
「板井、悪いが社長室へ行ってくる」
と真面目に仕事をしている彼に告げる。
「またですか?」
この課で唯野がしょっちゅう社長室に呼ばれているのを知っているのは、板井だけだ。もっとも、この課が稼働し始めた当時は堂々と呼ばれていたが。
「あのおっさん、かまってちゃんだから」
とオーバーに肩を竦めてみせると、いつもは真面目な顔しか見せない板井が笑う。
「まあ、商品部の部長ほどじゃないが」
「唯野ちゃん、ぼくを呼んだぁ?」
地獄耳だ。ひょいっと隣の商品部から顔を見せる、でっぷりとした腹にバーコード禿の部長。社長の上を行くかまってちゃんであり、塩田は彼を塩豚と呼んでいる。
「呼んでない」
と唯野が返すと、
「きいいいいッ」
彼はハンカチを噛みしめながら、戻っていった。
「板井。俺、昼までに戻ってこられるか分からないから」
「分かりました」
「塩田たちは、昼副社長と外出るみたいだから、ちゃんとお前も休憩行けよ」
「そう思うなら、さっさと戻ってきてください」
唯野が空けた穴を埋めてくれているのは、いつだって彼だ。
「ん、善処はするよ」
そういうと唯野はコーヒーカップをデスクに置き、苦情係を後にした。皇が見ていることにも気づかずに。
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