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────5話*俺のものだよ
0・課長と総括と社長秘書
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****♡Side・課長(唯野)
「ん? ああ。こっちは順調。そっちはどうなの?」
休憩室で一人、苦情係の課長こと【唯野修二】が経過の報告をしていると、おもむろに休憩室のドアが開けられゾンビのような表情をした黒岩が入ってくる。
「あ、悪い。切る」
訊かれたところで何の話か分かるはずもないが、唯野は手短に返答し通話を切った。
「なんなんだよ、そんな顔して」
黒岩は肩を落とし、ソファーに腰を下ろしている。
唯野は仕方ないなと思いながら、簡易冷蔵庫から一つ栄養ドリンクを取り出すと彼の目の前に置いてやり、隣に腰かけた。
すると彼は急に表を上げ、
「皇に逢いたい!」
と宣言。
唯野は、ため息をついた。
「まだ諦めてなかったのかよ。いい加減、諦めなさいよ」
「い、や、だ」
ソファーの上に胡坐をかいた唯野は片肘を腿の上に置き、手の甲に頬杖をつく。諦めが悪いやっちゃな、と思いながら。
「あのなあ。今後ライバルが増えることはあっても、減ることはないぞ」
──どうしたら諦めるのだろうか、このバカは。
まあ営業部時代は、その根性こそが武器だったけれど。
そう言う自分も塩田のことを完全に諦めたわけではないが、今は皇を救うことが優先されるべき事項だと思っている。塩田を手籠めにするのは、その後でも遅くはない。
栄養ドリンクを一気飲みする黒岩を眺め、唯野はポケットから缶コーヒーを取り出した。先ほど商品部の部長から貰ったものだ。
───毒なんか、入ってないよな?
……ん?
毒は入って居なかったが、缶の底に小さなメモが張り付いていた。なんだろうと思って取り外してみると、時刻だけが記載されている。
「なあ、どうすれば皇の好感度上げられると思う?」
メモをスーツのジャケットにしまい、プルトップを引く唯野に問いかける黒岩。
「フェラーリでも買ってやれば?」
なんだかめんどくさくなってきた唯野は、適当なことを言ってみる。
すると、
「身体一個しかないのに、車二台も要るか?」
とまともな反応が返ってきて驚く。
「そんなこと言ってると、車コレクターにボコられるぞ」
「少なくとも、皇は車コレクターじゃない」
と黒岩。
「なんで、そんなとこだけ真面目なの」
「俺はいつだって、真面目だ」
「やれやれ……」
唯野が飲み終わった缶をテーブルの上に置き、テレビのリモコンに手を伸ばそうとしたところで再び休憩室のドアが開けられた。
「課長」
誰かと思ったら、社長秘書の神流川である。
「いや、俺。君の課長じゃないんだが……」
と言うと、
「俺の課長だ」
と黒岩。
「お前のでもないから!」
いつも通り、ややこしいことになったのだった。
「ん? ああ。こっちは順調。そっちはどうなの?」
休憩室で一人、苦情係の課長こと【唯野修二】が経過の報告をしていると、おもむろに休憩室のドアが開けられゾンビのような表情をした黒岩が入ってくる。
「あ、悪い。切る」
訊かれたところで何の話か分かるはずもないが、唯野は手短に返答し通話を切った。
「なんなんだよ、そんな顔して」
黒岩は肩を落とし、ソファーに腰を下ろしている。
唯野は仕方ないなと思いながら、簡易冷蔵庫から一つ栄養ドリンクを取り出すと彼の目の前に置いてやり、隣に腰かけた。
すると彼は急に表を上げ、
「皇に逢いたい!」
と宣言。
唯野は、ため息をついた。
「まだ諦めてなかったのかよ。いい加減、諦めなさいよ」
「い、や、だ」
ソファーの上に胡坐をかいた唯野は片肘を腿の上に置き、手の甲に頬杖をつく。諦めが悪いやっちゃな、と思いながら。
「あのなあ。今後ライバルが増えることはあっても、減ることはないぞ」
──どうしたら諦めるのだろうか、このバカは。
まあ営業部時代は、その根性こそが武器だったけれど。
そう言う自分も塩田のことを完全に諦めたわけではないが、今は皇を救うことが優先されるべき事項だと思っている。塩田を手籠めにするのは、その後でも遅くはない。
栄養ドリンクを一気飲みする黒岩を眺め、唯野はポケットから缶コーヒーを取り出した。先ほど商品部の部長から貰ったものだ。
───毒なんか、入ってないよな?
……ん?
毒は入って居なかったが、缶の底に小さなメモが張り付いていた。なんだろうと思って取り外してみると、時刻だけが記載されている。
「なあ、どうすれば皇の好感度上げられると思う?」
メモをスーツのジャケットにしまい、プルトップを引く唯野に問いかける黒岩。
「フェラーリでも買ってやれば?」
なんだかめんどくさくなってきた唯野は、適当なことを言ってみる。
すると、
「身体一個しかないのに、車二台も要るか?」
とまともな反応が返ってきて驚く。
「そんなこと言ってると、車コレクターにボコられるぞ」
「少なくとも、皇は車コレクターじゃない」
と黒岩。
「なんで、そんなとこだけ真面目なの」
「俺はいつだって、真面目だ」
「やれやれ……」
唯野が飲み終わった缶をテーブルの上に置き、テレビのリモコンに手を伸ばそうとしたところで再び休憩室のドアが開けられた。
「課長」
誰かと思ったら、社長秘書の神流川である。
「いや、俺。君の課長じゃないんだが……」
と言うと、
「俺の課長だ」
と黒岩。
「お前のでもないから!」
いつも通り、ややこしいことになったのだった。
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